「NECスパコン・プログラミングコンテスト」のキックオフイベントを開催

カゴヤ・ジャパン、SX-Aurora TSUBASAクラウドのメリットを語る

文●大谷イビサ 編集●ASCII

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 2022年11月29日、NECはベクトル型プロセッサー搭載のスーパーコンピューター「SX-Aurora TSUBASA」を活用したプログラムで競い合う「NECスパコン・プログラミングコンテスト」のキックオフイベントを開催した。コンテストの利用環境を提供するカゴヤ・ジャパンの鶴岡謙吾氏は、SX-Aurora TSUBASAクラウドのメリットと科学技術計算やシミュレーションにとどまらない事例について説明した。

コンテストに向けて気合いの入るイベント参加者たち

スパコンを使えるプログラマーをもっと増やしたい

 NECの「SX-Aurora TSUBASA」は、並列処理に最適なベクトル型プロセッサー「ベクトルエンジン(VE)」を搭載したスーパーコンピューター。2021年、ベクトルエンジンのみがPCIeカード型対応のモジュールとして単体販売されるようになり、スパコンならではの高い演算能力を、HPCやAI、ビッグデータなどの分野で活かすことが可能になった。既存のスパコンに比べてはるかに低廉な153万円(税別)という価格から「100万円台スパコン」とも呼ばれている。

NECの「SX-Aurora TSUBASA」

 今回取材した11月29日のイベントは、SX-Aurora TSUBASAを活用したプログラムで競い合う「NECスパコン・プログラミングコンテスト」のキックオフイベント。会場となったWeWorkオーシャンゲートみなとみらいには、SX-Aurora TSUBASAのプログラミングに興味を持っているユーザーが集まった。

 冒頭、登壇したNEC プラットフォーム販売部門 岡田修平氏は、「もともと数千万、数億かかるスパコンを、2021年から100万円台で使えるようにした。さらに今回カゴヤ・ジャパン様のご協力で、クラウド型で利用できるようになったので、コンテストを通じてみなさまに使ってもらいたい。スパコンを使えるプログラマーをもっと増やしたい」と語る。また、「スパコンで社会貢献できるような用途を、みなさんの知識や経験をお借りしながら拡げていきたい。そんな思いでプログラミングコンテストを立ち上げさせてもらった」とアピールした。

NEC プラットフォーム販売部門 岡田修平氏

 続いて「一生エンジニアを楽しもう!~夢中が最高~」というタイトルで講演したのがウルシステムズの代表取締役会長の漆原茂氏。一生エンジニアでいたいと考えた漆原氏は、優秀なプログラマーの資質を研究すると、長時間没頭すること、好きという内発的な動機付けなどの資質があることを挙げ、「夢中を維持すれば何歳でも成長できる」という持論を披露した。

 その上でSX-Aurora TUSBASAについて「スポーツカー」とアピール。「オレのアルゴリズムを動かすのに、普通のクラウドじゃ遅いと感じる人は、ゴリゴリにいってください。平均時速250kmをフルアクセルで飛ばせるような最高のデータとアルゴリズムを競ってください」とエールを送った。

スポーツカーの性能を活かせる最高のアルゴリズムをと漆原氏がエール

クラウド環境でSX-Aurora TSUBASAがもっと身近に

 その後、NECの開発者によるSX-Aurora TSUBASAのプログラミング講演を経て、カゴヤ・ジャパンの鶴岡謙吾氏がSX-Aurora TSUBASAクラウドとその活用事例を披露した。カゴヤ・ジャパンは1987年に京都で創業し、データセンターやホスティング事業を手がけている。

カゴヤ・ジャパン 鶴岡謙吾氏

 鶴岡氏は、スパコンを活用した研究開発の課題として、「共同利用スパコンを効率よく使いたい」「好きなときに使いたい」「シミュレーションに時間がかかる」「GPU専用言語の開発で苦労している」などを挙げる。こうした課題を解消するのがSX-Aurora TSUBASAをクラウド環境で占有できる業界随一のSX-Aurora TSUBASAクラウド。今回のプログラミングコンテストの環境も、このSX-Aurora TSUBASAが提供されているという(関連記事:カゴヤ・ジャパン、賞金総額100万円「NECスパコン・プログラミングコンテスト」に協賛)。

 従来、スパコンを使った科学技術計算やシミュレーションをオンプレミスでやろうとすると、ネットワーク、ストレージ、サーバー(ベクトルエンジン+ベクトルホスト)、OS、SDK・ライブラリなどをすべて用意しなければならない。しかし、SX-Aurora TSUBASAクラウドを使えば、これらのインフラをカゴヤ・ジャパンが用意するのでユーザーは本来やりたかったアプリケーションやアルゴリズムの開発に専念できる。

SX-Aurora TSUBASAクラウドのメリット

 ご存じの通り、スパコンはさまざまな分野で用いられている。航空機やエンジンの設計に用いられる「流体力学」、建築物や航空機、自動車などの強度や衝突を解析する「構造解析」、化学・物製、地震、大気科学、電磁流体力学、資源探査、気候・環境研究、原子力工学、宇宙探査・天文学など多岐に渡る。しかし、今回紹介された事例はこうした典型例と異なる利用パターンだ。

 たとえば、不動産会社の東急リバブルは、AIベンチャーのウェルヴィルが開発したAIアバターをマンション購入希望者の接客に使っている。大規模な分譲マンション販売の場合、モデルルーム来場者全員に対するきめ細かな対応を限られた人数の営業パーソンだけで行なうのは人的リソースの問題で難しい。このようなケースではAIアバターとの会話から購入意思の強い顧客に絞り込んだ販売が可能となる。「自然言語処理ならGPUでもできると思うかも知れませんが、ベクトルコンピューターを用いることで、応答速度は8%向上することがわかりました」(鶴岡氏)。

 現在、対話システムはSX-Aurora TSUBASA、アバターシステム自体はAWSで動作しているが、対話のリアルタイム性を確保するため、アバターシステムのカゴヤのクラウド環境への移行が進んでいるという。

AI、機械学習での利用パターン

 もう1つの例は東京工業大学と東北大学のベンチャーであるJijの量子コンピューティングのユースケース。こちらは組み合わせ最適化問題を解くためのイジングマシンをクラウドサービス「JijZept」で提供している。具体的には、数理モデルの構築、イジングモデルへの変換、モデルやマシンパラメーターの決定、各マシン向けの変換処理といった今まで専門家が必要だったレイヤーをクラウドサービスとして提供しているが、この開発環境としてSX-Aurora TSUBASAを利用しているという。

 最後、鶴岡氏は「SX-Aurora TSUBASAはAIや機械学習、量子コンピューティングなど、一般的な科学技術計算やシミュレーション以外の用途でも使えるので、今後も可能性があります。プログラミングコンテストを通して、まずはSX-Aurora TSUBASA自体のパフォーマンスの良さ、そしてクラウドサービスの使い勝手を実感してもらいたい」とまとめた。

社会課題の解決に貢献できるSX-Aurora TSUBASAのコンテスト

 セミナーの最後はコンテストの概要が説明された。まずコンテストの趣旨は、ベクトルプロセッサーのプログラマー人口を増やし、用途を拡大することで、今回のコンテストテーマとして「社会課題の解決に貢献できるもの」が挙げられている。

 応募期間はイベントが開催された2022年11月29日~2023年1月20日PM5:00まで。申し込みサイトにて参加登録を受付中で、審査の上、SX-Aurora TSUBASAをリモートで利用するためのクラウド環境が期間限定で提供される。プログラミング言語はC、C++、Fortranで、プログラミング期間は2023年の2月10日PM5:00まで。成果物はプログラムソースコード、NEC指定の性能測定ツールで実行した測定ログファイル、そしてテーマ概要のドキュメント(1~3枚程度)となっている。

コンテストの流れ

 一次審査は2023年2月14日~2月24日までで、審査基準に従ってファイナリストの5提案が選出される。審査基準は「社会貢献度」「市場有望度」「CPUとの性能差」の3つ。最終審査は2023年3月3日で、ファイナリストが最終審査員の前でプレゼンと質疑応答をこなす決勝イベントを行なう。選考結果はイベント中に発表されるという。

 応募資格は企業、団体、個人、学生(18歳以上、高校生は除く)など。優勝賞金は優勝が50万円、準優勝が30万円、審査員特別賞が20万円。カゴヤ・ジャパン賞ということで、レンタルサーバー最大12ヶ月無料も用意されている。詳細はサイトの方をご確認いただきたい。

(提供:カゴヤ・ジャパン)

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