Wikoというメーカーを覚えているでしょうか? ヨーロッパで若者たちに人気のメーカーで、一時は日本にも進出したことがあります。しかしミドルレンジからエントリーモデルを中心とした製品展開に留まり、価格重視の製品展開をした結果、最新技術搭載モデルの不在と中国メーカーとの価格競争にやぶれ、今は細々とビジネスを行なっているにとどまっています。
ところが、そんなWikoから同社初となる5Gスマートフォン「Wiko 5G」が発売となりました。これまで4Gモデルのみの展開に留まっていたWikoの5Gスマートフォンはどんな性能なのでしょうか?
Wiko 5GはSoCにSnapdragon 695 5Gを搭載し、メモリー8GB、ストレージは128/256GBを内蔵。ディスプレーは6.78型(2388×1080ドット)の液晶で、リフレッシュレートは120Hz駆動。カメラは1億800万画素をメインに800万画素の超広角、200万画素のマクロと200万画素深度測定を加えた4眼カメラ。フロントカメラは1600万画素。バッテリーは4000mAhで66Wの急速充電に対応します。
Wiko 5Gの発売は中国で、価格は1999元(約3万8000円)。各社のミドルレンジモデルがひしめく競争の厳しい価格帯のモデルをあえて出してきました。そして最大の驚きは搭載するOSです。Wiko 5GはAndroidをベースにしたメーカー独自UIという中国各社の製品とは異なり、ファーウェイのHarmonyOSを搭載します。
Wiko 5Gの本体スペックやサイズを見ると、実は別のモデルと同一であることがわかります。それはファーウェイの「HUAWEI nova 9 SE」です。つまりWiko 5GはHUAWEI nova 9 SEのチップセットを5G対応としたリブランドモデルであり、製品の開発はファーウェイが行なったわけです。
ファーウェイはアメリカ政府の制裁により5Gスマートフォンの製造ができません。しかし、TD-Techがファーウェイ「Mateシリーズ」の、China Post Communication Equipmenがファーウェイ「novaシリーズ」のスマートフォンの通信モデムを5G化した製品を出しています。しかも、China Post Communication EquipmenはHUAWEI nova 9 SEの5Gモデル「Hi nova 9 SE」を販売中です。3社の製品を比べてみましょう。Wiko 5Gだけ正面写真がありませんが、3機種は同一ですね。
WikoはWiko 5Gの発表会で「2011年誕生のフランスブランド」を大きくアピールしています。つまり海外メーカーの中国参入と謳っているわけです。しかし、現在のWikoの親会社は中国のOEM・ODM大手、Tinno Mobileです。つまり実情は中国メーカーのフランスブランドであるわけです。ちなみにTinno Mobileの製品は日本でも楽天モバイルの「Rakuten Hand」「Rakuten Hand 5G」が販売されています。ちなみにRakuten Handは製造がTinno Mobile、輸入がWiko Japanです。
なお、WikoはWiko 5Gの発表に合わせてグローバルで販売中の「Wiko 10」「Wiko T50」も中国向けに発表しているようですが、これらのOSはグローバルモデルと同じでAndroidそのまま。同じメーカーの製品が中国国内でHarmonyOSとAndroid OSと、別々のOSを採用するようです。
Wiko 5GはHarmonyOSを採用していることからグローバルでの販売はおそらく無いのでしょうが、ファーウェイの優れたハードウェアを採用しているだけに、中国以外での展開もしてほしいところです。特にヨーロッパではまだWikoの名前は広く知られているだけに、5Gモデルの投入で巻き返しを図ってほしいですね。
「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!
長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!
→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む
★ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。

この連載の記事
- 第641回 「プリペイドSIM天国香港」の危機!? 実名登録でSIM屋台はどうなったのか
- 第640回 タブレットや5G対応もある、ヨーロッパで見つけた全世界モバイルルーター
- 第639回 Nothing Phone (1)も購入できる、ロンドンにあるNothing Storeを訪問した
- 第638回 スペインの5GプリペイドSIMを自販機で購入! 10ユーロ50GBと格安爆速
- 第637回 ロンドンも熱狂! Galaxy S23発売直後のサムスン体験ストアをチェック
- 第636回 韓国でGalaxy S23 Ultraを購入、キャリア割引がオマケ多数でオトクだった
- 第635回 世界最速!? Galaxy S23 Ultraのカバーをサンフランシスコでゲット!
- 第634回 スマホの背面で動画や写真を再生できる「デジタルカバー」が楽しそう
- 第633回 ニューヨーク近代美術館のストアでスマホグッズ探し
- 第632回 机の上にスマホを投影!? 中国の子供向けプロジェクタースタンドが楽しい
- この連載の一覧へ