第13世代インテルCoreプロセッサーと同時に登場した、Intel Z790チップセット搭載のマザーボード。新しいCPUの登場に伴って、最新マザーボードで最先端のPCを組みたいと考える人も多いだろう。しかし、同じチップセットでもモデルによってかなり価格差が出てくる上、ベンチマークなどで大きくスコアーが変わることもなく、どういったポイントを見ながら選べばいいのかは悩みどころだ。
例えば、ASUSのゲーミングマザーボードならROGというのはよく知られている。では、ASUSのほかのシリーズ、PRIMEやTUF Gamingなどとはどこが異なるのだろうか。デザイン? それは正しい。シリーズが異なるならターゲットも異なり、自然とデザインも変わってくる。また、もちろんスペックにも差があり、それぞれのシリーズのターゲットに必要とされる機能を考えられて設計されている。
今回はASUSの3つのシリーズから、Intel Z790チップセットを搭載するオススメモデルを1枚ずつお借りした。どれもオススメだが、シリーズごとのターゲットや、それに関するスペックの違いを知ることで、マザーボード選びがしやすくなれば幸いだ。
スタンダードと侮るなかれ。シンプルゆえに変幻自在にニーズを満たす
冒頭の通り、ASUSのマザーボード(今はマザーボードだけに限らないが)は、PRIME、TUF Gaming、ROG……というように分けられている。ただ、デザインやスペックを見ていくならすべての基本であるスタンダードマザーボードから見ていくのがよいだろう。まずはPRIMEシリーズのオススメモデル「PRIME Z790-P D4-CSM」を見ていこう。
PRIMEはスタンダードと呼ばれるだけあって、シンプルさが特徴だ。チップセットがサポートする機能を主軸に、追加チップによる機能の追加は最小限に抑えているため、価格が安い。コストを抑えて自作したい人に向いている。
ただし、PRIME Z790-P D4-CSMの場合、ビデオカード向けのPCI Express(PCIe) x16スロットは最新のPCIe 5.0対応だ。インテルプラットフォームの場合、すでにIntel Z690でPCIe 5.0対応がはじまり、今世代は2代目ということになるのも理由かもしれない。ユーザー目線からすれば、次世代でも使えるところがうれしい設計だ。一方、SSDなどを搭載するM.2スロットは、すべてPCIe 4.0対応となる。
メモリースロットは、DDR5とDDR4で互換性がなく、マザーボードによってどちらかしか使えないが、本製品はDDR4をサポートしている。新規格のDDR5メモリーは現時点ではまだDDR4メモリーよりも高価(同容量、CPUのサポート上限クロックで比較)だ。DDR4メモリーを採用する本製品は、移行コストを抑えたい人にとって大きなメリットとなる。
比較的安価なIntel Z790マザーボードといっても、CPUメーカーが提示する最低限の仕様と比べれば、各部にASUSのこだわりが見られる。CPU電源回路で見れば、余裕のある14+1フェーズやそこに用いられている50A対応のDrMOS、1つのPWMチャンネルで2つのMOSFETを駆動する「Teamed Power Stages」設計など。大電力、高効率、高レスポンスで、CPU性能を引き出しつつ安定動作させる回路だ。
VRMヒートシンクも、比較的シンプルな形状ながらサイズは特大。マザーボード上でも発熱が大きい部類のVRMを、適温範囲で運用するための設計だ。一方、チップセットやM.2スロットのヒートシンクはよりシンプルで小さめ。必要以上の大型化によるコスト増は避けつつ、デザインとして成立させている。
なお、拡張スロットのレイアウトもユニークだ。ビデオカード用以外に3つのx16形状スロット(x4動作)を搭載している。マニュアルを読むと、特定の組み合わせ時に排他利用となることもあるようだが、x4カードを複数利用したい人には利点だ。そのほか、ネットワークは2.5GbE、周辺機器との接続ではUSB 3.2 Gen 2x2 Type-Cといった高速インターフェースも備えているので、この点は将来性がある。
そして、本製品を語る上で欠かせないのが、シルバーのカラーリングだ。ゲーミング全盛期の今、ブラックのマザーボードがほとんどだが、その中にあってシルバーカラーは新鮮な存在だ。主目的がビジネスなど非ゲーミング用途の人や、色味は少し異なるがゲーミング用途でホワイトPCを組みたい人に適している。