2022年9月8日、株式会社DEPORTEは女性アスリートのマッチングプラットフォーム事業「Next-One」（ネクストワン）のメディアサイトを公開。アスリートの登録と、アスリートを支援するスポンサーの受付を開始した。女性アスリートの社会進出はスポーツ界の課題のひとつになっているが、具体的にどのような形でサポートを行うのだろうか。同プラットフォームのより詳しい事業内容や設立の背景を紹介する。
引退後だけでなく現役選手のサポートも実施
「Next-One」は、女性アスリートのセカンドキャリアを支援するマッチングプラットフォームだ。公式ページから登録することで利用でき、登録後はプロフィールや志望内容を基に、企業とのマッチングを行うなど、キャリア支援を受けることができる。
また、企業で働くためのスキルを学ぶなど「自分磨き」のサポートが受けられるのも特徴だ。例えば、高校を卒業してからプロに入った選手は、社会人経験もなく、企業が求めるスキルを得る機会もない。ポテンシャルで企業に採用してもらうのは簡単ではないのだ。Next-Oneでは、企業が求める人材になれるよう、登録してもらった元アスリートに企業で働くための必要なことを学んでもらい、その上で企業に送り出すという取り組みも実施している。
他にも、セカンドキャリア支援だけでなく、現役アスリートの支援も行う。一般的に、女性アスリートは、男性アスリートに比べて受け取る給与の額が少なく、活躍している選手でも、実はお金の面で苦労しているケースが少なくない。Next-Oneでは、現役中もお金が稼げるようマネージメント面でのサポートも用意。「セカンドキャリア支援」「学び直しの機会提供」「現役時のマネージメント」の3つを柱に、女性アスリートの支援を行う。
日本では女性アスリートの支援が乏しい
株式会社DEPORTEの代表を務めるのは、十文字学園女子大学の石山隆之教授だ。スポーツビジネス領域を専門とする石山教授は、同大学サッカー部の総監督としても知られ、これまでに30名以上の日本代表選手を排出してきた。石山教授に「Next-Oneを立ち上げた背景」を伺ったところ、「女性アスリートのセカンドキャリア問題は非常に深刻なものになっている。しかし、厳しい状況に置かれている女性アスリートを支援する企業は少ないのが現状。困っている彼女たちを助けてあげられないかと考え、会社を設立し、Next-Oneを立ち上げた」とのこと。
日本では、欧米に比べ女性アスリートの社会進出のためのインフラが整っておらず、満足なサポートが受けられていない状況だ。石山教授の元にも、毎年シーズンが終わるころになると卒業生が「セカンドキャリア」の相談に来るという。大学でもスポーツだけではない生き方ができるようなキャリア指導を行っているものの、社会全体で見ると、まだまだ女性アスリートを取り巻く環境は厳しい。
石山教授は「日本では、女性アスリートの資質を社会が生かせていないのが現状。彼女たちはバイタリティー、メンタル、非常にいい物を持っているので、そこに働くためのスキルを加えることで、企業に必要な人材へと成長してくれるはず。女性の社会進出を活性化し、女性の働き手を増やすことは、働き手不足の解決にもつながる。そのためにも、ひとつの企業だけでなく、社会全体でサポートする体制を作ることが必要」と指摘する。
より効果的なキャリア支援を導入する
スタートしたばかりのNext-Oneだが、今後についてはどのような展望を描いているのだろうか？ 石山教授によると「アスリートへの支援としては、早稲田大学の研究グループと協力し、どのような仕事に向いているのかの適正テストの導入を考えている。実現することで、より効果的なキャリア支援ができるはず」とのこと。
また、現在はアンバサダーとして、横山久美選手や岩清水梓選手など20名のアスリートが参加し、Next-Oneのプロモーションやサポートに協力している。石山教授は、今後アンバサダーの数を1,000人以上に増やし、より積極的なプロモーションと手厚いサポート、さらには企業へのアピールを考えているという。
他にも、「他のオリンピック種目やマイナースポーツにも広げたい」とのこと。特に、マイナースポーツに取り組む女性アスリートは、メジャースポーと比べてさらに厳しい環境でプレーしていることが多い。彼女たちを支援することは、日本のスポーツ界の発展にも貢献するだろう。
日本の「女性アスリートのセカンドキャリア支援」は、世界でも遅れているのが現状。価値観を変え、より効果的な支援を行うためには、社会全体で解決の道を探る必要がある。Next-Oneの活動が社会を変えるきっかけとなるか注目だ。
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