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日本ドローンスポーツ連盟 スター創出、ドローンレースなど発展を目指す

2023年02月15日 06時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集● ASCII STARTUP

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 2022年11月29日、「一般社団法人日本ドローンスポーツ連盟」(以降、JDSF)の設立が発表された。日本でもドローンを用いたスポーツが広まりつつあるが、海外と比べるとまだまだ発展途上といえる状況だ。JDSFは「ドローンのさらなる普及・発展」を目指す活動を行なうとしているが、具体的にどのような取り組みを計画しているのだろうか。

 JDSFが主軸とするのが「ドローンレースの普及」だ。代表理事の大岩宏年氏によると「もともとドローンを中学生や高校生といった若年世代に身近なものに感じてもらいたいと思っていた。ドローンレースを盛り上げることで、若年層に面白さや魅力をアピールでき、ドローン業界を盛り上げることができるのではと考えた」という。そこから普及活動の内容や、新たに開催するドローンレースのレギュレーションを検討していく中で、ドローン系のYouTuberやマーケティングの専門家と連携。今回の連盟設立に至ったという。

 また、ドローンレースの普及による「ドローン操作技術の向上」や「高い操縦技術を持つ人材の輩出」も連盟の目的のひとつ。ドローンレースで身に付く操縦技術は他分野でも役立つものだ。例えば、ドローンを用いた高度な映像撮影や、人が入れない狭い場所や危険な場所をドローンで検査するケースが増えており、そうした場面でドローンレーサーが活躍している。

 今後、ドローンを用いた仕事が増えたとしても、目的に応じた技術を持つパイロットがいなければ意味はない。ドローンレースが普及し、高い技術を持つ人が増えれば、レース以外でも活躍の場が生まれる。一方、他産業もドローンを活用しやすくなると、Win-Winの関係が築ける。JDSFではこのような「ドローン産業の発展」も目的としている。

電波法や航空法など課題は多い

 JDSFが普及促進を目指すドローンレースは、規定のコースを周回し、その速さを競うドローンスポーツのひとつ。「レーシングドローン」と呼ばれる専用の機種を用いて行われ、パイロットには高い操縦技術が求められる。海外では有名なスポンサーがついた大規模な大会が開かれるなど注目を集めており、例えばアメリカでは12名のトッププレーヤーが活躍するプロリーグが設立され、人気を高めている。

 日本でもジャパンドローンリーグが、ドローンレースを開催しており、高い技術を持つ選手が何人も誕生している。しかし、海外と比べると一般への認知やドローンレースの普及が進んでいない状況だ。その原因のひとつに電波法の問題が挙げられる。現在、レース用ドローンに用いられている映像通信機は5.8GHzの電波帯が用いられる。海外では誰でも使えるが、日本では5.8GHzの電波帯を使うにはアマチュア無線免許の取得や開局申請などが必要で、時間と労力を要する。また航空法の問題で屋外では自由に飛ばせない。

 他にも、専用のレーシングドローンは安くても数万円が必要だが、アマチュア無線の場合はレースで賞金が出せない仕組みになっている。賞金をもらうためには産業用である「陸上特殊無線」の取得が必要となるなど、「始めるのに費用がかかりすぎる」というのもネックだ。JDLの取り組みによって少しずつドローンレースの認知度は高まっているものの、興味を持ったが気軽にドローンレースを行なえない環境にある。

スター選手を生み出し若年層の人気を獲得する

 日本は法律との兼ね合いで、手軽にドローンレースができない状況だが、少しずつ打開の道は見えている。例えば、通信規格については、特殊な免許を必要としない規格の映像送信器を用いたレーシングドローンが開発されており、実現すれば誰でも楽しめるようになる。また、JDSFでは航空法対策として、アリーナなど屋内でのドローンレースを展開していくことを考えるなど、レース環境の整備にも取り組んでいる。

 また、「お金の問題」については、ドローンレースで活躍した選手がプロとして活動できるよう、スポンサーを募ったり選手の活動サポートも行なったりする予定だ。ドローンレースの魅力を効果的に発信できる環境を作ることで、より多くの人にドローンレースやドローンそのものに興味を持ってもらえるよう動いている。最近では日本ダンスリーグが設立されダンス人気が高まっているが、同じようにドローンレースについても大きなリーグを設立し、認知度を高めるとしている。

 海外では韓国のミンチャン・キム選手など、ドローンレースに携わる人なら誰でも知っているスター選手が何人も登場しているが、日本のリーグからスター選手が出てくれば、ドローンへの興味や関心もさらに高まるはずだ。ドローンレース業界が盛り上がれば、法律の緩和などにつながる可能性もあるだろう。

 大岩代表理事によると、ドローン関係者からの反響は大きく、他の団体やチームから「どんなことをしていくのか」と問い合わせが寄せられているという。また、春頃には大きな大会を開催する予定だ。法整備など課題は多いが、JDSFの取り組みが日本のドローン産業をどのように変えていくか注目したい。

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