ユーザー自身の 「心がけ」によりモバイルマルウェアに立ち向かえるのか
日本国内のiPhoneユーザーには無縁とされてきた、いわゆるモバイルマルウェアによる「ウィルス感染」が、もしもサイドローディングが許可されることにより「自分ごと」になってしまった場合に、ユーザーが自身で取り得る対策はあるのでしょうか。
デバイスやアプリを利用するユーザーも、これまで以上に自身でセキュリティ対策に力を注がなければなりません。ただアプリやサービスが信頼に足り得るものか、ユーザーが自身で判断することはとても困難です。あるアプリやサービスが「サイドローディングでのみ利用可能」なものであり、これを強制的に使わざるを得なくなった場合にはなおさらです。
ユーザー本人がいかにモバイルデバイスの正しい使い方やセキュリティに精通していたとしても、身近な家族や友人、仕事仲間とのデジタルコミュニケーションを通じてモバイルマルウェアに感染してしまうことも考えられます。あとは個々人で使うデバイスやクラウドサービスに、セキュリティ対策のツールを導入するほかないということになるかもしれません。サイドローディングやサードパーティによる決済システムによりアプリやサービスが「ちょっとお得」に使えるようになった代わりに、余計な定額出費がかさむということにもなりかねません。
さらにモバイルマルウェアによりアプリやApp Storeへの信頼性が低下すると、エコシステム全体が危機にさらされます。そうなるとApp Storeを拠点に活動する中小規模のデベロッパが活躍の場を失ってしまう可能性もあります。
これから私たちの暮らしはデジタルトランスフォーメーションが進み、様々な個人情報をスマホやアプリに入れて一元管理できる「便利な」時代がやってくると言われています。でも、一方で私たちが使うデジタルデバイスのセキュリティが万全な状態でなければ、プライバシーに関わる情報をスマホなどにひとまとめにする選択は「あり得ない」と思います。
既に安全性が担保されたモバイル・エコシステムに、サイドローディングを導入することの有用性については、セキュリティの観点からも多くの知見を取り入れながら慎重な議論を積み重ねるべきであると筆者は考えます。
筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。