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「つながるデータセンター」として「地方自治情報化推進フェア2022」に初出展、狙いを聞く

自治体のクラウド活用促進に向け、アット東京が「つなぐ」ATBeXをアピール

2022年11月21日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 松木雄一

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 2022年11月1日、2日に幕張メッセで開催された展示会「地方自治情報化推進フェア2022」(主催:地方公共団体情報システム機構[J-LIS])に、データセンター事業者のアット東京が初出展した。来場者である自治体関係者にアピールしたのは「DX時代の『つながるデータセンター』」としてのアット東京だ。

 アット東京では、これから全国の自治体に向けた積極的なアピールを展開していくところだという。同社 副社長の八木澤一郎氏、自治体向け営業を担当する齋藤彬氏に、その狙いやアット東京のアピールポイント、今後の展望などを聞いた。

アット東京 取締役副社長の八木澤一郎氏、営業本部 社会基盤営業部 主任の齋藤彬氏(「地方自治情報化推進フェア」会場にて)

「地方自治情報化推進フェア2022」の掲げた総合テーマは「『いつでも、どこでも』から『誰でも』の世界へ」(写真● 大塚昭彦)

全国に広がるATBeX+クラウド接続サービスを強くアピール

 アット東京が全国自治体に向けて特にアピールするのは「ATBeX(アットベックス)」と、それを介したパブリッククラウドへの接続サービスだ。

 ATBeXは、さまざまなクラウド/ネットワークサービスとの相互接続プラットフォームである。ATBeXに回線を接続した顧客は、論理回線を介して各種サービスに高信頼/低遅延/低コストなネットワーク接続(レイヤー2接続)ができる。複数のクラウドサービスに対して1つの回線経由で接続できる、遠方の接続ポイントではなく最寄りのATBeXまでの回線コストで済むなど、ユニークな特徴がある。

 ATBeXには、アット東京が運用する東京/大阪/福岡(北海道も開設予定)のデータセンターに加えて、全国のパートナーデータセンター経由でも接続が可能だ。また、アット東京のデータセンター内(東京、大阪)に収容されている大手パブリッククラウド(AWS、Azure、Goocle Cloudなど)のダイレクト接続ポイント(POP)や、インターネットエクスチェンジ(IX)への接続が可能だ。

 つまり全国の自治体は、最寄りのATBeXの接続ポイント(アット東京またはパートナーデータセンター)に回線を接続することで、自ら専用線を用意するよりも安価にパブリッククラウドへのダイレクト接続ができるようになるわけだ。

アット東京「ATBeX」の概要(Webサイトより)。柔軟な論理回線を介して、主要パブリッククラウドやIX、全国データセンターなどとの相互接続サービスを提供する(図中の「プレミアムコネクト」は別サービス)

 データセンターといえば「サーバーラックの設置場所」を提供するのが主なサービスだったが、パブリッククラウドの利用が浸透するにつれて、利用者のニーズは少しずつ変化してきている。そこでアット東京が打ち出しているのが、さまざまなクラウドサービスへの接続ポイントとしてのデータセンター=「つながるデータセンター」という新たなコンセプトだ。

 「世の中のクラウド化とともに、クラウドを利用される企業や組織はクラウドにつなぐ必要が出てきた。ただしクラウドの接続点(POP)は厳重な管理が必要であり、どこにでも設置できるわけではない。アット東京ではデータセンターへの大手クラウドの接続点の誘致を進めているので、利用者の皆さんにはわれわれのセンター経由でクラウドに接続いただける。そしてそのクラウド接続を、ATBeXを通じてさらに利用しやすいようにしている」(八木澤氏)

 営業を担当する齋藤氏は、地方の自治体や公共団体からのクラウド接続に関する問い合わせが徐々に増えていると語る。

 「現状では、自治体ではないが地方の公共系団体からの問い合わせは増えている。中央が決めて(国、政府がクラウド化推進の方針を決めて)地方にその指令を投げたところで、『どうやってつなぎに行けばいいのか』という問い合わせをいただいている状況。(クラウド接続に対する)温度感が非常に高まってきていると感じる」(齋藤氏)

 アット東京はベンダーフリー、キャリアニュートラルなデータセンターであるため、顧客が保有する既存の回線をできるだけ生かしてコストを抑えた提案ができる点もメリットだと、斉藤氏は付け加えた。

自治体向けビジネスの環境整備が徐々に進む

 アット東京では、各地域のパートナー(データセンター、通信事業者)との協業を通じて“ATBeXの全国ネットワーク化”も進めてきた。こうしてATBeXへの接続ポイントを全国展開することは、地方自治体向けビジネスを展開していくうえでは重要なポイントになる。

 「アット東京のリソースだけで全国をカバーすることはできないが、全国のパートナーと組むことでカバーしていける。このあたりはアット東京が日本の企業であり、ベンダーフリーであることの強みだと考えている」(八木澤氏)

 もちろん、そのためには各地域パートナーにもビジネスメリットがなくてはならない。たとえばATBeXブランドではなくパートナーのブランドでサービスを提供したり、パートナー独自のサービスを付加して提供したりといったかたちもあると、八木澤氏は説明した。

 ちなみに現実には、自治体がすでに地域にあるパートナーデータセンターを利用していて、回線が接続されているケースも少なくないという。「その場合は、ネットワークを(ATBeXに)つなぎ変えるだけでクラウドへの接続ができるようになる」(八木澤氏)ため、ユーザーである自治体にもメリットが大きいと言える。

 付加価値サービスという点では、ATBeX自体も強化を続けている。たとえば9月にはユニアデックスとの協業によるNFVサービスを発表した。ネットワーク機器などのIT資産を導入/メンテナンスすることなく、ATBeX上でSD-WAN、ルーター、ファイアウォール機能がサービスとして利用できるため、特に自治体にはフィットするのではないかと齋藤氏は語る。

 さらに、データセンター本来のコロケーションサービスを併用して、ハイブリッドクラウド構成をとることも容易だ。八木澤氏は「クラウド活用は進めるがデータはオンプレミスに残したい、というケースも出てくる」と述べ、そうした場合でもATBeXとデータセンター(コロケーション)のサービスを組み合わせることで対応できると説明した。

課題は知名度の低さ、地域パートナーと共に積極的アピールを続ける

 社名にも“東京”と入っており、どうしても「東京にあるデータセンターサービスの会社」というイメージが強いため、地方自治体においてアット東京やATBeXの知名度はまだまだ低いのが実情だ。今回の自治体向け展示会への出展は、そうした課題を解消していくための第一歩だと八木澤氏は語る。

 「そしてもちろん、各地域のパートナーの方と一緒になって、うまくカバーしていくことが大切だ。“クラウドならアット東京”ということを、もっと全国を広めていきたい」(八木澤氏)

 齋藤氏は、これまで民間企業、エンタープライズの領域で蓄積してきたATBeXのノウハウを、地方自治体向けに展開していくことになると語った。各地域パートナーと共同で進める案件も徐々に増えてきているという。

 「自治体からアット東京にお問い合わせいただき、その地域のパートナーをご紹介するということもある。また、たとえばパートナーから問い合わせをいただいた際に、『この案件はアット東京よりも御社(パートナー)がフロントに立ったほうがいい』とアドバイスするケースもある。そうしたかたちで、今後は自治体のプロジェクトマネジメントをわれわれのほうでやらせていただくというのも進めたい」(齋藤氏)

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