ハードが売れてもソフトが売れないのが敗因
メタバース部門は、業績が上がってきているならともかく、投資の割にはリターンが少ないという状況が続いています。ハードとしての「Quest 2」は5月に1500万台に達したと見られ、それなりに売れています。しかし、8月に行なった販売価格の100ドルの値上げの影響が大きいとみられ、売上も前年同期比で半減してしまっています。
さらに問題はソフトの販売です。
VR系メディア「Voices of VR」のKent Byeさんは、2019年から21年のVR部門の総収入は約39億ドルにのぼっているのに対し、ソフト売上は3億7000万~4億ドルにとどまっていると推計しています。つまり、全体の売上の中でソフトは10%程度しか販売できていないということになります。
8/ Zuckerberg said "People have spent more than $1B on Quest store content."
— Kent Bye VoicesOfVR (@kentbye) February 3, 2022
$1B prob before Meta takes 30% cut.
Beat Saber is >$100M.
Maybe ~$370M-$400M from software.
Quest launched May 21, 2019.
Total Reality Labs Revenue 2019-2021 is $3.914B.
Estimate # Quests have sold >10M? pic.twitter.com/vOzpawDwzp
要するにソフトによるエコシステムが形成できていないんですね。メタは「任天堂型」「ソニー型」などと言われる、ハードは安く売ってソフトで回収するというビジネスモデルを目指していたのですが、実際には成立していなかったということです。
10月にメタが開催した開発者会議でも、ジョン・D・カーマック(元Oculus CTO。現在はメタのアドバイザー)が、「Questで最も人気のあるアプリはVRChatやRec Roomといった無料アプリで、そこからの収益は皆無です」とコメントしていました。だからQuest 2は値上げされてしまったんだと。
メタはメタバースという新しい産業を作ろうとしたわけですが、1社のプラットフォーマーが莫大なお金を注ぎ込んでも難しかったんだなと感じます。
ハードを作って失敗させないように展開するというのは相当なエネルギーが必要です。あと数年続ければQuestがすごく売れるようになるかと言えばそんな未来も見えません。資金が簡単に尽きることはないでしょうが、業績としては相当苦しい状況が続くことは、多くの人が指摘していたとおりでした。
関係者はメタが今のようにコントロールを強く立場を主張するのではなく、ハッカーを中心にOculusの開発が自由に進められていたらどうなっていたかという話をよくしていますが、どちらにしても簡単ではなかっただろうなと感じます。
この連載の記事
-
第85回
AI
誰でもVTuber時代へ フェイシャルAI技術、続々登場 -
第84回
AI
画像生成AI「Stable Diffusion 3.5」性能はものたりないが、自由度が高いのは魅力 -
第83回
AI
リアルすぎてキモい 動画AIの進化が止まらない -
第82回
AI
もはや実写と間違えるレベル 動画生成AI「Runway」の進化がすごい -
第81回
AI
AIイラスト、こうしてゲームに使っています -
第80回
AI
ゲーム開発はAI活用が当たり前になりつつあるが、面白さを作り出すのは人間の仕事 -
第79回
AI
AIが考える“アイドル”がリアルすぎた グーグル「Imagen 3」なぜ高品質? -
第78回
AI
話題の画像生成AI「FLUX.1」 人気サービス「Midjourney」との違いは -
第77回
AI
画像生成AI「FLUX.1」が相当ヤバい LoRAで画風の再現も簡単に -
第76回
AI
「Stable Diffusion」の失敗に学び、画像生成AIの勢力図を塗り変える「FLUX.1」 -
第75回
AI
商業漫画にAIが使われるようになってきた - この連載の一覧へ