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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第179回

縦長の動画撮影が多い時代、カメラを“縦”にする撮影用マウントを自作してみた

2022年11月08日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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増えてきた縦長の動画

 最近、ビデオカメラを縦にして撮影する機会が増えてきました。テレビや映画のように横辺が長い「ランドスケープ」ではなく、縦辺が長い「ポートレート」と呼ばれるアングルです。

YouTubeのショート動画やCameoなどでも使われる、縦辺が長いポートレートのアングル

こちらはテレビでもおなじみ、横辺が長いランドスケープのアングル

 たとえば、YouTubeのショート動画も縦長の動画ですし、以前紹介したCameo(第178回「リモート時代に必須!? 顔をきれいにする撮影用ライトを買い足す」)も縦長ですね。

ビデオカメラを縦に使う三脚用マウントは少ない

 縦長の動画を撮影したければ、素直にスマートフォンで撮影すればいいのですが、筆者はビデオカメラ派です。ビデオカメラにこだわる理由は、美しい画質のまま被写体に寄ることができ、ズームをしても解像度が高いままだからです。とくに素早い動きの被写体を撮影するときは、ビデオカメラのほうが有利なように思います。

 ところが、ビデオカメラを縦にして使うのは、手持ちでも難しいし、三脚に固定するにも少し苦労します。

 というのは、ビデオカメラは通常の一眼レフカメラなどとは違い、サイズも大きく、重量もそれなりにあるからです。

 まず、筆者がビデオカメラで撮影する場合、プロビデオプレートと呼ばれる部品をカメラに付けて、三脚に固定しています。

三脚にワンタッチで固定できるビデオカメラ用のクイックプレート

 ところが、カメラを縦に使う場合は話が異なります。ビデオカメラからビデオプレートを外し、縦にできる雲台(三脚とカメラの間に入る部品)が付いた別の三脚に取り付ける必要があります。これが筆者にとってはストレスです。

 さらに、カメラを90度に傾けられる雲台ですが、デメリットとしてバランスが悪くなり、撮影中に三脚が倒れる心配もあります。

カメラを90度傾ける雲台は、カメラの重心が三脚の中心から外れるので転倒しやすい

 一眼レフカメラでも同じリスクがあり、カメラの重心を三脚に合わせられるようなL型のブラケットが販売されています。しかし、一眼レフはボディが左右に長く、ビデオカメラは前後に長いことから、これをビデオカメラに流用することはできず、歯痒い思いをしていました。

縦撮影用のパーツを自作する

 筆者がポートレートでビデオ撮影するにあたり、必要なマウントのスペックは以下の通りです。

○ランドスケープでもポートレートでもワンタッチで付け替えられる。
○ビデオカメラの重さを三脚の中心で受けられる形状。
○既存のビデオ三脚が利用できるよう、マンフロットのクイックリリースプレートが使える。

 今回はこれを自作してみることにしました。

必要なパーツ類

 まずはクイックシュー(クイックリリースプレートがはまる側)から。これは、UTEBITの「スライディング マンフロット適応 プレート P200 互換性 クイックシュー クイック リリース プレート」(1398円、Amazon.co.jpで購入)を選びました。これはクイックリリースプレートとのセットなので、かなりリーズナブルです。

 L字金具には「棚受け金具 L字アングルブラケット 201ステンレス」(10個で2799円、Amazon.co.jpで購入)を選びました。10個セットなのが残念ですが、ネット販売ではよくあること。今回必要なのは2つです。

今回、用意したクイックシュー、L字金具、ネジ類

 あとはネジ類ですが、これには注意が必要です。

カメラや三脚に使われるネジはインチネジ

 カメラや三脚に使われるのは、「1/4-20 UNC」または「3/8-16 UNC」と呼ばれるネジです。日本で流通するネジの多くは、ミリを単位に作られていますが、カメラ用はインチ(1インチは25.4ミリ)が基準です。

 たとえば、今回使用した1/4-20 UNCは、外径が1/4インチ(6.35ミリ)でネジ山の数が1インチあたり20山、ネジ山の角度が60度。まあ、そんな細かい数値は覚える必要はありませんが、1/4-20 UNCのネジを間違いなく購入することが肝心です。ホームセンターなどで購入したミリネジを無理に使うと、カメラや三脚のネジを壊してしまうので注意が必要です。

カメラや三脚に使われる1/4-20 UNC(長さ14ミリ)のネジ

 今回は、1/4-20 UNC 長さ14ミリを4つ使用しました(5個で675円)。L字金具とクイックプレートを挟むのは、M5のボルトとナットを使いました。これはL字金具のスロットの幅が5.2ミリしかなく、穴を空ける加工数を減らすためです。

L字金具のスロットに6.4ミリの穴を開ける

 続いては、L字金具のスロットに穴を開けていきます。

 筆者はボール盤を使いましたが、L字金具は2.4ミリの厚さでステンレスは粘りがあるため、今回のDIYでは一番苦労した加工でした。それでもスペック上は15kgのカメラまで耐えられるはずなので、頑張りどころかもしれません(三脚の耐荷重は12kgまで)。

ネジを通すために加工したスロットの穴

あとは組み立てるだけ

 クイックシューとネジの間に緩み防止のゴムワッシャーを入れ、ネジで留めていくだけで無事完成です。

完成した縦用のマウント。通常のランドスケープでの撮影も、クイックプレートなのでワンタッチで切り替えられる

大きく重いビデオカメラの重心も三脚の中心で支えられるので安心

自宅やスタジオでの撮影は重いカメラ、重い三脚が良い

 ちなみに筆者は自宅のスタジオでの撮影がほとんどのため、あえて重い三脚、マンフロット475Bを使っています。これは、人が歩いた場合の振動(床ブレ)に強いからです。

 今回のDIYで、ランドスケープ撮影でもポートレート撮影でもカメラのアングルを手軽に切り替えられるようになり、ストレスなく撮影がスタートできるようになりました。

 もうお気づきかもしれませんが、筆者は子供の頃から「勉強机を買ってくれないと、勉強できない!」とカタチから入る物欲派。ポートレートが撮影できるマウントが完成したからといっても、すばらしい映像が撮影できるかは、また別の話なのですが……(笑)。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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