東北大学などの国際研究チームは、中性子星合体に伴う可視光・赤外線放射を解析し、合成されたレアアース(希土類元素)元素を特定した。中性子星同士の合体現象で重元素が作られることは以前から知られていたが、作られる元素の種類や量は、これまで明らかになっていなかった。
東北大学などの国際研究チームは、中性子星合体に伴う可視光・赤外線放射を解析し、合成されたレアアース(希土類元素)元素を特定した。中性子星同士の合体現象で重元素が作られることは以前から知られていたが、作られる元素の種類や量は、これまで明らかになっていなかった。 研究チームは、2017年8月に観測された、中性子星合体に伴う可視光・赤外線放射(「キロノバ」と呼ばれる)のスペクトルを解析するために、全ての重元素がどの波長にどのような吸収線を作るかを網羅的に調査。国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」を用いた詳細な数値シミュレーションでキロノバのスペクトルを計算した。 その結果、ランタン(原子番号57番)とセリウム(同58番)という一部のレアアースがキロノバの赤外線スペクトルに吸収線を作ること、中性子星合体のスペクトルに見えていた吸収線の特徴がそれらのレアアースによって説明できることが分かった。中性子星合体でランタンとセリウムが合成されたことが直接特定されたのは初めてだという。 宇宙における金やプラチナ、レアアースなどの起源は天文学・宇宙物理学の長年の未解決問題となっている。今回の研究成果が、宇宙における重元素の起源の解明につながることが期待される。研究論文は、2022年10月26日付けで、アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)電子版に掲載された。(中條)