キヤノンMJ/サイバーセキュリティ情報局

NFTを作成してみた! 実際に試してみてトークンのメリット・デメリット・無形の価値について解説

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本記事はキヤノンマーケティングジャパンが提供する「サイバーセキュリティ情報局」に掲載された「NFTは一過性のブームか、新たな資産となるか」を再編集したものです。

 NFTを作成した経験をもとに、流行のトークンのメリット・デメリット・無形の価値について解説する。

 NFT(非代替性トークン)は、デジタル台帳の形式をしたブロックチェーン上に記録されるユニークなトークンである。ほかのトークンによって変更・置換されることはない。一点物のトレーディングカードのように、NFTは唯一無二だ。公開されたブロックチェーン上においてユーザー同士が取り引きできる。芸術作品、動画や音声のデジタルファイルが一般的にNFTとして扱われるが、より多くのものに適用可能だ。

NFTの仕組みとは?

 絵画のような従来の芸術作品は唯一無二であるため、明確に価値がある。しかし、デジタルファイルは容易に複製できてしまう。NFT(実際は所有権を証明するに過ぎない)があっても、その前提は変わらないが、NFTアートは所有権をデジタル証明書として「トークン化」し、売買することができる。

 適切なマーケティング施策を講じたことで、1つのGIF画像が数十万ドルで売れた事例がある。多くのNFTは数セントで売却されているが、中には非常に高額になったケースもある。これまでで最も高額なNFTは、昨年におよそ7000万ドル(94億円相当)で販売されたデジタル画像のコラージュ作品である。

 しかし、そうそう上手くいくわけではないと、それほど興味がわかない人もいるかもしれない。実際、本当に利益を上げているのは、NFTの取引所として利用されたプラットフォームの創設者だ。OpenSea(NFTにおけるeBayのようなサービス)のようなマーケットプレイスは、急激に人気を集めている。デジタル収集品としての関心は明らかに低下しているにも関わらず、今後10年で市場は指数関数的に拡大すると考える人は多い。

NFTに関わるリスクとは?

 オンラインの世界では、サイバー犯罪のリスクがつきまとっている。新しく見つかった技術やトレンドについて、一般大衆が何であるか十分に理解する前に、素早く反応するのがサイバー犯罪者の特性だ。現状、NFTの販売はオンラインで行なわれるため、規制というべきものは何もない。すべてのマーケティング活動はソーシャルメディアを介して行なわれているため、詐欺に巻き込まれるリスクは高い。少なくとも詐欺師は、その状況を利用している。人気のあるNFTコミュニティは、NFTを宣伝するためにインフルエンサーや有名人と協業しており、どれが偽物であるのか判別するのか難しくなっている。

有名人の名を騙った詐欺によくみられる4つの手法

 NFTの購入に興味がある人は、暗号資産(仮想通貨)ウォレットか、BinanceやCoinbaseといった取引所のアカウントが必要になる。多くのNFTマーケットプレイスでは、取引を行なうためにイーサリアムのブロックチェーンを使用している。準備ができたら、NFTを購入したいマーケットプレイスを選択し、好みに応じて作品を指定するだけだ。オークションの仕組みを備えているマーケットプレイスでは入札する必要があるが、こちらもeBayと同じように、「即決する」ための価格が設定されている場合もある。

 多くのNFTは個人が楽しむために購入されているが、何らか別の意図や投資目的で購入されるケースもある。NFT市場は投機的であり、希少性やFOMO(逃すことへの恐怖心)によって需要が急騰することもある。問題が発生して悪循環に陥ると、購入者が損をし始めるかもしれない。変わった作品をNFTにしたBored Ape Yacht Clubの最高値は、NFTの急騰と時期を同じくしていた。

 しかし、少なくともNFTの支持者は、NFTが未来のデジタル経済圏におけるフレームワークとなり、明るい未来をもたらすと考えているようだ。ブロックチェーンに書き込まれるスマートコントラクトは、NFTの可能性を広げるものと考えられており、NFT購入者に信頼感を与えている。デジタルアートを例にとって考えてみよう。アーティストは芸術作品を所有し、デジタル資産として販売できるようになる。こうした管理が極めて容易となり、適正と思われる価格で販売することができるだろう。

「When NFT Is the Creative Limit(NFTが創造性の限界になるとき)(英語のみ)」

 一方、NFTでは多くの場合、取引手数料が収益を上回る。販売する際は手数料について詳しく調べておくよう推奨したい。はじめに暗号資産(まだ所有していなければ)を購入する、コインを取り引きする、NFTを出品する、そして購入する際にも手数料がかかる。

結局、どれほど簡単なのか?

 昨年見られたNFTの流行を踏まえ、理解を深めるには実際に自分で作成するのが最善の方法だろうと考えた。NFTは短いメディアファイルやPNG画像、GIF画像、さらにはツイートであっても、購入したいと思う人がいれば販売できる。そこで「ダンスの下手なお父さん」として踊っているGIFアニメーションを作成し、数百万人へ販売しようと考えた。

図1:ダンスの下手なお父さん

 GIFアニメーションを準備した後は、OpenSeaのアカウントを開設して、NFT販売のための画面を開いた。時間制限なしのオークションで2ドルから開始し、多数の入札を待つこととした。

NFT販売に関する手数料

 NFTをオンラインで販売する手数料は、期待される利益を超えてしまう可能性が高く、慎重に検討しなければならない。取引所で両替するたびに手数料がかかるため、最低2回は必要となる。手数料は法定通貨からデジタル資産へ換金するときと、イーサリアムへ交換する際に求められる。オークションへNFTを出品する際にも支払い、取り引きにおいてもマイニング(採掘)コストを負担しなければならない。今回は、NFTの出品は収益を得るよりも、そのステップを検証するのが目的だった。

 この実験の興味深いところは、実際にNFTを売ることができた点だ。売れたことを通知するメールを受信した際は、どのくらいの価格で売れたのかを確認するのが楽しみに思えた。得られた収益で高額なヨットを買うつもりになっていたが、わずか2ドルだったため愕然としたものだ。この実験を行なうのに手数料を含めて20ドル以上を費やしたのに気付いた際は、さらに落ち込んだ。ただし、OpenSeaがはじめに要求してきたマイニング手数料より、はるかに安いものだった。

図2:価格が下がる前は、予想したよりも高いマイニング手数料が要求されていた

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支払いの確認
イーサリアム

このdapp(分散型アプリ)はウォレットから資金を引き出す処理を要求しています。信頼できるウェブサイトであることを確認してください。

マイニング手数料
69.83ポンド(0.03070285イーサリアム)

マイニング手数料を負担するのに十分なイーサリアムを持っていない場合、ウォレットに預け入れてから再試行してください。
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NFT詐欺

 残念ながら、サイバー犯罪者はトレンドを追いかけ、金品を巻き上げるチャンスを逃さないよう、新しい技術に対応してきた。以下では、2つのよく見られるNFT詐欺を取り上げる。

1)フィッシング

 フィッシング攻撃は、メールやTwitterのメッセージを通じて行なわれる可能性があるため、常に注意を払い、慎重に行動する必要がある。

 暗号資産ウォレットを開設する際には、シードフレーズが表示される。シードフレーズとは、単語の羅列(通常、12~24個の単語)であり、パスワードを忘れた際にウォレットへのアクセスを回復するのに用いられる。基本的には、ウォレットのハードウェア・バックアップをとる場合や、ウォレットを回復する場合のみシードフレーズが必要となる。しかし、詐欺師はメールやソーシャルメディアのメッセージを使用して、悪意のあるウェブサイトへ誘導し、それを詐取しようと仕掛けてくる。

図3:偽の OpenSeaウェブサイトの例

 したがって、暗号資産の取引を行なう際には、正規のウェブサイトへ直接アクセスするようにしたい。個人情報を入力するときは、見覚えのないリンクやポップアップ、メールに記載されたURLなどをクリックするのは避けるべきだ。シードフレーズを受信したら、紙に書き出し、金庫のような安全な場所で保管し、誰にも共有してはならない。携帯電話に画像として保存するのも止める方が良いだろう。

2)価格操作

 暗号資産やNFT市場で価格操作が行なわれるのは、ある程度予想していたことかもしれない。一部のユーザーがNFTや通貨を大量に購入し、意図的に需要の高まりを見せかけるものだ(eBayユーザーが価格をつり上げるように)。これらが成功すると、詐欺師は価格が高いうちに売り抜ける一方、残されたユーザーは価値のない資産をつかまされるのだ。

なぜ犯罪者は暗号資産に群がるのか

NFTを保護するには

 身を守るための5つのヒントを以下に紹介する。

・暗号資産にアクセスするための秘密鍵やシードフレーズは、誰にも知られないようにする。決して共有してはならない。
・創設者・有名人・インフルエンサーを名乗る人からダイレクトメッセージを受け取った際には、返信したり、リンクをクリックしたりしてはならない。残念ながら、詐欺行為が始まる典型的なパターンだ。
・それでもNFTを購入したい場合は、信頼できるアカウントから作品を購入するよう調べてみることを推奨する。アカウントが正規であるのを保証するわけではないが、NFTマーケットプレイスの出品者プロフィールの隣に青い認証チェックマークが表示されているのを確認すると良い。
・NFTの購入では、有形資産やデジタル資産(JPEG、MP3、PDFフォーマット)の所有も検討してほしい。常に可能なわけではないが、正規の商品を購入した裏付けとなり得る。新たな詐欺がNFT市場で横行している。自分は大丈夫だ、とは思わないことだ。
・新旧のNFT詐欺を避けるため、最新の情報を得られるよう努めるべきだ。

良いニュースはあるのか?

 NFT支持者や初期の投資家は、NFTマーケットプレイスは新たなデジタル経済圏のフレームワークになると主張している。この技術の未来に夢見ている人も多い。人々が感じるFOMO(逃すことへの恐怖心)は大きく、メタバース上に「設置」された低解像度のサルの画像やミーム画像、さらには、ほかのNFTが数千ドルの価値に及ぶ可能性もある。

 私たちは進化の途中にあり、真の進化が起きる際には財産が築かれる。しかし、NFTは投機であり、実際の裏付けがない推測に過ぎない。技術的な革新・成長に焦点が当たるのなら、発展の過程は興味深いものであり、どのように進化するかが楽しみな部分はある。十分に注意を払い、身を守ってほしい。

広まるNFT詐欺と、それを避ける方法

[引用・出典元]
NFT: A new‑fangled trend or also a new‑found treasure? by Jake Moore 25 Jul 2022 - 11:30 AM
https://www.welivesecurity.com/2022/07/25/nft-new-fangled-trend-new-found-treasure/