積雪対策はしているが
今年初めての越冬なので不安も
基地局の設置場所と作業も今回の難工事ポイント。黒部峡谷一帯は中部山岳国立公園に指定されており、基地局の設置には関係各省の許可が必要で、さらに鉄橋なども多く、その部分に設置するのも難しいほか、冬期は積雪も多いので雪崩の影響を受けない場所を選ぶ必要もある。
また道路も沿線にないため、機材の運搬や作業員の移動に苦労する。列車を使っての搬送も行なわれたが、嶋田氏は「全部のトンネルは踏破した」と言うくらい、人力での作業が多かったそうだ。
こういった厳しい条件と作業をクリアし、黒部峡谷鉄道の全区間エリア化を達成。実際に宇奈月駅から黒薙駅の区間を乗車してみたところ、トンネルに入るまではKDDIも他社の通信キャリアもアンテナピクトはMAX表示だったが、入ってしばらくすると、他社はアンテナピクトが1~2になってしまい、圏外表示になることも。一方、KDDIはほぼMAX表示を維持したままだった。
ちなみに黒部峡谷鉄道は、雪崩被害を防ぐため冬期(12月~翌年4月中旬)は運休となる。KDDI 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 品質管理部 エリア企画G グループリーダー 金月昭太氏は「積雪対策は十分しており、設置してしまえば基本的にはメンテナンスは不要。ただ、設置してからの越冬は初めてなので『冬を越えていたら壊れていた』という可能性もある」と話しており、エリア化だけでなく、エリアを維持する管理・運営も今後の課題となっている。
冬期は運休ということで2022年の営業は11月30日までなので、黒部峡谷鉄道の景観と通信エリアを体験するなら営業期間と運航ダイヤをチェックして、公式サイトなどから予約がオススメだ。
記事掲載の写真は特別に許可を得て撮影しているポイントもあるので、現地で撮影する際は注意していただきたい。