メタバースプラットフォーム「cluster」の開発・運営を行なうクラスター株式会社は10月20日20時より、第6回目となるカンファレンス「Cluster Conference 2022」を開催した。
国内最大級のメタバースプラットフォームであるcluster。本カンファレンスでは、同社が目指している「クリエイターファースト」の場づくりと、「バーチャル経済圏」の確立に向けて新たに実装する機能や、クラスターが目指す「メタバースの未来と新たな可能性」について発表がなされた。
実際にclusterアプリを使用し、参加してきたので、その全貌をレポートしていく。
近年のクラスターの振り返り・歩みからスタート
オープニングでは加藤 直人CEOが鳥のアバターの姿で登場。
「人類の創造力を加速する」という同社のミッションや、そのミッションを達成するための手段としての「バーチャル経済圏のインフラを創る」というビジョンについて話した。
加藤CEOの挨拶もそこそこに、プロダクトマネージャーの東峰 裕之氏が登壇。モバイル版のリリースが行なわれた2020年のカンファレンスおよび、Meta Quest 2に対応した2021年のカンファレンスの振り返りが行なわれた。
東峰氏は、2020年~2021年のモバイル版・スタンドアロンVR対応により間口が広がり、それまでイベントプラットフォームだと認識されていたクラスターが「身近」で「手軽」なプラットフォームになってきたと語った。
続いて、成田暁彦COOが登場。成田COOからは、主に2022年に実施された大型トピックの紹介があった。
ユーザーが自分でワールドを創造することができる大型コンテンツ「ワールドクラフト」のリリースや、自分でワールドをつくれない人の為の「『ワールドクラフト』パック」追加などについて触れた。
また今年から始まった毎月25日の「アバターの日」、東京ゲームショウといったオフラインイベントへの出展、法人イベントの数々の実施など2022年の実績について語った。
成田COOは、アバター/ワールドクラフトなどの創作を通じ、それをコミュニティー上で拡散し、エンゲージメントし、マネタイズしていく、といった「クリエイターエコノミー」を今後さらに加速させるために努力していく、とまとめて近年の振り返りを締めた。
カンファレンスの目玉。怒涛の新機能発表!
鳥のアバターを使っていた加藤CEOが人間のアバターになって登場。カンファレンスの目玉となる新発表情報の解禁に会場にいたアバターたちも大きな盛り上がりを見せていた。
クラスターといえばクリエイティビティーだと再度語った加藤CEO。これまではワールド・アバターの2つのクリエイティブ要素で展開していたが、それに続き、「アクセサリー機能」を追加すると発表。
アクセサリー機能はどのアバターにも使用でき、身体のどこにでも装着可能。どのワールドでも使うことができるほか、いつでも付け替えが可能だとしている。リリース日は本日(10月20日)からだとし、観客からも歓喜のコメントが上がっていた。
これに付随して、クリエイターが創ったオリジナルアクセサリーを売買することができる「アクセサリーストア」も12月に開設すると発表された。
また2つ目の発表として「スクリプト対応」も発表。本機能はJavaScriptで書くことができ、スクリプトを埋め込んだアイテムはワールドクラフトでも使えるとしている。
もちろんスクリプトが書けないユーザーも、ストアでほかのユーザーが創ったアイテムを購入できるので、より自由度が広がる機能だという。
また本カンファレンスでは「ソーシャル」(VR空間内のコミュニティーを取る場所)での大きな発表もあった。
これまでソーシャルでは「音量が大きくて耳が壊れそう」、逆に「声が小さすぎて聞こえない」といった事例や「ノイズがひどくて聞き取れない」といった音響に関する問題があったという。
そこで今回、「音声ノーマライズ」と「ノイズキャンセリング」機能が実装。加藤CEOは「ソーシャル空間でより『喋る』といったことに集中できるようになる」と語った。
会場も盛り上がる中、クラスターもユーザー数が増加し、イベントのジャンルも増える中、音楽イベントが目立ってきたと語る加藤CEO。そんな中、音楽イベント参加時にアバターの動きをダイナミックに表現したいという要望もあるという。
この音楽イベントに関連して、4つ目の発表として「VR 8点・10点・11点トラッキング」機能の実装を発表。音楽イベントにおいて「動き」をより表現できるようになっている。
さらにワールドクラフトにおいても大きくアップデートを実施。
ワールドクラフト上で「青空しかない」、「フレンドじゃない人と作りたい」「BGMがなくてシーンとしている」といったユーザーの不満要素があるとし、新たに「スカイボックス変更機能」、「BGM設定機能」、「パブリッククラフト機能」を発表。
続いて加藤CEOは、冒頭に話したクラスターのテーマでもあるクリエイターエコノミーに触れ、ユーザー同士がクリエイトしたアイテムを売買していく経済活動をより推進していくとコメント。
現在すでに実装されている「クラフトストア」、そして12月実装予定の「アクセサリーストア」に続き、第3のストア「アバターストア」の開設を発表。リリース日は2023年春以降を予定しているという。
カンファレンスでは2023年に向けたアップデートの考えについても触れられ、ユーザーエコノミーというものを基本軸に、ユーザーがハックできるような仕組みをどんどん実装していきたいと語った。
これで終わりかと思いきや、突如動画が流れ、最後には「カメラ2.0」発表も行なわれた。
加藤CEOは「ずっとカメラ機能を拡張したいと思っていた」と語り、今回のアップデートでは、より直観的で使いやすいUIに進化することに加え、カメラのワールド固定やフォーカス機能も実装されるという。なお、リリース日は11月初旬となり、VR版が先行リリースされる。
最後に加藤CEOは「人がもっとも尊いと思うところは人がモノを作れることで、妄想でしかなかったものが、形になる瞬間が自身が一番感動することで、自分はそのために頑張っている」とコメントした。
本カンファレンスを通じても、加藤CEOは、クリエイター自身が創造し、それを形にするクリエイティビティーが最も重要であると何度も語っていた。
アップデートもそれに向き合ったもので、会場にいた筆者としては、その盛り上がりをバーチャル上にいながら感じることができた。
加藤CEOは、これからもクリエイターのみなさんと未来と作っていきたいとし、本カンファレンスを締めた。
メディア向けの質問コーナーも開かれた
Cluster Conference 2022の後、メディア関係者向けに「CEO加藤へ質問コーナー」がクラスター上で実施された。
――これから先、クラスターが選ばれるためにどこに注視していくのか?
加藤CEO:clusterの戦略はどこよりも「簡単」でどこよりもクリエイターに「優しい」プラットフォームを目指している。その上で、つくるのが簡単なのが重要。クリエイティビティーな才能が一部に閉じているのではなく、誰でも手軽に使えるようにしていく。
――メタバースの敷居的な問題については?
加藤CEO:現状のメタバースは90年代くらいのSNSコミュニティーに近いものだと思う。メタバースの大きな流れはヘッドマウントディスプレーによるものではなく、スマホ・PCがより身近になってきている。(中略)クラスターでは、ユーザーがゲームに近い感覚でプレイしており、またおよそ7割がスマホで楽しんでいます
――2023年の展望については?
加藤CEO:「大きな方針としてclusterをクリエイター自身がハックして、より使いやすくしていくということを想定。その上で、いまは生活空間だが、将来的にはいろんなニーズに耐えうる経済圏にしていきたいと思っている」と語った。
最後に自分には創造力がないと感じるユーザーへのメッセージとして「価値があるものを創らないと意味がないのか、という点については違うと思う。1人ひとりが違う物差しを持っていて、それぞれがクラスターで自己表現したいと思えればいいと思う。メタバースは物質に捉われない、何個世界があってもいいわけだから、ひとつひとつのワールドで、1人ひとりが楽しいと思える場所であればいい」とメッセージを残した。