毎年恒例の“秋のヘッドフォン祭”が、9月18日にリアル開催された。4月の“春のヘッドフォン祭 2022 mini”に続いて、1日のみの開催で65社が出展。入場には事前登録が必要で、約1500名の参加枠が用意された。
事前登録制によって目的意識の高いユーザーを集めることができ、滞留時間も長くなったという。例年より規模は縮小されているが、中野サンプラザの3フロアを使用した大きなイベントであり、たくさんの来場者で盛り上がっていた。
往年のオルソダイナミックを現代の技術で(YAMAHA)
イベントの目玉はYAMAHA(ヤマハ)が再び、平面磁界型ヘッドホンを開発して初披露したことだった。
いまではハイエンド・ヘッドホンの代名詞にも言える平面磁界型ヘッドホン。開発の主流は海外メーカーである。しかし、このカテゴリーはもともと、ヤマハやバイオニアといった国内メーカーが世に製品を送り出していたのだ。
ヤマハを例にとると、「HP-1」や「YH-5M」などの銘機があった。いまでは伝説の中の1ページとして記憶されているに過ぎない。
今回のヤマハの開発は、2016年ごろにそうした自分達の技術を見直すという動きがあったところから始まったという。つまり、平面磁界型ヘッドホンを「今の自分たちの技術でやり直したい」というわけだ。
私はHP-1とYH-5Mの実機を両方所持しているが、現代の観点で評価すると「素晴らしい音質」とは言い難い。それは主にマグネット強度をはじめとした当時の技術の限界によるものである。
伝統を踏襲しながらも新しい技術によって開発された新しい平面磁界型ヘッドホン(ヤマハでは“オルソダイナミック型”と呼ぶ)が、「YH-5000SE」である。5000番台のネーミングはYAMAHAのフラッグシップであることを示し、SEはスペシャルエディションの意味がある。
例えば、伝統を踏襲するという点では、サイズ調整用のアジャスターが「HP-1」と同じスライダーデザインになっている。現代的なアレンジという点では、装着感に着目して320gと軽く設計され、平面磁界型ヘッドホンの弱点である鳴らしにくさも改善を図って、使いやすさが向上している。
新設計の振動板は真円形のデザインが採用されている。これは真ん中に通常存在する固定点がなく平面磁界型振動板の理想に近いものだという。ドライバー口径は50mmでインピーダンスは32Ω。HP-1は150Ωだった。
音を聴いてみた。厚みがあって解像力が高い音で、音の立ち上がりが速く、切れ味が良い。この音が速い感覚は、性能の良い平面型ヘッドホンであることを感じさせる。低音が出過ぎないオーディオファイル向けの音調ではあるが、パンチがあって音の広がりもいいので、ロックやポップスなども楽しく聴くことができる。DAPでも鳴らせる程度の能率。ただ、すこし暗めの音調になった。据え置きのヘッドホンアンプを使えば、さらに真価が発揮できるだろう。発売日や価格は未定ということだが、発売が待たれるモデルだ。
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