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ユーフォリア、さいたま市とIT活用「スマート部活動」推進

2022年10月05日 11時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集●ASCII STARTUP編集部

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 プロスポーツの世界では、最先端のITを活用したトレーニングが当たり前のものになっている。こうした、プロレベルで行われているアクションを、一般レベル、例えば学校の部活動に応用する取り組みも増えている。今回は、ITを活用した部活動支援の一例として、さいたま市が推進する「スマート部活動」事業に参加したスポーツテック企業の株式会社ユーフォリアの取り組みを紹介する。

プロも使うツールを中学部活動に導入

 本取り組みは、中学校部活動にユーフォリアのコンディション管理ソフト「ONE TAP SPORTS」と専門家のアドバイスを導入することで、どのような成果が得られるのかを調べるというもの。

 対象部活はさいたま市内の中学校のソフトボール部と男子バレーボール部で、計80人の中学生が実証実験に参加した。もともとさいたま市では、データに基づいた効率的、効果的な指導法や、個別最適化された多様なトレーニングの実現を図る「スマート部活動」を推進しており、2021年度の活動にユーフォリアが参画した形だ。

 今回は、「ONE TAP SPORTS」の「コンディション機能」、「フィジカル機能」、「食事管理機能」という3つの機能を利用。「フィジカル測定」と「食事内容」について以下のような検証がされた。

●フィジカル向上の検証
・使用群にはアスレティックトレーナーによるフィジカル指導セッション(介入)を実施
・使用群と非使用群ともに、介入前後の時期に運動測定会を実施し、その効果を検証
※測定種目は、カウンタームーブメントジャンプ、スクワットジャンプ、0~5メートルスプリント、5~10メートルスプリント
・測定会後にアスレティックトレーナーによるフィジカルトレーニング動画の共有

●食事内容向上の検証
・使用群の生徒に毎月決められた3日間に「ONE TAP SPORTS」へ毎食の食事写真をアップロードしてもらう
・使用群には栄養士による食事内容へのフィードバックコメント、栄養セミナーなど(介入)を実施
・使用群と非使用群ともに介入前後の食事スコアを測定・比較し、その効果を検証
・実証期間内の使用群の体組成変化の検証

 対象となる各部活で、「指導介入する生徒」と「介入しない生徒」に分け、介入することによる変化、どのような差が生まれたのかを調べる、というものだ。ちなみに、今回の実証実験で用いられた「ONE TAP SPORTS」は、体温や睡眠時間、練習、食事内容などのデータを一元管理し、コンディションの可視化やトレーニング計画の策定に役立てることができるWebアプリケーション。現在、ラグビーをはじめ、日本代表では26競技、プロチームを中心に国内外で71競技、1700チーム以上が導入するなど、高い評価を得ている。

短い期間ながら好結果が得られる

 実証実験は2021年7月~12月の期間で行われ、以下のような結果が出た。

 フィジカルサポートの面では、「ONE TAP SPORTS」(フィジカル指導セッションを実施)を用いた生徒の方がよりパフォーマンス向上が認められた。コロナ禍のため約5ヵ月と短い期間での実施となったが、継続することでさらなる効果が期待できるという。

 また、食事内容向上の検証では、以下のような結果になった。

「ONE TAP SPORTS」の「食事管理機能」を使用した生徒は、平均的に食事スコアが伸びている。特に乳製品の摂取については、実施前は不足しているケースが多かったが、フィードバックを行うことで摂取回数と量が増加。また、同時に体組成の変化についても検証を行ったところ、短期間のため体重の大きな変化はなかったが、筋肉など「除脂肪量(体脂肪以外の重さ)」は増えた結果になったという。栄養管理サポートを行うことは、高い効果が得られることが分かった。

 有用なデータが得られた今回の取り組みだが、生徒の取り組む姿勢にも変化があったという。当初は「なぜこんなことをするの?」と戸惑っていたそうだが、結果が出るにつれて前向きな姿勢になり、意欲的に取り組むようになった、とのこと。ただ与えられる課題をこなすだけでなく、どのように取り組めば効果的なのかを、自分の頭で考えるきっかけにもなるだろう。また、普段の食事内容や栄養について興味を持つ生徒も増えたという意見もあったそうだ。

「スマート部活動」は、「データと理論に基づく科学的かつ効果的かつ、効率的な指導法の確立」だけでなく、子供たちが自己成長を感じ、自己効力感を高めることも目的としている。本取り組みがその一助になるだろう。ユーフォリアによると、来年度は「フィジカル&栄養サポート」に加え、指導者向けセミナーの実施も検討しているという。若年層から国内スポーツを盛り上げるという意味でも、今後の取り組みに注目したい。

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