2022年8月30日にAMDがYouTube上で次世代Ryzenである「Ryzen 7000シリーズ」について具体的な発売時期や価格を発表したというのは既報の通り。新型コロナウイルスがこの世に猛威を奮い始めてから、どのメーカーもオンライン発表に切り替えてきたが、今回久しぶりの“リアルイベント”となった。
本稿では前回の速報ではカバーできなかった部分について、筆者がこれはと感じた箇所について解説を試みる。シリコンがどうこうとかアーキテクチャーの深い部分に関しては大原氏の連載でそのうちカバーされるので、そちらをお待ち頂きたい。
CPU形状とパッケージ
まずRyzen 7000シリーズの物理的特徴から補足していこう。Ryzen 7000シリーズではパッケージが一新され、これまでのµPGA(Pin Grid Array)からLGA(Land Grid Array)へ変更となり、ヒートスプレッダーも星形というか、8方向に“足”が突き出た感じになっている。この形状を採用した理由については不明(執筆時点で 明かされていない)だが、公開されている写真やレンダリング画像を見ると、基板裏全てを電極で埋めたため表側にキャパシターが追いやられたが、基板の端の方にもキャパシターを置かざるを得なくなった。
結果として表面に回ったキャパシターを踏まないようにするために独特の形状になったと考えられる。ただ基板を大型化してスマートな形状にするという選択もできたが、CPUそのものを大型化するとSocket AM4用CPUクーラーとの互換性確保が不可能になる。ゆえにRyzen 7000シリーズのパッケージ選択には非常に合理的だ。
このヒートスプレッダーの凹み部分はキャパシターを踏まないため、という言ったが、もっと正確なところを言えば「跨いでいる」のだ。プレス向け写真を見るかぎりヒートスプレッダーの下端と基板の間にはスペースがあるように見える。つまり殻割りして液体金属グリスを入れても、この穴から漏れてしまうし、殻割りしなくても導電性のあるグリスを使った場合は、はみ出さないよう用量に注意する必要があるだろう。
セオリー通りに組んでいればさほど気にする必要のない部分ではあるが、これまでのように雑にグリスをダバッと載せると、内部まで入り込んでえらいことになる可能性がある。カプトンテープでソケットとCPUの隙間を埋めようと思っても、ヒートスプレッダーの飛び出し部分を避けて貼るのは難しい。この辺のデザインをどう評価したら良いのかは実際に実物を手にするまでは分からない。
次にパッケージについて。速報でもお伝えしている通り、9月末に投入される4モデルについては、全てCPUのみの提供となりCPUクーラーは付属しない。これまでの慣例だと、Ryzen 5クラスは“コストに敏感なユーザー”がターゲットなのでCPUクーラーを同梱してきた。
しかし、Zen 4世代のRyzenではRyzen 5でもTDPが105Wに増えたため、Wraith StealthのようなCPUクーラーでは厳しい。AMDがRyzen 7000シリーズを“エンスージアスト向け”と謳っているのはこういう背景があると考えられる。