広島大学、カリフォルニア大学デービス校、徳島文理大学、産業医科大学の研究グループは、妊娠期の抗てんかん薬の服用によって子どもに生じる発達障害のリスクを、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療薬が抑えることをマウスを使った実験で明らかにした。
広島大学、カリフォルニア大学デービス校、徳島文理大学、産業医科大学の研究グループは、妊娠期の抗てんかん薬の服用によって子どもに生じる発達障害のリスクを、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療薬が抑えることをマウスを使った実験で明らかにした。 先行研究によると、妊婦の0.3〜0.7%がてんかんを患っており、その20%近くが抗てんかん薬としてバルプロ酸を妊娠期間中に継続服用しているという。バルプロ酸を妊娠中に高容量で服用すると、産まれてきた子どものIQ低下や発達障害(認知機能障害や注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム障害など)の発症リスクが高くなることが分かっている。 研究グループが妊娠中のマウスにバルプロ酸を投与したところ、産まれてきた子マウスは成長後に発達障害の行動を見せた。この子マウスの海馬では炎症が生じており、神経細胞の興奮状態が異常に高まっていたという。子マウスの海馬で発現が変化する遺伝子を網羅的に調べたところ、炎症性ケモカインの一種である「CCL3」の発現が上昇していることが判明。研究グループがCCL3の受容体である「CCR5」を阻害するマラビロクを授乳期に投与したところ、神経細胞の興奮は収まり、成長後の発達障害の行動も示さなくなった。 研究成果は7月29日、「ジャーナル・オブ・ニューロインフラメーション(Journal of Neuroinflammation)」誌にオンライン掲載された。(笹田)