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最新パーツ性能チェック 第377回

Threadripper PRO 5995WXを検証!Zen 3世代の最強CPUはどこまで強いのか?

2022年08月14日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

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クリエイティブ系アプリでの性能は?

 続いてはCGレンダリング以外のクリエイティブ系アプリで検証しよう。まずはフリーの動画エンコーダ「HandBrake」で試す。4K@60fpsの動画(約3分)をHandBrake上でフルHD@30fpsのMP4もしくはMKV形式にエンコードする時間を計測した。画質などの設定はプリセットの「Super HQ 1080p30 Surround」および「H.265 MKV 1080p30」を利用している。

「HandBrake」におけるエンコード時間

 ここでの処理は全てCPU上で行われているためコア数の純粋に多いThreadripperシリーズが有利だが、3990Xと5950Xの差がH.265においてほとんど付いていない点に注目。H.264(Super HQ 1080p30 Surround)は3990Xの方が短時間で終了するのでそれなりに効果があるといえる。

 そして5995WXはH.265でも3990X以上のスピードを出している。費用対効果的には5950Xで十分達成できるが、お金よりも1分1秒が惜しいという人なら、TP PRO 5000WXシリーズに投資するのも悪くはないだろう。

 続いては「Premiere Pro 2022」で編集した4K動画(約3分)を「Media Encoder 2022」でMP4形式にエンコードした時間の比較だ。エンコードはソフトウェア(CPU)、VBR 50Mbpsの1パスエンコードであり、フレーム補間はオプティカルフローを使用した。

「Media Encoder 2022」におけるエンコード時間

 このテストではThreadripperシリーズでH.265のエンコードを完走させることはできなかった。5950Xや12900KFは難なく完走できているので、コア数が多すぎるCPUゆえの不具合の可能性がある。結果が比較可能なH.264はGPU処理の割合が非常に高いことが経験上分かっており、結果としてどのCPUでも差がほとんど付いていない(むしろGPU性能で大きく短縮できる)。

 さらにGPU依存度の高い「DaVinci Resolve 18」も試してみたい。4本の4K動画を並べカラー調整などの簡単な処理を追加した8K動画を作成し、これを8KのMP4形式(H.265)に出力する。ビットレートは自動設定、エンコーダは“Native”だといつまで経っても処理が終わらないため、GPUエンコードを利用する“AMD”を選択した。

「DaVinci Resolve 18」によるエンコード時間

 CPUよりGPU(特にVRAM容量)が重要なアプリだけあって、Threadripperシリーズでは何のアドバンテージも出せていない。タイムラインの作り方次第ではCPU性能がより重要になる可能性もあるが、動画エンコードと一口に言ってもThreadripperシリーズが無条件で強い訳ではないのだ。

 続いては「Aftereffects 2022」での検証だ。テストは約10秒のフルHD動画に対し“コンテンツに応じた塗りつぶし”を適用する時間を計測する。キャッシュは事前に消去してから実施した。

「Aftereffects 2022」コンテンツに応じた塗りつぶし処理の時間

 5950Xより5995WXが優秀であることは示されたが、それでも12900KFにはわずかに及ばない。多量にメインメモリを消費するような状況では多量に搭載できる5995WXのメリットが活きてくるが、今回のような素材と検証では、メインストリームCPUには及ばないようだ。

 もうひとつ、再生時間40秒の4K動画に対し「3Dカメラトラッキング」で分析する時間を計測する。

「Aftereffects 2022」3Dカメラトラッキング処理の時間

 ここでも3990Xは完走させることができなかったため、5995WXと3990Xの性能差を見ることはできない。ただ12900KFが圧倒的に短時間で処理を終了しているため、Threadripperシリーズのメリットは見いだしにくい。

 Topazlabsの「DeNoise AI」も試してみたい。6000×4000ピクセルのJPEG画像100枚に対しデノイズ処理を施してJPEGに出力する時間を計測する。デノイズ処理時の学習モデルは“Severe Noise”を使用した。

「DeNoise AI」による処理時間

 どの環境も1枚あたり2〜3秒程度で終わらせてしまうため100枚まとめて処理させた結果、CPUによる差が割と分かりやすく出たといえるだろう。最速は12900KFだが、5995WXも中々高速。CPUコアはあまり使われていないため、5995WXの速度はメモリー帯域の太さに関連があると推測できる。

 最後に試すのは「Unreal Engine」を使ったライトベイク(ライティングの情報を事前計算してテクスチャーに“焼き込む”処理)時間も見ておこう。テストは“Infiltrator”を使用し、ライティング品質は“プロダクション”設定で“ビルド”ボタンをクリックし処理時間を比較する。Unreal Engineは4.27を使用した。

「Unreal Engine」の処理時間。ログから算出した

 これまで全く精彩を欠いていた3990Xがトップに立ったが、これまでの検証で判明している通りGPUドライバー周りの挙動がやや怪しいため、単純に3990Xが速いと決めつけるのは早計だ。しかしコア数が多いだけあってメインストリームCPUよりは高速である、ということは言えるだろう。

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