モノよりコト消費と言われて久しい。モノへの関心が以前ほどないと言われる一方で、消費者の環境への意識は高まっている。スマホは新品でなくてもいい。そんな消費者の変化を狙うのが、Back Market。フランス発のベンチャーだ。そのBack Marketが日本市場に本腰を入れるという。
リファーブリッシュ端末のマーケットプレイス
端末の状態を標準化 実際の販売は各業者が行なう
夏がさらに暑くなった。日本だけではない。欧州では、7月にロンドンで40度を超え、データセンターが大変だったそうだ。スペインやイタリアでは山火事が発生し、ベルギーでは公共交通機関や消防署員が短パンでの勤務を許可された。ロンドンやベルギーでは、家庭でのエアコンは一般的ではなく、市民プールの開館時間を延長するなどの暑さ対策も講じられたそうだ。
環境問題への関心は高まるばかりだが、そのようなニーズの高まりを見越して、2014年にフランスで立ち上がったのがBack Marketだ。リファーブリッシュのスマートフォンのマーケットプレイスとしてスタートし、現在は冷蔵庫などの家電も取り扱っている。
創業のきっかけは、リファーブリッシュ企業のビジネスコンサルをしていたThibaud Hug de Lazauze氏が、商品の価値をどうやって認めてもらうかに苦心していたことがきっかけという。リファーブリッシュ品を評価する方法や標準が確立されておらず、一定の基準を満たしたものを販売するマーケットプレイスを思いついたという。ビジネスモデルはコミッションベース。現在de Lazauze氏はCEOとしてBack Marketを率いている。
Back Marketはその後フランスから欧州へ、そして米国へと拡大。2021年3月に日本市場に進出している。同社のマーケットプレイスで販売するリファーブリッシュ事業者は世界で1500社、2018年までの販売総額(すべてリファーブリッシュ品)は310億円で、650万人以上のユーザーが購入しているとのこと。2023年にはIPOを計画しているという憶測も出ている。
リファーブリッシュスマホを買う理由で「価格」のほか
欧州で「環境」が大きく増加している
日本を含むアジア太平洋地域ディレクターを務めるAlexis Jerome氏は、市場の潜在性に自信を持つ。世界の電子機器市場規模は2021年に1兆261億ユーロ(約140兆円)であるのに対し、リファーブリッシュ製品の市場規模はわずか800億ユーロ(約11兆円)。「まだまだ成長の余地がある」と意気込む。
その背景には、環境に配慮するエココンシューマーの拡大がある。リファーブリッシュすることで電子ゴミの削減、レアメタルをはじめとした原料の削減、製造に必要な水の削減、過程で排出されるCO2の削減などが見込まれるが、Back Marketも累計30万1710トンもの電子ゴミを削減するなど、環境へのインパクトをアピールしている。
フランスで利用の多いトップ5のECサイトのうち、2つは中古品を購入できるサイトで、ECサイト利用者の50%が中古品やリファーブリッシュ品の購入経験があるという。
中古品を購入する最大の理由は“経済性”、つまり価格だが、リファーブリッシュ品購入者を見ると、環境への意識から購入するという比率は2017年の3%から、2021年には25%に増えているとのことだ。
英国のコンシューマー対象だが、Deloitte.のレポートによると(https://www2.deloitte.com/uk/en/pages/consumer-business/articles/sustainable-consumer.html)、サステナブルのために何をやっているのかという質問に対し、「新品を買うのではなく、修理して使う」が53%、「中古品やリファーブリッシュ品を購入する」は40%などとなっており、Back Marketの主張は説得力を持つ。
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