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マルチクラウドに一貫性と選択肢、柔軟さ、セキュリティをもたらす

VMware CEOが語る「“クラウドスマート”の世界」とは

2022年08月02日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 「およそ6年前から『クラウドファースト』が叫ばれてきたが、いまは『クラウドスマート』の世界になってきている。VMwareはクラウド環境をエンパワーメントし、クラウドスマートな手法を実現するための支援をしている」

 ヴイエムウェア(VMware)が2022年7月28日に開催した日本メディア向けの米VMware CEO ラグー・ラグラム氏共同インタビューでは、Broadcomによる買収の進捗に加えて、同社のマルチクラウド戦略に関する説明も行われた。

VMware CEOのラグー・ラグラム(Raghu Raghuram)氏

 VMwareでは、同社のこれまでの歴史を「3つのチャプター(章)」に分けている。

 まず第1章はサーバー仮想化の会社として、あらゆるサーバーでアプリケーションを利用できるようにした。そして約10年前からは第2章に入り、仮想化をストレージやネットワークにも適用した「SDDC(Software-Defined Data Center)」を提唱し、データセンター全体を仮想化するという変革を実現してきた。

 いま現在は第3章と位置づけられている。マルチクラウドプラットフォームを構築することで、アプリケーションをパブリッククラウド/プライベートクラウド/エッジのどこにでも配置可能にし、それをセキュアな形で運用できるようにしていると説明する。「マルチクラウドの複雑な環境を制御し、選択肢と柔軟性を持たせ、アプリケーションを展開できようにしている」

 ラグラムCEOは、2年以上前の調査で「VMwareの顧客の70%以上は2つの以上のパブリッククラウドを利用している」「顧客の40%は3つ以上のパブリッククラウドを利用している」という結果が出ていたことに触れ、「現在はさらに大きな数字になっているだろう」と語る。

 「企業は新たなテクノロジーを活用して変革を進めようとしている。コンテナを採用し、新たなアプリケーションを採用し、これをデータセンターやパブリッククラウド、エッジといったさまざまな場所で展開している。さらに各国政府は、データやクラウドに対する『主権』を主張するようになっており、これがクラウドやデータセンターの国ごとの分散化につながっている」「こうした分散化された世界で考えなくてはならないのは、いかにアプリケーションを実行し、管理し、よりセキュアにするかという点だ。VMwareはそれを解決しようとしている」

「Cross-Cloud Services」を通じてどのような世界を実現するのか?

 VMwareでは、「VMware Cross-Cloud Services」を通じてマルチクラウド環境を最適な方法で管理し、あらゆるアプリケーションを、あらゆるクラウドで構築/実行/管理/保護できる世界を目指している。ラグラム氏はここで「App Platform」「Cloud Management」「Cloud and Edge Infrastructure」「Security and Networking」「Anywhere Workspace」という5つの観点から、そうした世界を実現する具体的な製品群を紹介した。

「VMware Cross-Cloud Services」を5つの観点から紹介した

 「App Platform」では、「VMware Tanzu」によるKubernetesプラットフォームを活用。複数のクラウドにおいて一貫性のある方法でアプリケーションをビルド/実行し、アプリケーションのモダナイゼーションを迅速に実現できると説明する。

 「企業内の開発者は多くのアプリケーションを開発している。しかし、デベロッパーエクスペリエンスがすべての環境で同じではなく、一貫性がないことが課題となっている」「どんなモダンな企業でも開発者のリソースは限られており、それを最大限に生かすには、共通のデベロッパーエクスペリエンスを構築することが大切だ。どんなアプリケーションでも、どんなクラウド環境のなかでも(同じように)構築、運用できなくてはならない。だが、多くの企業はその点に苦労している。この課題を解決できるのがVMware Tanzuであり、開発者がビジネスロジックを構築して本番稼働するまでの時間を加速でき、効果的にアプリケーションを運用することができる」

 「Cloud Management」では、複数のクラウド環境におけるアプリケーションのパフォーマンスとコストを一元的に可視化し、アプリケーションの展開と運用の最適化を推進できると語る。

 「構築したアプリケーションは、データセンターやプライベートクラウド、パブリッククラウドで管理/自動化/最適化しなくてはならない。なかには、クラウドネイティブアーキテクチャーに向いていないアプリケーションもあるが、それも管理/運用する必要がある」「VMwareでは、SDDCを実現する『VMware Cloud Foundation』において、AWS、Azure、GCP、Alibaba、Oracle、IBMなど、あらゆるクラウドプロバイダーとパートナーシップを結んでいる。これにより、企業はエンタープライズアプリケーションをデータセンターで運用するのと同じように、あらゆるクラウドで運用できる」

 3つめの「Cloud and Edge Infrastructure」においては、パブリッククラウドやデータセンター、エッジといった複数の環境において、一貫性のある運用モデルを提供し、エンタープライズアプリケーションを実行できることを強調した。

 「VMwareが提供する環境には、アーキテクチャ、レジリエンス、セキュリティが組み込まれており、より適切かつ強固に、低いTCOで運用ができる。エンタープライズアプリケーションをVMwareのインフラ上に構築し、エッジでも、クラウドでも同様の環境を実現できる。そして、それらで動作するアプリケーションは相互接続することが可能だ」

 4つめの「Security and Networking」では、あらゆるクラウドのユーザー、アプリケーション、デバイス、ワークロードに、セキュリティとネットワークを組み込んでいることに触れ、「セキュリティは極めて重要な要素。『NSX』や『Carbon Black』によって、セキュアな環境を実現することができる点は、VMwareの大きな特徴になる」と語る。

 そして最後の「Anywhere Workspace」によって、あらゆるデバイスが、セキュアにエンタープライズアプリケーションにつながる環境を提供。従業員が、どこからでも、生産的に働ける環境の実現をサポートするという。

 「多くの従業員が、在宅勤務や異なるオフィスから仕事をしている。これは、コロナ禍が終わっても変わらない。企業はプラットフォームを通じて、社員を管理し、リモートワークやハイブリッドワークのなかでも、セキュアなアクセスと、その環境を管理できなくてはならない。『Workspace One』や『SD-WAN』『SASE』などの活用により、ハイブリッドワークをエンパワーできる」

 VMwareでは、これら5つの領域すべてにおいて大きなビジネスチャンスが生まれると見ている。2026年には、5つの市場を合計すると1500億ドルの市場規模が予想されている。

5つの市場それぞれで大きなビジネスチャンスを見込む

 ラグラム氏は最後に「なぜVMwareなのか」と前置きし、「それは、VMwareがユニークな立ち位置にあり、顧客の課題解消に貢献できるからだ」と語った。「実際、マルチクラウドを展開しはじめてから多くの案件を獲得している。それは、顧客がVMwareの価値を認識しているからだ」と強調する。

 「VMwareの価値は、20年以上に渡ってサービスを提供しつづけ、顧客企業の日常業務における“Trust Foundation(信頼できる基盤)”になっている点にある。航空会社、鉄道、銀行、通信会社、流通・小売など、あらゆる業界において、80~90%の仕事がVMwareを土台として運営されている。そして、VMwareにはクラウドスマートを実現する幅広いポートフォリオがあり、一部のサービスだけを提供するスタートアップとは違う。さらに、すべてのクラウドプロバイダーとのユニークなパートナーシップも実現しており、“クラウドスマートエコシステム”を構築している。これを実現しているのはVMwareだけだ。だからこそ、他社には実現できない顧客に対する価値を提供できる」

VMwareのユニークなカスタマーバリューとして3点を挙げた

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