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Ryzen 7 5825Uを採用、マルチディスプレー構成もケーブル1本で!

薄く軽い15.6型、余裕ある高いパワーで快適に仕事できるノートパソコン<IdeaPad Slim 370>をチェック

文●勝田有一朗 編集●八尋/ASCII

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普段使いやオフィスアプリを快適に実行できる8コア/16スレッドのパワーを確認

 <IdeaPad Slim 370>はAMDのモバイル向けとなるRyzen 5000Uシリーズを搭載するノートパソコンで、今回試したのは8コア/16スレッドのRyzen 7 5825Uを搭載するモデルだ。Ryzen 7 5825Uは「Ryzen 7 5800U」のマイナーチェンジ版として、今年の春先にリリースされた。動作クロックが0.1GHz引き上げられ、ブースト時の最大クロックは4.5GHzに達している。普段使いやオフィス用途には余裕のパワーを持っているプロセッサーと考えていいだろう。

 画面の描画にはAPUの内蔵GPU「Radeon Graphics」が用いられる。AMDのRyzen APUは強力な内蔵GPUを搭載することで知られており、確かに同世代のインテルCPU内蔵GPUより強力な3Dグラフィックス性能を持っている。

 ただRyzen 7 5825Uが低消費電力版APUである点や、<IdeaPad Slim 370>のシステムメモリーがシングルチャネルである点、今回試用のモデルはシステムメモリー容量も大きくないことも踏まえて、グラフィックス性能への過剰な期待は抑えておいた方がいいと思われる。

CPU-ZとGPU-Zの実行結果

 システムメモリーはDDR4-3200 8GBを標準搭載し、このうち2GBはビデオメモリーとして確保されるので、実質のシステムメモリーとしては6GBが使用できる状態だ。後からの増設はできない設計となっているが、Web閲覧や動画鑑賞などの普段使いやOfficeアプリ用途であれば動作には問題ないメモリー容量だろう。

 Windowsのメモリー管理は結構賢く、メモリー圧縮などを駆使して空き容量を確保するほか、昨今はストレージが高速なSSDになったことで仮想メモリーへのスワップが発生しても、極端な操作レスポンス低下は発生しにくくなっている。

 一方でメモリーを一気に大量消費するクリエイティブ系のアプリなどでは実際のメモリー搭載量が重要で、メモリー不足が発生した際のパフォーマンス低下は避けられない。もしそのような用途で使用する可能性があるのならば、<IdeaPad Slim 370>の購入時には16GBメモリーを標準搭載したモデルを選択しておきたい。

 ではここから、実際のベンチマークアプリを用いて、<IdeaPad Slim 370>のパフォーマンスを見ていくことにしよう。

 最初に実施するベンチマークは、プロセッサーのマルチスレッド性能とシングルスレッド性能を3DCGのレンダリング速度で測る定番ベンチマーク「CINEBENCH R23」だ。

「CINEBENCH R23」の実行結果

 結果はマルチスコアー9334pts、シングルスコアー1432ptsだった。低消費電力版APUであるため、TDPの制限からマルチスコアーは伸び悩む傾向にあるが、シングルスコアーはデスクトップ向け「Ryzen 7 5700G」とほぼ遜色ないスコアーを出している。多くのアプリでレスポンスなどの快適な操作性の実現にはシングルスレッド性能が重要となるので、<IdeaPad Slim 370>は現行のデスクトップパソコンと遜色ない快適性を持つノートだといえるだろう。

 続いて、実アプリケーションに近い負荷でPC全体の性能を測る「PCMark 10」(Ver.2.1.2563)の結果を見ていこう。

「PCMark 10」の実行結果

 総合スコアは5538で、その内訳は、アプリ起動速度、ビデオ会議、Webブラウジングの性能を測る「Essentials」が9859。表計算や文書作成のOfficeアプリ性能を測る「Productivity」が9409。写真編集や動画編集、3DCG製作などのクリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation(DCC)」が4970という結果になった。

 EssentialsとProductivityは、それぞれスコアは9000台の中盤から後半を出しており、普段使いのWebブラウジングやビデオ会議、Officeアプリ実行などを快適に行なえる性能が備わっていると確認できた格好だ。

 とくにProductivityは、内容にGPUコンピューティングの項目を含んでいるのだが、インテルCPUの内蔵GPUでは12コア/20スレッドの「Core i7-12700」をもってしてもスコアー7400前後までしか伸びない。Ryzen APUの内蔵GPUの強さがわかる結果といえるだろう。

 一方で、同じくGPU性能が重要とされるDCCのスコアだが、こちらのスコアは5000を切っており、少々物足りない結果だ。Ryzen APUであればもう少し高いスコアも期待されるのだが、低消費電力版ゆえのTDP制限や、メモリーの容量・帯域不足によってスコアが伸びないのだと推察できる。<IdeaPad Slim 370>は3Dグラフィックスが中心となるアプリやゲームは、そこまで得意ではないと考えた方がいいだろう。

 最後のベンチマークとして、内蔵ストレージの転送速度を「CrystalDiskMark 8.0.4」で計測した。事前に「CrystalDiskInfo 8.12.7」にて内蔵ストレージのモデルを確認したところ、レビュー機にはPCI Express Gen4接続で3D TLC NANDを採用する512GBのM.2 NVMe SSDが搭載されているのがわかった。ただ、Ryzen 7 5825UはPCI Express Gen3までしかサポートしていないので、実際の接続はPCI Express Gen3相当だと思われる。

「CrystalDiskMark」実行結果

 テストの結果はシーケンシャルリードが3235MB/s、シーケンシャルライトが3028MB/sとなった。PCI Express Gen3接続とするならば上位モデルに位置する性能が出ている。普段使いやOfficeアプリ用途でストレージ性能に不満を感じることはまずないだろう。

 ストレージ容量も512GBあれば、普段使いやOfficeアプリ用途で容量不足に陥ることは当面ないと考えれられる。

普段使いやOfficeアプリを余裕をもって快適にこなせるスタンダードノートパソコン

 今回試した<IdeaPad Slim 370>は、Ryzen 7 5825Uのハイパワーも相まって、Web閲覧や動画鑑賞などの普段使いやOfficeアプリの実行くらいであれば余裕をもって快適に使えるノートパソコンということが確認できた。

 一方で得手不得手もハッキリしており、とくに3Dグラフィックスを多用した3Dゲームには向いていない。試しに原神を少しプレイしてみたのだが、低画質設定で1920×1080ドット時のフレームレートは20fps前後、1280×720ドット時で40fps前後というものだった。

 3Dゲームの実行にはシステムメモリー、ビデオメモリー共に容量が不足している可能性も高く、システムメモリー16GBを標準搭載するモデルならばあるいは……という可能性も捨てきれないが、少なくともシステムメモリー8GBモデルは普段使いやオフィス用途に絞ったパッケージングと考えるべきだろう。

 ゲームプレイではなく、普段使いやオフィス用途に絞れば文句のない快適さで、15.6型ながらスリムで軽量な筐体は持ち運びがしやすく、家の中の好きな場所でパソコンを使うことも容易だ。そのような運用を考えている人に<IdeaPad Slim 370>はピッタリの選択肢になるだろう。

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