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山谷剛史の「アジアIT小話」 第182回

中国でファーウェイが取り組んでいる、脱Wintelなパソコンの数々

2022年07月25日 12時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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 ファーウェイは「HUAWEI MateBook」シリーズなど、Windows PCも積極的にリリースしているのはアスキー読者ならご存知だろう。一方で、同社は中国市場では、CPUにスマートフォン向けSoC「Kirin」シリーズ、OSは中国産でLinuxベースの統信UOSを搭載したPCを提供している。この1、2年で中国で再度盛り上がり始めた、龍芯搭載製品をはじめとした中国産の非Wintel系PCのひとつである。変わり種だが侮れないファーウェイの非Wintel PCを今回紹介しよう。

ファーウェイは中国本国では非WintelなPCを提供している。ただし、個人向けには販売していないので、市場で見かけるようなことはあまりない

ファーウェイ製スマホでおなじみの
Kirinシリーズを搭載したPCが中国には存在する

 ファーウェイのMateBookを触ったことがある人ならば、少なくとも安っぽくない質感だと感じたはずだ。あの筐体で中身にオクタコア2.86GHz駆動のHiSilicon製「Kirin 990」ベースのシステムを採用したのが、同社のノートPC「華為擎云(ファーウェイチンユン)L410」である。CPU以外のスペックは、GPUにMali-G76、メモリーは8GB、ストレージは256GB SSD、それに14インチディスプレイで、値段は8000元(約16万円)となっている。

 ただし、この製品を淘宝網(タオバオ)などのECサイトで購入することは難しい。あくまで政府や企業向けの端末であり、この手の政府系向けモデルはネットでもリアルショップでも個人向けにはまず販売されないからだ。

 したがって中国のガジェットマニアすらも入手が難しいのだが、それをどうにかして入手してレビューしている猛者も中国のネット上にはいる。レビューをいくつか読んでいくと、この製品は中国開発のOSとCPUとはいえ、すでにコンシューマー向けPCで洗練させたMateBookの筐体にスマートフォンファンにもおなじみのKirin 990が入っているだけに、「5秒で起動し、日常使いでもっさりすることはなく快適」だという。

 一方で、現状ではWindowsを入れることが不可能で、インストールされた統信UOSを使うしかなく、「オフィスワークで利用する微信(WeChat)をはじめとしたアプリは入れられるが、アプリの数が少なすぎる」との声も見られた。

 そんなノートPC「華為擎云L410」の次モデルとして、「華為擎云L420」が発表されている。この製品には「Kirin 990」の代わりに5nmプロセスの「Kirin 9006C」を搭載している。謎のSoCである「Kirin 9006C」だが、どうやら分解したところ「HUAWEI Mate 40 Pro」などで採用された「Kirin 9000」と同じではないかと分析されている。

謎のチップ「Kirin 9006C」を搭載しているという

Kirin以前にもサーバー向けチップを搭載したマシンも
中国企業・政府機関だけでも大きな市場がある

 ところでファーウェイは、Kirin搭載PC「擎云」の前にも、政府や企業向けとして、7nmプロセスで製造したARMv8ベースで2.6GHz駆動のオクタコアCPU「鯤鵬(クンペン)」を搭載したマザーボードをPCメーカー各社に提供している。「鯤鵬」はファーウェイが開発したサーバー「泰山(Taishan)」向けチップで、これをクライアントPC向けにも提供するというものだ。

ファーウェイがPCメーカー各社に提供するKunpengマザー

 マザーボードに搭載されたCPUは「鯤鵬920s」で、メモリーはDDR4-2400を64GBまでサポート。そのほか、SATA 3.0×3、M.2×2、PCI Express 3.0スロットは、×16、×4、×1が1つずつ用意される。こちらもサポートするOSは統信UOSや中標麒麟など中国系OSだけとなっている。ちなみに搭載製品には「Kunpen Inside」シールが貼られる。

 そんな「Powered by Kunpeng」マシンをリリースしたしたメーカーはそのほとんどが地場の企業・政府向けSI企業であるためか、筆者も聞いたことがないのだが、その中で唯一比較的有名なのが、老舗メーカー「清華同方」によるものだ(老舗といっても現在シェアは低い)。

 一番メジャーな清華同方製の搭載製品をレビューしたユーザーによれば、この製品はHynix製チップが載った8GBメモリーと、中国開発の3G方式「TD-SCDMA」の主要メンバーである「大唐」による256GB SSDを搭載しているという。ちなみに大唐製SSDはやたら遅いというネットユーザーのベンチマークレポートがあり、昔ながらの「愛国成分が強く性能がひどい」とネットユーザーに揶揄されている。この清華同方の製品だが、ユーザーレポートによると、オフィス用途で使う分には問題ないが、動画サイトを再生するとCPU使用率が100%近くになるという。やはりオフィス用途以外ではまだまだ非現実的なようだ。

 時系列ではファーウェイのKunpen搭載システムのデスクトップPC、その後にKirin搭載ノートが出た。Kirin搭載パソコンが出る際には、「政府機関向けの巨大な買い替えニーズにファーウェイが応えた! レノボなどのライバル会社がピンチ!」とも評されていた。あまり聞いたことがないメーカーのショップブランド機のような製品よりは、ガワもしっかりしたノートPCのほうが魅力的だと思うところだろう。

 中国全体で見れば、地場企業・政府機関向けだけでも5000万台近い市場規模がある。そこにファーウェイの製品か、あるいはライバル企業が製品をぶつけてくるのだろうか。いずれにしてもなにかしら出てくるのだろう。今後も動向を注視したい。

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