新横浜ラーメン博物館のウラ話 第13回

【連載】ラー博にまつわるエトセトラVol.8 2年で味わい尽くす、ラー博30年史

文●中野正博

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 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。

 今月より、過去にご出店いただいた約40店舗の銘店を2年間かけて、3週間のリレー形式で出店していただく「あの銘店をもう一度」がスタートしました。おかげさまで大変多くのお客様にお越しいただいております。

 前回の記事はこちら:2年で味わい尽くす、ラー博30年史

 過去の連載はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 第2弾は90余年の歴史を持つ福島・会津屈指の老舗「牛乳屋食堂」で、出店期間は2022年7月22日(金)~8月11日(木)の3週間です。

 それでは簡単ではございますが、牛乳屋食堂の歴史についてお話いたします。

 年号が大正から昭和へと移りゆく時代。会津鉄道芦ノ牧温泉駅(旧:国鉄上三寄駅)に鉄道が開通することになり、馬車宿を営んでいた井上幸美じいちゃんとキヨノばあちゃんが二人で駅前に「牛乳屋」さんをはじめました。

 鉄道の開通に伴い、駅には多くの人々が集まっていたことから、初代となるキヨノばあちゃんが、当時隣に住んでいた中国人から本場の「支那そば」の技術を学び、ラーメン屋さんを開いたのが「牛乳屋食堂」のはじまりです。牛乳屋からスタートしたことから屋号が牛乳屋食堂となりました。

 牛乳屋食堂の特徴として店主は四代全て女性であるという点です。

 福島県には日本三大ご当地ラーメンである「喜多方ラーメン」、手打ちで有名な「白河ラーメン」という有名ご当地ラーメンが存在します。

 福島三大ラーメンとしてその他に「会津ラーメン」や「郡山ラーメン」なども紹介されているものの、喜多方や白河のような明確なご当地性はありません。そのため私たちは「牛乳屋食堂」を「ふるさとラーメン(確立したスタイルはないが、地元において長い間絶大な支持を受けているお店)」という位置づけで誘致・紹介をしております。

 会津のラーメンは豚骨・鶏ガラなどと魚介+野菜などでスープを取っています。「喜多方ラーメン」と「会津ラーメン」は結構似ていますが「会津」の方が鶏の割合がやや多めで優しい味わいと言われております。

 この、みんなの「ふるさとラーメン」とは、スタートはご当地ラーメン同様、地域の繁盛店ですが、その地域でそれほど広がりを見せなかったというのが「ふるさとラーメン」です。

 ただし定義的には老舗であり、親子三代にわたり食べられていて、帰省すると必ず立ち寄るようなソウルフード的なお店です。私たちは、首都圏においてまだ紹介されていない、地域に根ざしたラーメン文化をもつエリアの店舗を、期間限定で紹介していくことを目的とし、2008年より「みんなのふるさとラーメン」をスタートしました。

 最後に「牛乳屋食堂」のラーメンについてのご説明です。

 スープは地元の老舗の風味豊かな醤油を使用し、煮干し・豚・豚ガラ・鶏ガラ・野菜のシンプルな郷愁漂うあっさりとした味わいです。麺は多加水熟成の麺は、手切り・手揉み極太麺と手揉み中太麺の2種類から選べます。

 チャーシューはスープでじっくり煮込み、秘伝の自家製タレで味付け。

 なると、ネギ、海苔、メンマと昔ながらのオーソドックスな郷愁をそそる具材です。

 そして牛乳屋食堂のもう1つの名物は「カツ丼」です。

 会津で「カツ丼」というと「ソース」?「煮込み」?と聞かれることが多くあります。これは「ソースカツ丼」と「煮込みカツ丼」の2種類の「カツ丼」が存在するからなのです。

 戦後、会津では食堂が増えるとともに「カツ丼」が名物となり、「煮込みカツ丼」も誕生しました。この「煮込みカツ丼」そして、「ソースカツ丼」にキャベツを入れたものは会津が発祥とも言われております。また、「伝統会津ソースカツ丼の会」という組織が立ちあがるほど、「カツ丼」は地域に密着した食べ物です。

 牛乳屋食堂のカツ丼は豚肉をラーメンのスープ出汁と特製ソースで煮込んでおります。

 ソースカツ丼は「全国丼グランプリ2018」で金賞を獲得しております。

 次回は第3弾 川越「頑者」についてお話ししたいと思います。お楽しみに!

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文/中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。