過去に爆発的に人気となった「名機」を現代に復刻させているのがノキア(HMD Global)。2017年に「Nokia 3310」を復刻し、2018年には映画マトリックスで話題になった「Nokia 8110」、通称バナナフォンを蘇らせました。その後も毎年数モデルの復刻を続けてきましたが、2022年のリバイバルモデルとして注目の3機種が出てきました。なおいずれもKaiOS搭載のフィーチャーフォン。日本のユーザーの利用にはあまり向いていません。
まずは「Nokia 5710 XpressAudio」。赤を基調に黒または白のボディーのコントラストがどことなくかっこいい製品です。XpressAudioという名称からオーディオ機能が強化されていることがわかります。製品写真を見ても背面に小型ヘッドフォン(TWS)が見えますね。しかも背面に内蔵されているようです。
背面上部はスライド式のカバーで、その中にTWSを収納できるという仕組みです。収納中は常に充電されるためTWSの電池切れの心配もありません。なかなか優れたアイディアですが、中国では無名メーカーからこの類の製品はいくつか出てきたことがあります。また最近は同様に無名メーカーのスマートウォッチにTWSを内蔵したものもよく見かけます。ノキアがこんな製品を出すということは、実際にそれらの製品が使いやすいという評価を受けているのでしょう。
なお「5710」そして「XperssAudio」の名称は、ノキアが2007年から展開していた音楽端末をインスパイアしたものです。2007年3月登場の「Nokia 5700」は本体下部が360度回転し、テンキーと音楽再生キーを入れ替えるように使えるという変態ギミックが特徴の製品でした。本体の色の配色も当時としては斬新で、かなりの人気モデルになりました。なおOSはSymbianのS60搭載のスマートフォンです。
このNokia 5700がヒットしたことから、ノキアは音楽端末をシリーズ化することを決定します。当時はiPadも大人気でしたし、初代iPhoneも登場。iPhoneは登場時はアプリが使えず音楽機能と完全なブラウザが大きな目玉でしたから、ノキアとしても音楽端末でアップルの動きをけん制しようと思ったのでしょう。音楽端末は新たに「XpressMusic」の名前を付け、「Nokia 5310 XpressMusic」を発売。これも人気になりました。
2008年にはS60のタッチパネルスマートフォンを初めて投入しますが、その名前は「Nokia 5800 XpressMusic」でした。やはりノキアとしてはiPhoneの音楽機能を脅威と感じており、スマートフォンも音楽性能をアピールしたのです。Nokia 5800 XpressMusicは画面タッチ操作も可能でしたが感圧式パネルだったためスタイラスペンを内蔵。ストラップの先にはギターのピック型の三角形のスタイラスがついており、また本体を横に立てるスタンドも付属していました。
XpressMusicシリーズの中でも2009年に登場した「Nokia 5730 XpressMusic」は異色の存在。閉じるとテンキー、横から開くとQWERTYキーボードが現われる音楽端末です。フィーチャーフォンに見えますがこれもS60搭載のスマートフォン。ノキアはまだまだタッチパネル式スマートフォンの開発に手こずっており、iPhone対抗のために今度はテキストメッセージを打ちやすいキーボード搭載機を出したというわけです。
しかしこれらXperssMusicシリーズは2007年から2009年の3年間に7モデルを出して終わってしまいました。もはやスマートフォンで音楽を聴くことは当たり前になったため、あえて音楽機能をフィーチャーする意味がなくなったのでしょう。なお翌2010年の世界のスマートフォンのマーケットシェアは、1位ノキアで33%、2位がブラックベリーのRIMで16%、3位アップル16%、4位サムスン8%、5位HTCが7%でした(IDC調査、小数点以下四捨五入)。今では信じられないような並びだったのです。
これらのXpressMusicシリーズのモデルの型番は5000番台でした。今回復刻し、名称を今風にしたXpressAudioが5710というモデル名なのは、XpressMusicシリーズの型番に則ったものであるわけですね。
さて今回ノキアは他にも「Nokia 8210 4G」と「Nokia 2660 flip」の2機種を投入。Nokia 8210 4Gはアンテナレスで2000年代初頭に大ヒットした「Nokia 8210」のリバイバル。またNokia 2660 flipは3月発売の「Nokia 2760 flip」のマイナーチェンジモデル。こちらはオリジナルとして2006年の「Nokia 2660」があるものの、折りたたみ以外のデザインは大きく異なっており、復刻というより懐古モデルという意味合いが強い製品でしょう。
3モデルとも4Gに対応。海外のフィーチャーフォンも2Gや3Gは少数派となり4Gへの移行が進む中、ノキアとしてはそれらの買い替えユーザーを引き付けようとしているのでしょう。日本での発売はありませんが、ちょっと気になる製品と言えそうです。
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