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ミッションクリティカルシステムの近代化、ビジネスプロセス全体のデジタル化におけるOracle Cloudの優位性を語る

日本オラクル、2023年度の事業戦略で“5つの重点施策”を掲げる

2022年07月08日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本オラクルは2022年7月7日、2023年度(2022年6月~2023年5月期)の事業戦略説明会を開催した。社長の三沢智光氏は、日本の経済とIT、特にエンタープライズITにおける課題を指摘したうえで、今年度は日本のトランスフォーメーションとITの進化のために“5つの重点施策”を設定したことを明らかにした。

 加えて、昨年度はIaaS/PaaSの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」とSaaSの「Oracle Cloud Applications」で多くの国内導入事例を獲得したことも紹介。「ミッションクリティカルシステムのモダナイズ(近代化)」や「ビジネスプロセス全体のデジタル化」といった課題の解決における、Oracle Cloud製品独自の優位性を説明した。

2023年度の日本オラクルが掲げる“5つの重点施策”

日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏

エンタープライズITが抱える4つの課題の解決を支援していく

 三澤氏はまず、日本のエンタープライズITが抱える課題から説明した。

 日本では過去20年にわたって名目GDPがほとんど成長しておらず、IT投資額に至っては1995年よりも減少しているのが現状だ。「多くの経営者が『トランスフォーメーション(DX)をしなければならない』と言いながらも、『IT投資を大幅に増額する』と宣言している経営者は本当に少ない」(三澤氏)。

 増えないIT予算をやりくりしながら、新たなビジネス施策の展開に打って出るためには、昔から変わらず続く「保守コスト8割、新規投資2割」のIT予算配分にメスを入れる必要がある。しかし、日本ではシステム開発や運用の外部委託が多く、コスト削減しづらい実態がある。「こうした状況は徐々に変わりつつあるとはいえ、まだこれが実情だ」(三澤氏)。

1995年を起点とした、米国と日本の名目GDP、IT投資の推移(OECDデータより)。「(GDPとIT投資に)相関関係があるかどうかは定かではないが、あるんじゃないかと思わざるを得ないような状況」(三澤氏)

 日本が直面する別の課題として、労働生産人口の顕著な減少、さらには労働生産性の低下という課題もある。三澤氏は、こうした日本の抱える課題に対してオラクルが貢献できるのは、大きく「ITコスト構造の変革」「デジタル化による業務の自動化」という2点ではないかと述べる。

 さらに詳しく、エンタープライズIT領域に絞り込んで課題を整理すると「変化に追随できない複雑なシステム」「ビジネス価値が希薄な基盤更改」「事業継続リスクを抱えた基幹システム」「行き過ぎたクラウド神話」の4つがあり、これらの解決を支援するために今年度は“5つの施策”に注力していくと説明した。

オラクルが考えるエンタープライズITの課題

ミッションクリティカルシステムの近代化におけるOCIの強み

 説明会では、5つの施策のうち「ミッションクリティカルシステムの近代化」と「ビジネスプロセス全体のデジタル化」を取り上げて、Oracle Cloudの特徴を生かしてどのように顧客を支援していくのかを説明した。

 まずミッションクリティカルシステムの近代化については、同社のIaaS/PaaSである「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」が、国内企業のミッションクリティカルシステムのクラウド化案件で多く採用されていることを紹介した。大日本印刷(DNP)、三井不動産、東芝、野村総合研究所(NRI)、ウエルシア薬局、ファンケル、パーソルキャリア、NTTドコモといった企業が、基幹業務システムの基盤としてOCIを採用し、モダナイズに取り組んでいる。

 「今まで本当に使いづらくて、重くて、しかも実は非機能要件が弱かったミッションクリティカルシステムを、オンプレミスからクラウドにリフト(移行)する。そして、リフトした先のクラウドでデータ活用基盤と連携させたり、使いづらかったアプリケーションのマイクロサービス化を進めていく。紹介したお客様は、こうしたメリットや将来的なビジョンを基にOCIを活用いただいている」

国内のミッションクリティカルシステムにおけるOCIの採用事例

 三澤氏は、特にミッションクリティカルシステムのクラウド化、モダナイズについては、OCIやオラクルならではの、他社の汎用クラウドサービスにはない優位性があると強調する。

 「OCIならではのポイントとしては、ミッションクリティカルシステムであっても定期的なパッチ適用ができる、データベースがすべて暗号化される、DRサイトも低コストで構築できる。さらに、Oracle DBを使ったオンプレミスシステムからの移行であれば更改コストは本当に低コストで済むし、ハードやソフトのEOS/EOLの問題からも解放される、インフラの複雑な運用も自動化できる。そして非機能要件、たとえば可用性や性能といった要件も完全に担保できる」

 また、先日のアップデートでより小規模から導入が可能になった「OCI Dedicated Region」や、「Compute Cloud@Customer」「Exadata Cloud@Customer」のような、分散/ハイブリッドクラウドサービスの提供も特徴として挙げた。

ミッションクリティカルシステムが求める「非機能要件」にどう対処できるかもポイントだと語った。一例として、データベースクラウドの高いIOPSを紹介

 こうしたOCIそのものの強みだけでなく、移行/導入/運用サービスをデリバリするオラクルやパートナーの強みも「非常に重要」だと三澤氏は付け加える。

 「先ほど紹介したような事例を通じて、われわれオラクル自身が数多くの、最新のテクノロジーを使ったデリバリのノウハウを構築してきた。現在は、そうしたノウハウをパートナーに移転していくことに取り組んでいる最中だ」

 具体的には、オラクルが2021年7月から提供しているOCIへのワークロード移行支援サービス「Oracle Cloud Lift Services」のメソドロジーを、多くのパートナーに展開しているという。そのメソドロジーを用いてサービスを展開するパートナーも増加しており、「(パートナーの数を)1年前と比べていただくと、皆さんも『大きな変化が起きている』と感じるのではないか」(三澤氏)。

OCIそのものの機能だけでなく、高度な顧客支援サービスのデリバリも重要視している

ビジネスプロセス全体のデジタル化には“ピュアSaaS”ERPが必要

 もうひとつが、SaaSの「Oracle Cloud Applications」を通じたビジネスプロセス全体のデジタル化支援だ。

 こちらについても、国内企業における採用が広がっているという。たとえば三井住友フィナンシャルグループ、Panasonic、本田技研工業、ファイン・トゥデイ資生堂、日本経済新聞社、ポーラ・オルビスHD、イトーキ、NECといった顧客が、クラウドERPなどのOracle Cloud Applicationsを導入している。

 その特徴と強みについて、三澤氏は「フルスイートのアプリケーションを“ピュアSaaS”として提供していること」だと説明した。「単に、オンプレミスのERPソフトウェアをIaaSに載せ替えたサービスとは異なる」(三澤氏)。

 三澤氏は、従来のオンプレミスERPの大きな問題点の1つとして「アドオン」の存在を指摘する。「ERPそのもののアップグレードはさほど難しくないが、コアモジュールと密結合したカスタマイズ、アドオンが障壁となって、更改コストが膨大なものになる。今のERP市場をおかしくしたのはカスタマイズであり、これを基本的になくしていくのがSaaSの考え方だ」(三澤氏)。

 もうひとつ、アプリケーションにカスタマイズやアドオンを付け加えることで「プロセスがそこで分断される」問題も指摘した。本来、ERPが実現してるはずのフルデジタルなプロセスが分断されることで、デジタル化の妨げになり、AI活用なども難しくなると説明する。

Oracle Cloud Applicationsの特徴、強み

 もちろん顧客によっては独自機能、独自アプリケーションの追加が必要なケースもあるが、その場合はOCI上で開発して疎結合させることで、ピュアSaaSとしてのメリットを損なうことなく実現ができると述べた。

 さらに、顧客ニーズに基づいた機能拡張も進めている。「データの統合」「マニュアル作業の自動化」「AIの活用」「ニーズに基づいた機能拡張」「業界(インダストリー)向け機能の拡充」という5つの注力ポイントを掲げており、80%以上の新機能は顧客ニーズに基づいて開発されていると語る。

Oracle Cloud Applicationsでは、5つの注力ポイントを掲げて機能拡張を随時進めている

「“脱オラクル”後の、最良の移行先はOracle Cloud」

 質疑応答ではまず、昨年11月の記者説明会において、Oracle DBを使ったミッションクリティカルシステムのクラウド化が「5年以内には5割を超えると考えている」とした発言に変更はないか、という質問が上がった。これに対して三澤氏は、「正直言うと、もっと(5割よりもさらに)移行すると思う」と答えた。

 「昨年時点では自信をもって『もっとやれる』とは言い切れなかったが、先ほど紹介したように、この半年間で日本のビッグネームのお客様で成功した事例が出てきた。しかも移行コストはかなり安く、ほとんどが半年から9カ月で移行を終えている。ただし、そのノウハウを持つ人材が日本にはまだ少ないので、そのノウハウをいかに日本のパートナーに届けられるかで、日本のミッションクリティカルシステムの成否は変わってくると考えている」

 またクラウド市場におけるシェア獲得については、「ミッションクリティカル領域に限定すれば、われわれの市場シェアは圧倒的に高い」と述べ、他のメガクラウドベンダーには引けを取らないという自信を覗かせた。

 また高額なライセンス料を嫌った、いわゆる“脱オラクル”の動きについての見解を求められると、“脱オラクル”後の移行先としてOracle Cloudが最良であるとの考えを述べた。

 「多くのお客様から『“脱オラクル”を真剣に考えている』と言われる。でも『脱オラクルの先で、一番いいのがOracle Cloud』だと。それは事実だと思う。もちろん、オープンソースDBなどに移行できるものはしていいと思うが、それをやろうとするととてつもないコストと期間がかかるもの(ワークロード)も、数多く存在する。今の日本を支えるのはそういう(ミッションクリティカル性の高い)ワークロードであり、そういう要件は無視できないと思う」

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