核融合発電に向けた実証へ、京大発ベンチャーが“世界初”の試験プラント建設
京都フュージョニアリングは7月6日、世界初という核融合発電システムによる発電を試験するプラント「UNITY」の基本設計を完了し、2024年末の発電試験開始に向けた建設プロジェクトに着手したと発表した。
本プラントにおいて、核融合プラント機器とプラントエンジニアリング技術を統合的に実証することにより、クリーンエネルギーである核融合の商用化に向けた炉工学製品群を開発する。UNITY発電プラントは、国内パートナー企業複数社との連携により建設する。
核融合は、近年その実用化に向けた動きが世界的に加速し、米英では2040年までの核融合による発電計画が発表されている。しかし、従来の研究開発はプラズマ領域に集中しており、核融合発電の実用化に不可欠な熱取り出しなどの発電機器の開発やプラント全体のエンジニアリング技術は未だ途上段階にあるという。
京都フュージョニアリングは、京都大学発スタートアップとして、プラズマ加熱装置、熱取り出しブランケット、高性能熱交換器、水素同位体排気循環装置を始めとした一連の特殊プラント機器群において世界有数の技術力を有するエンジニアリング企業。今回同社は、「核融合炉からの熱取り出し」「発電」に用いられる一連の特殊機器を核融合発電所の実環境に近い条件下で統合的に開発試験することを目的として、核融合発電試験プラント「UNITY」(Unique Integrated Testing Facility、独自統合試験施設)を建設する。
UNITYはその基本設計を終え、現在国内の複数のパートナー企業との協業により建設に着手しているという。今後2023年3月までにプラントの中核となる液体金属ループの一次建設を完工し、2024年末に世界初となる発電実証試験の開始を予定している。
核融合発電システムの試験施設はこれまで世界に存在せず、核融合による発電可能性を実証した事例もなかったという。UNITYは、核融合プラントの主要な機器の試験施設として、また核融合発電の総合的な技術実証施設として、その双方において世界に先駆けた開発計画としている。
UNITYは核融合炉内と同等の高温・強磁場の環境を放射性物質を用いること無く構築し、一連の発電システムを実証する。UNITYは核融合炉と同等の環境を構築する「炉内環境試験装置」に加え、熱を取り出す「ブランケット」、取り出した熱を輸送する「液体金属ループ」、「先進熱交換器」および「発電システム」、プラズマを加熱する「プラズマ加熱装置」、プラズマを排気する「ダイバータ」、「水素同位体回収循環装置」、そして核融合燃料の循環を試験する「燃料サイクル実証系」を備える。
同社は、現在建設が進む実験炉においても、プラズマ加熱装置や補機類を中心とした機器の需要を見込んでおり、UNITYにおいて機器の開発・実証を行なうことで、核融合プラント機器市場の開拓を目指す。市場規模は2035年までにおよそ1兆円規模に達すると予測している。
UNITY発電実証プラントは放射性物質を用いず、また核反応を発生させないため、核的事故ならびに放射性物質漏洩の危険性はないという。
UNITY発電実証プラントの建設開始時期は8月を予定しており、プラント中核ループの完成は2023年3月、発電実証試験開始は2024年12月としている。