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Microsoft Build 2022 Spotlight on Japan完全レポート 第6回

Power Platform、Azure、GitHubとAzure DevOps、さらに「開発者の成長とコミュニティ活動の価値」まで幅広いトーク

開発者どうしのつながりを生んだBuild 2022「Connection Zone」参加リポート

2022年06月16日 10時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: 日本マイクロソフト

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「井の中の蛙だった」開発者が実体験から語る、コミュニティ参加の必要性

 技術コミュニティを主体としたConnection Zoneということで、コミュニティへの積極的な参加を呼びかけるセッションが催されていたのも印象的だ。

 デンソークリエイトの小島優介氏は、3年前まで対外的なアウトプットをしてこなかった自分が、その後の発信活動を通じていかに大きく成長できたか、楽しい人生を送れるようになったかを、自身の具体的な体験に基づき、実感を込めて語った。

「発信活動を継続しながら楽しく成長する方法」というセッションを行った小島優介氏(左)。3年前まではまったく対外的なアウトプットをしていなかったという。同セッションにはマイクロソフトで技術コミュニティ支援を担当する小田祥平氏(右)も参加

 3年前の小島氏は、会社で携わる仕事は好きであり、やりがいも持っていたものの、プライベートでの勉強は「仕事での必要に迫られて、しぶしぶやる」ような人物だったという。社外勉強会への参加経験もなかった。

 転機が訪れたのは娘が1歳のときだった。仕事が非常に忙しく残業も続き、一方で育児も大変な時期となり、心の余裕をなくしていた。友人とのつきあいをすべて断り、娘ともほとんど遊べない生活の中で、「自分にとって大切なこと、働く理由というのを、このときに考え直しました」と振り返る。

 悩んだ末、上司に相談して業務量を調整し、家族との時間は確保できるようになったものの、このまま家族との幸せを維持するためには「自分はとても危うい状態にある」と感じたという。「自分は、いまのチームでしか役に立たない人材なんじゃないか、会社に依存しすぎているんじゃないか――。そこから『成長することの必要性』を感じ始めるようになりました」。

 少し時間の余裕ができたところで、まずはアプリの個人開発に取り組んだ。アプリ開発を行う中で、さまざまな開発者が発信している技術記事を参照するようになり、自分でもそうした技術記事を書くことに興味を持ち始める。

 最初は、書きたい内容の記事がWebで見つかり尻込みすることもあったが、「自分なりの視点で、自分の学びを書いた記事ならば価値がある、世の中に貢献できる」ことに気づき、書き続けたという。記事を書くことで自分自身の理解も深まり、読者からのフィードバックももらえて嬉しくなる。さらに、記事を書く=他人に説明することを前提にインプットをするので「ただ何となくインプットしていたそれまでよりも、インプットの効率が上がりました」。

 こうした発信活動をさらに頑張るために、お互いに刺激し合える仲間を作りたいと考えた小島氏は、技術コミュニティに参加することにした。ここでは「自分と同じものを目指すコミュニティに入ること」が大切だという。「それまでのわたしは『井の中の蛙』でした。自分が尊敬する人たちが集まるコミュニティに入ると、その人たちの影響を受けて成長しやすいですし、なによりすごく楽しいです」。

 コミュニティに参加して半年ほどで、それまでの考えや価値観は大きく変わったという。「コミュニティでは、自分が困ってるとみんながガンガン助けてくれます。こんな優しい世界があったんだ、というのを知りました」。

 初めてのLT(ライトニングトーク)登壇も、コミュニティの仲間に背中を押され、事前に発表資料を見てもらうなどして挑むことができた。「登壇するとポジティブなフィードバックがものすごくもらえて、モチベーションもアップします」。勇気を出してLTにトライして本当に良かったと、小島氏は振り返る。その後は大規模なカンファレンスの公募セッションに応募してベストスピーカー賞を受賞したり、LT初心者専門のコミュニティを立ち上げたりと、さらに積極的な活動を展開している。

 小島氏は、こうした自身の経験を社内のチームメンバーにも伝えて「主体的に発信活動するチーム」づくりにも取り組んだ。新たな技術やツール、プラクティスを全員で探す「提案タイム」を毎月1時間確保する、その提案を積極的に試行してとにかく試行件数を増やす、チーム全員が学んで来たことを説明(アウトプット)する勉強会を毎朝15分行う、チーム内LT大会も開催する、アプリの個人開発も勧める、といった取り組みを行った結果、現在は全員が技術記事の投稿や社外イベントでの発表を行うようになったという。

 「『やらされる』学習よりも、興味のある技術を主体的に学習するほうが効率的です。そのために自由な学習時間を毎日30~60分取ることを勧めており、たとえ携わっているプロジェクトが遅れていても学習時間はきちんと確保していいというスタンスです。さらに、インプットするだけでは全然身に付かないので、学んだことを随時アウトプットできる場を作るのも大事ですね」

 小島氏は、過去の出来事から「自分の成果が人を幸せな気持ちにすること」が自分にとって重要なことだと理解し、現在のコミュニティ活動やチームビルディングもそれが「自己実現のため」になっているからこそ楽しく継続できているとまとめた。「このセッションを視聴して、記事投稿や社外発表、コミュニティ参加を始めようと思ってくれた人が1人でもいたら、本当にうれしいです」。

 なおこのほかにも、今回のConnection Zoneでは、開発者としての成長のために大切なインプット/アウトプットの具体的な方法を紹介していく日本マイクロソフト 小田祥平氏のセッション「開発者としてどう成長するか」も開催された。こちらもおすすめだ。

* * *

 以上、全体のごく一部ではあるが、今回のConnection Zoneで催されたテーブルトピック、セッションの様子をお伝えした。オンライン開催ではあったものの、聴講者からは積極的な質問や意見が飛び、登壇者もそれに積極的に応答することで、インタラクティブかつ楽しいやり取りが生まれていた。それぞれオンデマンド配信も行われているので、視聴しそびれたという方はぜひ視聴してほしい。

 また日本の開発者コミュニティが主体となったプログラムとして、今回のBuildで発表された新サービスや新機能に対して現場の開発者視点、ユーザー視点で率直な意見が語られたことも、参加者に大きなメリットだったと感じる。次回以降もこのプログラムが継続されることを期待したい。

(提供:日本マイクロソフト)

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