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第6回 and SORACOM

海のビッグデータプラットフォームを目指すスタートアップのセンサー作り

新世代の魚群探知機でデータドリブンな漁業を開拓するAquaFusionとSORACOM

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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遠隔操作できるのがSORACOMの最大のメリット

 今回SORACOMを採用したのは定点的な観測を実現するブイ型のAquaMagic。SORACOMを搭載したLTE用の基盤は音波を出す振動子と制御用のマイコンとともにブイ型のAquaMagicに搭載されている。そのため、電源を入れておけば、あとは海に浮かべるだけでデータの送信が始まる。設置されているのは、1~2kmくらい沿岸にある定置網で、正直LTEで通信できるかどうかはケースバイケースだという。ただ、これより遠くなると、高価な衛星通信になるという。

 SORACOM導入の経緯は、一次産業での実績が豊富という周りの声がきっかけだった。「キャリアのIoTサービスは定額5000~6000円かかりますが、SORACOMは基本使った分だけというプラン。他の事業者の話も聞いて、使ってみることにしました」(竹内氏)。利用しているのはNTTドコモ回線のプランで、アドホックな用途で「Plan-D」と定点観測はより容量の多い「Plan-DU」を使い分けているという。

 利用当初のメリットはコストだったが、現在は他のサービスにはない遠隔操作が魅力的だという。ネットワーク構築などを手がけているエンジニアの丹氏は、「デバイスにSSHでリモートログインできるSOARCOM Napterなどはエンジニアの目線からしてもいいサービス。われわれの製品もまだまだ安定していないので、現場に行かなくとも、遠隔でアップデートできるのはありがたいです」と語る。その他、SIMが迅速に調達できるほか、操作のためのWebインターフェイスも使いやすいという。

AquaFusion エンジニアの丹氏

 位置情報や時間、魚群を示すテキスト系の情報だが、たまに魚影の画像も送信するという。従来の魚群探知機の100倍近くのデータが取得できるので、センサーデータをすべて送信すると、1時間に約1.5GBにもなってしまう。そのため、AquaMagic側である程度のデータ整形を行なってから、クラウド側に送信しているが、こうなると電力消費も課題となる。「養殖は毎日測らなくてもいいのですが、定置網はある程度の頻度で獲らないと意味がない。商用化にあたっては電力面はクリアしないといけないと考えています」(竹内氏)。

勘と経験をIT化したデータドリブンな漁業で日本の漁業をサステイナブルに

 ブイ型のAquaMagicは網を沿岸に配置して漁船で獲りに行く定置網での利用が前提だ。しかし、AquaFusionの技術を用いて、海の中の解像度を上げていけば、定置網なら操業の判断ができるし、養殖なら給餌に活かせる。「日本の漁獲の4割を占める定置網ですが、今は実際に網に行ってみないと、魚がかかっているかわからない。でも、どの網にどれだけの魚がいるかあらかじめわかれば、無駄に漁船を出港させなくてもよくなります」と竹内氏は語る。

 欧米の漁業は対象となる魚種も少なく、効率化や管理漁業も進んでいる。「北欧ではなりたい職業の上位が漁師さん。収入もいいと聞いたことがあります」(竹内氏)。これに対して、日本の漁業は多種多様な魚をさまざまな漁法で獲るうえ、年々魚価が安くなってきており、漁師のなり手がいないという課題がある。「僕らの両親の時代は、そもそも魚を日常的に食べていたし、漁師の方も遠洋漁業でいっぱい獲ってくれば、港町の繁華街は毎日満杯みたいな状態だったようですが、そういう時代はもう終わってしまった。これから日本の漁業が生き残っていくためには効率化は避けて通れない」と竹内氏は指摘する。

 こうした中、今までの勘と経験をIT化し、商品価値の高い魚を効率的に獲れるようなデータドリブンな漁業が今後は必要になる。たとえば、魚がどの角度で網に入ってくるのか、魚群がどの程度の深さに滞留しているのかわかれば、網の設置位置も変えられる。「待つ漁業」と言われる定置網や魚種を絞り込む養殖は水産資源への負荷も少なく、効率化の効果は充分にあるという。

 竹内氏は、「昔は獲れば獲るほど儲かるという世界でしたが、これからの漁業は少ないリソースを効率的に、継続的に共有し、漁師さんも安定的に収入を得ていくという流れ。そんな中、われわれは単に魚群探知機を提供するだけではなく、データ分析という価値を持ち込みたいと考えています」と語る。

「単に魚群探知機を提供するだけではなく、データ分析という価値を持ち込みたいと考えています」(竹内氏)

 将来的には、魚データのビッグデータ化を進め、プラットフォーム事業に進んでいきたいという。究極は漁船からのデータをリアルタイムに集めて、お天気予報のように漁場がわかるようにするのが目指す世界だ。「今までの魚群探知機のデータは画像ベースですが、AquaMagicのデータはテキストベース。そのため、漁獲量のマップや漁場の予測など、データを使った資源の予測が可能になる。これが最終的に目指しているところです」と竹内氏は語る。

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(提供:ソラコム)

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