CPUパワーはコア数勝負
今回FA507RM/FX507ZMのパフォーマンスを検証するにあたっては、OSのビルドから電源設定に至るまで全てを共通のものとした。OSはどちらもWindows 11だが、コア分離(VBS)はFA507RMが標準でオフ、FX507ZMが標準でオンになっていたのでどちらも有効とした。
また、Resizable BARやSecure BootといったBIOS関係の設定はFA507RM/FX507ZMともに有効がデフォルトだった。最後に電源設定はASUSの独自アプリArmory Crate上で設定できる“バランス”設定としている。
CPUの性能はコア数の差がそのまま結果に現れた
では「CINEBENCH R23」を利用して、まずはCPUの力比べをしてみよう。
マルチスレッドもシングルスレッドもCore i7-12700Hを搭載したFX507ZMの方が上回った。マルチスレッドに関してはCore i7-12700Hの方が純粋なコア数が多い(8コア/16スレッド対14コア/20スレッド)からであり、シングルスレッドに関してはCore i7-12700Hのコア設計(Golden Cove+Gracemont)がRyzen 7 6700H(Zen 3+)より新しいからと考えられる。Zen 3からZen 3+の差分は小さいため、同格のCPU同士(Ryzen 7対Core i7)ではコア数の(相対的に)少ないRyzen 6000 シリーズは不利といえる。
CINEBENCH R23と同じ3Dレンダリングのパフォーマンスを見る「V-Ray Benchmark」でも同傾向が出るか確認してみよう。ここではCPUだけでレンダリングするテスト(V-Ray)とRTX 3060のRTコアを使うテスト(RTX)の2つを使用する。
まずV-Rayのスコアーを見るとこちらもCore i7-12700Hを搭載するFX507ZMの方が高い。これもCPUのコア数の差といえるが、FA507RMとの差は5%未満と非常に小さい。一方RTXはGPUに強く依存するためスコアー差は誤差のようなものだ。CPUとGPUのどちらを使うかによって傾向が変わることをまず覚えておきたい。
CPU負荷があまり高くないアプリはRyzen 6000 シリーズの方が快適
続いてUL社のベンチマーク「PCMark10」でライトユースを想定した時の性能に差が出るかを検証してみよう。ここでは“Standard”テストを実施する。
まず総合スコアー(青)を見るとFX507ZMの方が高いがFA507RMとの差は非常に小さい。筆者の経験上この程度なら誤差レベルと言っても差し支えないレベルだ。
そして各テストグループ別の結果を見ると、FX507ZMが特に抜きん出ているのは写真編集などのクリエイティブワーク中心のDCC(Digital Content Creation)であり、Webブラウジングなどの軽い処理を利用するEssentialsでは逆にFA507RMのRyzen 7 6800Hの方が優秀だ。この差はCPUのコア数やアーキテクチャーとの噛み合わせで生まれてくるが、CINEBENCHやV-Rayで優秀だからといってどんな分野でも強い訳ではない、ということになる。
次に試すのは同じUL社の「UL Procyon」で試してみよう。まずはPhotoshopとLightroom Classicのパフォーマンスを見る“Photo Editing Benchmark”から見ていこう。
総合スコアー(青)はFX507ZMが9%弱高いが、そのスコアー差の源泉となっているのはLightroom Classicだけを使うBatch Processingテストのスコアーだ。一方PhotoshopとLightroom Classicを連携させるImage Retouchingに関してはむしろFA507RMの方が(誤差程度だが)高い。Lightroom Classicのパフォーマンスはどういった処理をするのかで変わるが、CPU負荷があまり高くないワークフローで考えた場合は、この結果のようにFX507ZMがより快適という結論になる。
続いてOffice 365を実際に動かす“Office Productivity Benchmark”も試してみよう。
総合スコアー(青)では紙一重の差でFX507ZMが勝っているが、Office 365のアプリごとの結果を見るとCPUごとに得手不得手がハッキリ分かれている。Word/Excel/OutlookはFX507ZMが有利だが、PowerPointだけはFA507RMが強い。各テストのスコアーを平均してみると差がほとんどないように見えるというカラクリだ。