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最高峰性能の小型マシン「Mac Studio」に新iPhone SE/iPad Air登場! 2022年春のApple Event 第41回

事実上現行最上位のMac! 「Mac Studio Ultra」の実力はMaxの2倍!?

2022年05月28日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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 次に、一般的なアプリケーションで、すでに述べた5種類のタスクの実行時間を測定した結果を比較する。いずれもストップウォッチによって実行時間を計測した。まず結果を一覧表に示す。すべて単位は秒で、数字が小さいほど高速となる。

・Finderによるフォルダーコピー
 一般的なフォルダーではなく、テスト時点で最新版iMovieのアプリケーション本体をデスクトップ上で複製する。Finderによるディスクのランダムアクセスによる読み込み+書き込みのテストに相当する。iMovie本体は、2020年のMac miniのテスト時から、前回のMac Studio M1 Max搭載モデルのテストまでは、サイズが約2.65GB、項目数約2万3900で、ほぼ一定だったが、今回のM1 Ultra搭載モデルのテスト時のバージョン(10.3.2)には、約2.92GBと大きくなり、項目数も約2万5000項目に増加している。

 もともと厳密な結果を期待したテストではないが、iMovieのサイズの違いを考慮しても、UltraではMaxよりもやや長めの時間がかかっている。MacBook Proの2機種で特に遅くなっている原因は不明だが、1機種内で複数回計測した際の時間のバラツキはほとんど見られないので、これも1つの実力と評価できる。

・XIPファイルの展開
 Xcode(バージョン12.2)インストール用の圧縮ファイル(11.44GB)をアーカイブユーティリティで展開する。ディスク上の圧縮ファイルのシーケンシャルな読み出しと、それを展開したアプリ本体のランダムな書き込みを組み合わせた処理となる。このテストには、いつも同じファイルを使用しているので、条件はすべて一定だ。圧縮データの伸張という処理が入るためか、ある程度CPU性能を反映した結果となった。

・iMovieによるムービーファイル出力
 これも、テスト時点で最新版のiMovieを使って、長さが約50秒の4Kビデオ(ファイルサイズは約125MB)を、再エンコードして出力する。Mac miniを計測した時点でのiMovieの仕様に従って480p出力としていたが、その後のiMovieのアップデートによって、それに近い解像度は540pのみとなったため、MacBook ProとMac Studioでは540p出力としている。エンコード処理を中心として総合力を評価できると考えているが、メモリが8GBと極端に少ないMac miniだけが特に遅くなっている。

 この処理には16GBあれば十分なようで、M1 ProのMacBook Proは、64GB搭載のM1 Max搭載モデルに比べて大きく劣ることはなかった。

・Final Cut Proによるムービーファイル出力
 Final Cut Proで、25個の8Kビデオクリップをコンポーズしながら約43秒の4Kビデオファイルとして出力する。エンコード処理して出力するデータ量が多いため、実装メモリ容量が少ないと極端に遅くなる。実装メモリが標準の8GBのMac miniが極端に遅くなっているのはそのためだ。

 またM1 Pro、M1 Max、M1 Ultraはメディアエンジンを搭載することも有利に働いている。ただし、M1 MaxとM1 Ultraに有意な差が見られないことから、チップの性能以外の部分に律速段階があることが考えられる。

・XcodeによるiOSアプリのビルド
 Xcodeによって、アップル提供のサンプルプロジェクト「SwiftShot」をビルドする。メモリ消費は多くないので、8GBのM1でもさほど遅くない。チップ性能の差は圧縮されてしまい、機種間の差は大きくない。ほとんどブラウザー上のJetStream 2と似たような性能差の傾向を示している。

M1 Ultraのポテンシャルは高いが、真価の発揮はアプリ次第

 ベンチマークテストで見たように、比較的単純なCPUテストなどでは、M1 UltraはM1 Maxの2倍のパフォーマンスを発揮できるポテンシャルを備えていることが分かった。しかし、実際のアプリケーションによるテストでは、期待したような性能差がみられないものがあるのも事実だ。処理の性格やアプリの造りによっては、各種のマルチコアの性能を十分に引き出すことができないものがあるのは致し方ない。最大で20コアのCPU、64コアのGPUの性能をフルに引き出すには、これまで以上にアプリのマルチコアへの最適化が求められるだろう。現状ではアップル純正アプリのFinal Cut Proでも、十分にポテンシャルを引き出しているとは言いがたい面もあり、今後のアップデートに期待がかかる。

 Mac Studioでは、M1 Max搭載のベースモデルの24万9800円から、M1 Ultra搭載でフルオプションを選択した場合の93万9800円まで、オプションの選択の幅と価格の差がかなり大きくなっている。それだけにオプションの選択は、ユーザーの用途に合わせて慎重に検討する必要があるだろう。

 場合によっては、1台のMac Studioに集約的にオプションをつぎ込むよりも、複数のMac Studioを購入し、いざというときにはCompressorなどを使って夜中に分散エンコーディングを走らせるといった使い方のほうがメリットが大きいこともあるかもしれない。単純にMaxかUltraか、ということにとどまらず、オプションの選択も含めて悩ましいマシンが登場したものだ。

 

筆者紹介――柴田文彦
 自称エンジニアリングライター。大学時代にApple IIに感化され、パソコンに目覚める。在学中から月刊ASCII誌などに自作プログラムの解説記事を書き始める。就職後は、カラーレーザープリンターなどの研究、技術開発に従事。退社後は、Macを中心としたパソコンの技術解説記事や書籍を執筆するライターとして活動。近著に『6502とApple II システムROMの秘密』(ラトルズ)などがある。時折、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士として、コンピューターや電子機器関連品の鑑定、解説を担当している。

 

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