第6回 大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」
2025年、4000量子ビット以上のプロセッサーの実現目指す
わずか2年で、驚くべき進歩を遂げる量子コンピュータ。IBMが発表した新ロードマップとは
IBMは、2022年5月10日、量子コンピュータに関する新たなロードマップを発表した。 ここでは、2025年に、モジュール式に拡張されたプロセッサーを活用して、複数のクラスターで構築した4000量子ビット以上のプロセッサーの実現を目指す内容も含まれている。
米IBMのリサーチディレクターであるダリオ・ギル(Dr. Darío Gil)シニアバイスプレジデントは、IBMの年次イベント「THINK 2022」の会期2日目(現地時間5月11日)の基調講演に登壇し、次のように語った。
「わずか2年間で、量子ロードマップは驚くべき進歩を遂げた。2020年に発表した量子ロードマップは、科学とビジネスのために、量子コンピューティングの力を開放する道筋を示し、2023年までのビジョンを共有した。そのロードマップの目標はすべて達成してきている。今回のロードマップは、さらに先へ行くものであり、2025年に向けて、スケール、品質、スピードが大きく進化する。インテリジェントなソフトウェアと、個々が接続可能な形にモジュール化した新しいプロセッサーを連携するとともに、量子と古典的なコンピューティングの強みを活用することで、Quantum Advantageに到達することができる」――。
IBMでは、2022年に433量子ビットの「IBM Osprey」プロセッサーを投入し、2023年には、1121量子ビットの「IBM Condor」プロセッサーを開発する計画を発表している。今回の新たなロードマップでは、それらのロードマップを実現しながら、その先の未来を示したものになる。
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