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ラーメンWalker発!「未来を輝かせるラーメンストーリーズ」第14話

ラーメン界の新星、京都『麦の夜明け』の中華そばが全日完売! ホタテの旨味に山椒が効いた新感覚ラーメン誕生ヒストリー

2022年05月25日 12時00分更新

文● 大熊美智代 編集● ラーメンWalker

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 ラーメンWalkerがテーマを決めて名店店主とともに新たなラーメンをお届けする企画。5月13~15日は、2021年12月ラーメン★スターオーディション「チャレンジ店主部門」に入選し、2月にオープンした新店、京都『麦の夜明け』が出店した。評価をしたラーメンWalkerキッチンスーパーバイザー名店店主たちも絶賛! そして今回、初出店で連日完売の快挙を成し遂げた、店主の伊藤聡孝さんに、これまでのラーメンヒストリーを伺った。

2022年、ラーメン界の新星!『麦の夜明け』店主・伊藤聡孝さん

ラーメン屋ってカッコいい!ラーメン研究会発足からラーメン店を目指して

 2022年2月17日、京都でオープンした『麦の夜明け』。店主の伊藤さんは、28歳にしてラーメン業界に身を置いて10年という。ラーメン好きになったきっかけは、小学4年生の時。カップ麺にハマったことから始まった。子供の頃から “カップ麺を作る会社に入ること”を目指して、採用実績のある同志社大学に入学した。「でも、自分でラーメンを作りたくなって、大学2年生のとき、ラーメン研究会というサークルを立ち上げたんです」と伊藤さん。同志社大学ラーメン研究会初代代表として学園祭でラーメンを出すなど活動するなかで、京都のラーメン店にさまざまな支援を受けた。ラーメンの作り方を教えてもらいながら、ラーメン店でのアルバイトをはじめ、プロのラーメン店が出るイベントにも学生代表として出店した。「そこで出逢ったラーメン屋の人たちがカッコいいなって思ったんです」とラーメンにどんどん魅かれていった。

 学生時代は『鶴武者』でアルバイトを、『麺屋裕』ではラーメン作りを個人的に教えてもらっていた。京都の名店をW師匠に持ち、ラーメン店を目指すなか、大学卒業後は日本製粉に入社。そこで業務用小麦粉の営業をしながら製粉技術を学ぶ。「東京支店に配属になって、ラーメン店や製麺所に営業に行ってました。すごい勉強になりましたね」(伊藤さん)

 5年後、小麦粉や麺の知識を身につけた伊藤さんは、ラーメン店独立を目指して日本製粉を退職。京都に戻り、開業準備を進めていた。物件を探しながら、勉強も兼ねて師匠の『鶴武者』、『麺屋裕』での兄弟子にあたる『麺屋大ちゃん』で間借り営業を始める。「お店の定休日を1日ずつ借りて、2021年10月から週2日の間借り営業を始めたんです。そこでもまた、いろいろ勉強をさせていただきました」。その頃には、今の店舗が決まり、翌2022年2月に開店する準備も同時に進めていた。

 そんな折、ラーメンWalkerキッチンのラーメン★スターオーディションの募集が目に留まった。

 「応募した理由は、今の自分のラーメンがどこまで通用するかなと。超有名店の方が評価に携わるので、自分の実力を見てもらいたいというのが一番ですね。実際、食べてもらって自分が悩んでいるところを的確にアドバイスしてもらって、さすがやなーって思いましたね」

 2021年12月に出場したラーメン★スターオーディションで、見事「チャレンジ店主部門」に入選し、ラーメンWalkerキッチンスーパーバイザーである『百麺』宮田店主や『中華そば四つ葉』岩本店主など、有名店の店主たちから高く評価される。

2021年12月のラーメン★スターオーディションでは、『百麺』の宮田店主と『中華そば四つ葉』岩本店主が評価会で絶賛

 これまでに積み重ねてきた知識と技術、そしてラーメンWalkerキッチンでの受賞。自身の中華そばに磨きをかけ、2022年2月17日に『麦の夜明け』はオープンした。

2月にグランドオープンした『麦の夜明け』。初日から連日行列の人気店として評判に

「思った以上のとんでもない数のお客さんが来てくださってうれしいです。実際、独立してみて、仕込みが終わらなかったり、安定したものを作れなかったり、ラーメン屋の大変さも改めてわかりました」という伊藤さんの次のステップは、ラーメンWalkerキッチンの副賞として獲得した出店権だ。

ラーメンWalkerキッチン初出店で連日完売!話題沸騰のラーメンの全貌に迫る

 今回の出店で用意したのは、2種類のラーメン。「帆立と山椒の中華そば」と「牛醤油と山椒の中華そば」。1つは、オーディション時のラーメンを、その時の名店店主や師匠らのアドバイスをもとに、さらなる味づくりを積み重ねて完成させたものだ。

「オーディションで出したものと基本は同じで、ブラッシュアップですね。例えば、『四つ葉』の岩本さんから、醤油をこんなの使ったらって教えていただいて、使ってみたらすごいよくなりました。宮田さんからも後半麺が伸びる感じがするから配合変えたらどうかとか、麺の調整をいろいろ教えていただきました」

 伊藤さんのコンセプトに、“わかりやすいラーメン”というのがある。「わかりやすくて奥が深いラーメンを作りたいなと思ってます」。それは、オーディション出場でより明確になったという。

「帆立と山椒の中華そば」。関東でもトップクラスを狙える、伊藤店主渾身の一杯

 ベースのスープは1種類。鶏豚魚介で出汁をとった白湯スープだ。「鶏は、名店しか使わせてもらえないくらい稀少な滋賀県産の淡海地鶏を使っています。師匠の麺屋裕さんの紹介で使わせてもらっています」というスープは、前日から炊き上げ1日寝かせることで旨味を引き出す。

寸胴の中に滋賀県産の淡海地鶏などのガラがたっぷりと。これに魚介出汁を合わせて仕上げる

 カエシは、ミキサーにかけた国産帆立の干し貝柱をふんだんに使って旨味を抽出。白醤油ベースだが、普通の醤油もブレンドし、見た目は黒い醤油色をしている。「白醬油を入れると素材を活かしてくれる」という。カエシから帆立を取り出し、その旨味を淡海地鶏の鶏油と合わせて帆立鶏油にする。

黄金色の鶏油の底に帆立が沈む、帆立鶏油。「淡海地鶏じゃないとこの黄金色が出ないんです」と伊藤さん

 さらに朝倉山椒のオイルを加え、帆立と鶏の深いコクと山椒のさわやかな香りが刺激的な一杯となる。鶏油の底に沈んだ帆立ごと提供前に混ぜて丼に注ぐため、丼の底には帆立の細かな身が沈んでいる。「みんな、それを食べるためにスープを全部飲んでくれるんです(笑)」とおいしいだけでなく、楽しい仕掛けもある。

 一方、「牛醤油と山椒の中華そば」は、“あとから山椒がくるラーメンを作りたい”というところからできた一杯。「山椒ペーストが先にあって、それに合うラーメンってなんやろって考えて、カエシに九州の刺身醤油を使った甘いラーメンができたんです。帆立オイルを入れたらなんか違って、いろいろ試して牛オイルを入れたらめっちゃ旨いって(笑)」。試行錯誤しながら何度も試作をして、オープンギリギリにできあがったのがこちら。

「牛醤油と山椒の中華そば」。九州の刺身醤油と牛の甘いスープを、山椒昆布ペーストが爽やかに味変

 ベースのスープは同じで、香味油は苦労して辿り着いた牛オイル。「牛オイルには、その時入るいいものを使ってますが、今回は松坂牛です。牛オイルもカエシも甘く、全体的に甘めのテイストなので、丼縁に山椒昆布ペーストを添えました。味変で、混ぜると山椒が効いたスープになります」

先人をリスペクトし、ラーメン作りに真摯な店主が目指すは、京都発・日本一のラーメン屋

 自家製麺は、製粉会社で小麦粉や製麺の知識を勉強して作り上げたもの。

「製麺自体は、師匠の鶴武者さんで、大学時代のアルバイトの頃からさせていただいてました。その時は感覚的にやっていたことを、日粉に入社してから科学的に落とし込んでいった感じですね。その時、100種類以上の粉のなかから自分が開業する時はこれっていうのを探してました」

 数多くの小麦粉を吟味してできあがったのは、山口県産のせときららをメインにブレンドした小麦粉で打つ、こだわりの自家製麺だ。

自家製の平打ち細麺。退職後も応援してくれる日粉のブレンド粉を使用。宮田店主も「おいしいね!」と啜りながらうなる

 京都のラーメン店ということで、地元の食材を使いたいという思いもある。

 「僕自身は兵庫県出身なんで、山椒は兵庫の養父市でとれる朝倉山椒を使っています。コストも考えながら、できるだけ関西のものを使いたいと思っています」

肉厚メンマにも、師匠ゆずりの丁寧な仕事がうかがえる

 オープンから3ヶ月、連日行列ができる人気店となった今の状況を、「よく師匠方から言われていたのが、ラーメン屋って3ヶ月目が勝負だと。最初はよくても客足が落ちる時期って言われますが、今でもやっていけるくらいお客さんに来ていただいて、リピーターも多く、常連さんもできてきて。立地もよくはないところで、ありがたいです」と伊藤さんから謙虚な言葉が返ってくる。

 名店店主も思わずうなる『麦の夜明け』の中華そばには、自分なりのオリジナリティも加えながら、そこかしこに師匠から受け継いだ技や味も感じられる。

「師匠から学んだことを継承していきたい。もっと言うと、今までのラーメン業界のすべての人たちの、その先にいくっていう気持ちでやりたいですね。一番やりたいのは、支えていく側になること。今まで、無償でいろんなことをいろんなラーメン屋さんからいただいてきて、なんでやってくれんやろってずっと思ってました。それを自分が下の世代に返していきたい」

スープひとつ、カエシひとつのなかにも、これまで受けてきた恩がある

 学生の頃は年間600杯食べるラーメン好き。今は開業したばかりでペースは落ちたが変わらない。「今でもよく食べに行くのは、ラーメン屋さんばっかりですね。よく師匠に、ラーメン以外も食えよって言われるんです。ラーメンばっかり食ってたらあかんぞって(笑)」と、何をうかがってもラーメンのことでいっぱいの伊藤さん。

「生意気なんですけど、京都発で全国に真似されるようなラーメンを作りたい。東京が発信地の中心なので、京都もあるんだぜっていうところを見せたいです。今回は、その歩んでいくなかの1つとして、出店のチャンスをいただいて感謝しています。申し訳なかったんですが完売となるほど、予想を上回るお客様に来ていただいて大変うれしいです。今度は正式にオファーをいただいて呼んでいただけるように、自分の店をまずはしっかり軌道に乗せていきます」

 純粋に先人たちをリスペクトし、ラーメン作りに真摯な眼差しを向ける伊藤店主。“昨日よりも美味しく”を念頭に、京都のラーメン屋が日本一になることを目指す。ラーメン界の若き担い手が作るラーメンを味わいに、ぜひ全国から京都まで足を運んでもらいたい。

ラーメンWalkerキッチンの出店も大盛況で終えた伊藤店主。次なる目標は日本一!

麦の夜明け
京都市下京区西七条掛越町12-5
11:30~14:00、18:00~20:30(Lo) 
月曜休、日曜夜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/mugino_yoake)をご確認ください。

ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/

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