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広大なショッピングモールの駐車場までロボが荷物を運んでくれたら。アイシンが取り組む自動配送サービス

連載
自動走行ロボットを活用した配送サービスの未来

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カラフルタウン岐阜の店舗から駐車場の車までの自動配送を実験

 実証実験は、カラフルタウン岐阜で2021年9月から実施。走行ルートは、①施設内の店舗前をスタートし、②買い物客が往来する通路を走行、③出口の自動ドアを通過、④駐車場内を走行、⑤駐車場内の横断歩道を横断、⑥目的の車の前で停車する――という流れで、移動距離は約300メートル。店舗での商品の積み荷と、目的地での荷下ろしは、人手で行なう。

 通路幅は2~4メートル、段差は2センチ以内(バリアフリー法に対応)。ルート上の障害物は、店舗の什器、人、自動車、自転車、駐車場歩行者通路の屋根ポールなどがある。

 実験では、障害物の移動や人流や交通制限は設けず、営業時間外の朝と営業時間内の昼間の2部で実施された。なお、実導入の際にはエレベータ―を使ったフロア移動や複数店舗を回って商品のピックアップなども想定されるが、本実証では検証されていない。

 結果、2D LiDARのみでの自己位置推定はうまく機能し、ロボットの周囲を人に囲まれても問題なく運行を実現できた。屋外の駐車場での走行実験では、LiDARによる自己位置推定技術では認識が足りず、高性能ジャイロンサーを使用するとうまくいったようだ。

遠隔監視なしでの自律走行の実現と、人への親和性が課題

 アイシンでは、2023年度を目標に約33ヵ所のショッピングセンターに配送ロボットを10台ずつ導入していく想定で、機体1台当たりの開発費を60万円以下に抑えて、遠隔監視なしでの無人運用を前提としている。カーブサイドピックアップ方式が今後どの程度普及するかといった配送ニーズの把握や、課金モデルの精緻化が今後の課題だ。

 自動走行は、2DLiDARやジャイロセンサーなどによる周囲の認識結果とロボットに組み込まれた地図データと比較して自己位置を推測する仕組みだが、商業施設はディスプレーなどが変わりやすく、認識における特徴点の特定がカギになる。カラフルタウン岐阜では電灯や店舗のエッジなどが活用できたが、ここは施設ごとに検証が必要だ。

 また機体にはGPSを搭載しておらず、駐車場が屋外の施設から離れた場所にある場合は、自己位置の把握が難しく、遠隔操作が必要になると運用コストで採算が合わなくなってしまう。

 今回の実証は出発地点の店舗とゴール地点の車は固定で行なわれたが、カーブサイドピックアップまで運用するには、ロボットが注文のあった店舗で商品をピックアップして、買い物客の車まで向かうことになる。ユーザー向けの注文アプリ開発やロボット側の車の認識機能の開発に加えて、店舗側が注文を確認してロボットに商品を渡すための業務フローの整備、ロボットが車を識別するための駐車場側の区画整備なども必要だ。

 商業施設では、人との共存がマストだ。買い物客が安心できる自律走行の技術開発だけでなく、より親しみやすいロボットの意匠やインタラクションについても検討を進めていく予定だという。

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