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エンドユーザー自身でのリストアも可能に、シニアグローバルテクノロジストに特徴を聞く

最新版「Veeam Backup for Microsoft 365 v6」の注目ポイントは

2022年04月18日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 Veeam Softwareが2022年3月にリリースした「Veeam Backup for Microsoft 365 v6(以下、VBM v6)」。SaaSプロダクトである「Microsoft 365」の各種アプリケーション(Exchange Online、SharePoint Online、OneDrive for Business、Microsoft Teams)が保有するデータを保護するバックアップソリューションの最新版だ。

 VBMは過去数年、Veeamの中で最も急速に成長するプロダクトとなっているという。今回のバージョンから製品名が変更されたが(旧称はVeeam Backup for Office 365)、もちろん変更点はそれだけではない。Veeam Software シニアグローバルテクノロジストのアンソニー・スピテリ氏に、VBM v6で注目すべきポイントを聞いた。

「Veeam Backup for Microsoft 365 v6(VBM v6)」の新機能の1つ、エンドユーザー自身でリストア操作ができる「セルフサービスリストアポータル」

Veeam Software シニアグローバルテクノロジストのアンソニー・スピテリ氏

Microsoft 365の利用浸透に伴って堅調な成長を遂げる

 スピテリ氏はまず、Microsoft 365(以下、M365)の市場概況を説明した。M365は現在3億ユーザーを超える規模となっており、Teamsのアクティブユーザー数も2億5000万人超と、M365を活発に利用するユーザーの状況がうかがえる。

 M365の成長に伴ってVBMも堅調な成長を遂げてきた。ソフトウェアのダウンロード件数は累計で21万件を超えており、有償契約を結ぶユーザー数は850万以上となっている。「最初のバージョン(VBM v1)をリリースしたのは6年前だが、ここまでの成長を遂げたのはわれわれにとっても“クレイジーな”出来事だ」(スピテリ氏)。2021年の成長率は対前年比73%増と発表されている。

VBMの特徴。Teamsを含むM365のデータバックアップを行い、アイテム/ファイル単位での迅速なリストア、eディスカバリへの対応も可能

VBM(VBO)v1~v6のリリースとそれぞれの機能強化点。「比較的ひんぱんなリリースで、機能、パフォーマンス、スケーラビリティを改善してきた」(スピテリ氏)

 M365バックアップ市場のリーダーとして、「なぜSaaSでもバックアップが必要なのか」についての啓蒙活動も展開してきた。「その結果、市場に正しい認識が浸透し、VBMも成功を収めてきたと考えている」とスピテリ氏は語る。

SaaS管理者、バックアップ管理者に聞いた「M365のデータ保護を行う主な理由」(2020年調査)。ユーザー企業は「データの誤消去」「サイバー攻撃」「コンプライアンス」など幅広い懸念を感じている

ヘルプデスクの負担を軽減する「セルフサービスリストアポータル」

 最新版のVBM v6では大きく2つ、「セルフサービスリストアポータル」と「低コストなオブジェクトストレージへのバックアップコピー」が新機能として追加されている。スピテリ氏はライブデモもまじえながら、これらの新機能を詳しく紹介した。

 まずはセルフサービスリストアポータルだ。管理者にリストア作業を依頼するのではなく、エンドユーザー自身が自由に、かつ安全にメールやファイルをリストアできる機能を提供することで、エンドユーザーにおけるリストアの待ち時間節減と、管理者の作業負担削減の両方を実現する。

 「この機能については、これまで長きにわたって顧客から強い要望があった。特にエンタープライズ顧客にとって非常に重要な機能追加だと考えている。(エンドユーザー自身で操作できる)シンプルなポータルを提供することで、ヘルプデスクのプレッシャーを軽減できるものと期待している」(スピテリ氏)

 さらに、VBMを使ってM365のバックアップサービスを提供しているサービスプロバイダーにとっても、ポータルを自社開発することなくエンドユーザーにセルフサービスリストアの機能が提供できるようになったと説明する。

セルフサービスリストアポータルの概要。エンドユーザー自身やリストア担当者による、シンプルかつセキュアなリストア操作を可能にする

 ライブデモでは、Exchange Onlineのメールボックスから削除したメールのリストア操作が披露された。サインイン時の二要素認証(2FA)、アイテム名によるライブサーチ(検索)、“ショッピングカート”形式による複数アイテムの一括リストア、リストア先の選択(同じフォルダ/別のフォルダへのリストア)、リストアオペレーター(リストア専任担当者)へのロールベースのアクセス権限付与といった機能がある。

ライブデモより。簡単な操作でリストア先の変更や複数アイテムの一括リストアなどが可能だ

バックアップコピーを「S3 Glacier」や「Azure Archive」に保存可能に

 もう1つの大きな追加機能が、バックアップコピーを低コストなオブジェクトストレージに保存する機能だ。

 VBMでは、これまでも標準的なクラウドオブジェクトストレージ(Amazon S3やS3互換ストレージ、Azure Blob Storageなど)へのバックアップ機能は備えていた。今回はさらにそのコピーを「Amazon S3 Glacier/Glacier Deep Archive」と「Azure Archive Storage」に保存する機能が追加された。異なるクラウドプロバイダー間をまたいだ保存も可能だ。

 「バックアップコピーをより安価なストレージサービスに移せるだけでなく、ストレージを分離して『3-2-1ルール』を実現できる点がポイントだ。加えて、プライマリストレージ側にデータを保管しておく時間を短縮できるメリットもある」(スピテリ氏)

 バックアップコピーの管理はポリシーベースで自動化されており、保管期間の設定なども行える。

バックアップコピーを低コストなオブジェクトストレージに保存する機能の特徴

 そのほかの新機能としては、SharePointバックアップの他のロケーション(他のサイト、組織、テナント)へのリストア、単一のVBMインスタンスで複数リージョンのバックアップを管理できるマルチジオサポートがある。

* * *

 M365のバックアップ市場では、競合他社もさまざまなソリューションを提供し始めている。その中でのVeeamの(VBMの)優位性について尋ねたところ、スピテリ氏は次の2点を挙げた。

 「まずはプロダクトの成熟度だ。今回すでにバージョン6となっているが、ここまで継続的にプロダクトを改善し続け、成熟させてきた点が挙げられる。もうひとつはソリューションの柔軟性だと考えている。大規模なバックアップソリューションを導入しなければM365がバックアップできないという方式ではなく、スタンドアロンの小さなインストーラーファイルを入れるだけで機能する。ストレージハードウェアに依存することもない」(スピテリ氏)

 なおVBM v6でも従来と同様に、30日間の無償試用や10ユーザーまでの無償利用が可能となっている。VeeamのWebサイトからインストーラーがダウンロードできる。

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