このページの本文へ

パートナーとともに切り拓いてきた新しいソフトウェア販売と価値とは?

パーペからサブスクへ アドビの営業が見たソフトウェア販売のリアル

2022年04月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: アドビ

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

サブスクの時代に問われるパートナーの意義

大谷:そんなパートナーに対して、みなさんはどうアプローチしたんですか?

高橋:まずはパートナーの評価制度自体を変えてもらう必要があります。そのため、パートナーの経営者やマネジメント層に、サブスクビジネスの重要性やメリットを説明してきました。お酒をつぎながら、懇々とです(笑)。

岡上:「アプリケーションではなく、サービスを売れ」という話が社内の合い言葉になり、クラウドにシフトして、しかも何度も進化して、ようやく潮目が変わってきた感じですかね。本当にサブスクを続けると、きちんと売り上げが積み上がるというグラフを何度見せて説明しました(笑)。

アドビのトランスフォーメーションの歴史

長岡:その点、うちの経営陣のすごいところは、少なくともクリエイティブ関連の製品はAdobe Creative Cloudというクラウド型に完全に舵を切ったところです(関連記事:Adobe CS6登場、月額5000円のCreative Cloudも)。

菅田:サブスクって1回の売上は小さいのですが、継続して続くので、ウィンウィンに持って行ける。これを実感して初めてサブスクの魅力に気づいてもらえるんです。パートナーがわれわれといっしょにそこを乗り越えてくれたから、互いに高いレベルまで登れたんだと思います。

長岡:とにかくサブスクのメリットを語り続けて、実績が積み上がってくると、ようやくパートナーの信頼が戻ってきます。今度はパートナーさんも他社に対しても、「アドビみたいにやれ」みたいなことを言い出して(笑)。

大谷:理解してくれるようになったわけですね。

岡上:今のパートナーはすごく理解してくれています。違和感もないと思います。

大谷:サブスクになってパートナービジネスに変化はありましたか?

高橋:昔はPhotoshopなり、Illustratorなりを「とにかく在庫から持ってきてよ」というリクエストだったと思うのですが、お客さまのニーズはサブスクで変わりましたよね。サブスクの時代になると、パートナーの意義が問われるんです。

そう考えると、お客さまのビジネスをどれだけ理解しているかにかかってきます。コンプライアンスやワークフローなり、お客さまの求めるものに複合的に回答できるパートナーが選ばれていると思います。

大谷:サブスクになって、パートナーに求められるモノも変化しているんですね。

高橋:実はハイタッチでお客さまと話をしていると、パーペからサブスクに移って、パートナーも変わったという例もあります。シンプルな物販ではなく、トータルでお客さまのビジネスを理解した提案をしてくれるパートナーがお客さまから支持されるということだと思います。

アドビは企業買収も多いですし、製品のポートフォリオも幅広い。でも、製品の機能紹介だけすると、欲しい人しか購入しないので、たいして売れないということになりがちです。そうではなく、お客さまがなにに困っていて、課題を解決するために、どうやって製品を当てはめた方がよいかという考え方が求められてきたと思います。

岡上:サブスクのビジネスに移っても、お客さまの信頼を勝ち取っているパートナーは多いです。日本はサブスクリプションの更新率が世界で一番高いんです。お客さまからの信頼は、数字でも出ていると思います。

サブスク時代を迎えた現在、アドビがパートナービジネスにこだわる理由

大谷:サブスクへの移行で、アドビ自体の営業も変わってきましたか?

長岡:パーペからサブスクへと時代が移り、パートナーの構成比は変わっていないのですが、ビジネスはすごく変わっています。パッケージを店頭やパートナー経由で購入するより、直販のAdobe.comでライセンスを購入するパターンが増えています。

大谷:なるほど。直接・間接販売の比率が変わってきたんですね。

長岡:はい。それでもパートナー構成比が変わっていないのは、やはり営業のスタイルが変わったということです。電子サインソリューションのAdobe Acrobat Signをマイクロソフト製品との連携で売るとか、Acrobatをデジタルソリューションとして売るみたいなパートナーと連携した複合提案ができるようになっているんです。製造業においてはCADで制作したら、加工して、Photoshopで色を塗ってプロダクト化するみたいな製造業のジャーニーを意識して提案しています。

Photoshopという製品自体は、個人版も、法人版も変わらない。でも、われわれもPhotoshopいいですよという売り方ではなく、たとえばエンタープライズであればSSO(シングルサインオン)連携できる仕組みから提案したりします。退社した方がライセンスをそのまま持っていってしまうことは今もあるので、これをAdobe IDではなく、企業IDで認証させるコンプライアンスの仕組みといっしょに売るんです。こういう仕掛けをパートナーと作っていくことに注力しています。

大谷:パートナーとのビジネスで美談だけではないところまで率直にお聞きしたのですが、それでも日本法人がパートナービジネスにこだわるメリットはどこなんでしょうか?

高橋:パートナービジネスはやはりスケールするんです。私が入社したとき、日本法人は200名くらいだったので、正直多くのお客さまをカバーできない。アドビの思いを伝えてもらうためにもパートナーは本当に必要不可欠な存在だと思っています。

長岡:日本はパートナーの販売比率が北米と比べると3倍くらい高い。ですから、われわれ営業にとっても、パートナービジネスはすごくやりやすい環境。北米の企業でありながら、コンテンツを日本語で提供できるし、パートナーのイネーブルメントが優れているので、売りやすいドキュメントやツール、体制が整っています。これが日本の強みです。

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ