横浜DeNAベイスターズ2022開幕特集<番外編> 第3回

帰ってきたV戦士! 齋藤隆、石井琢朗、鈴木尚典の3コーチが語る、横浜DeNAベイスターズの現在位置

文●取材・文=小貫正貴 撮影=福岡諒祠

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 3月22日に発売されたムック本「横浜LOVEWalker 2022」では、横浜ベイスターズ(当時)のリーグ優勝&日本一で熱く燃えた「1998年の横浜」を特集。誌面ではV戦士である齋藤隆、石井琢朗、鈴木尚典の3人のコーチに、1998年当時のことを振り返っていただきましたが、ここでは本誌では触れられなかった、今の横浜DeNAベイスターズについて感じていることを語っていただきました。

――3人は2022年シーズンからコーチとしてチームに復帰されましたが、外から見ていた横浜DeNAベイスターズはどんなチームに映っていましたか?

石井 正直言って手強かったですよ。特にラミレス監督2年目の2017年。2年連続の3位でクライマックスシリーズに進出。ファーストステージで阪神タイガースを下して、続くファイナルステージで、当時僕がコーチとして在籍していた広島東洋カープと対戦。初戦こそ広島が勝ちましたが、以降はDeNAが4連勝で4勝2敗(広島に1勝のアドバンテージ含む)で日本シリーズに進出した。本当に強いチームなのに、なぜ優勝できないんだろうと思っていました。

鈴木 それは僕も感じていました。打者も投手も、すごくいい選手がいて、ここ何年かはいつ優勝してもおかしくないチームだと思っていましたから。

齋藤 僕は海外にいることが多かったので、日本球界の状況についてはわからないことが多かったけれど、2人が言うように、ここ数年の横浜DeNAベイスターズは優勝できる戦力があるという話は聞いていたよね。

――実際に中に入ってみての印象は?

石井 タレントぞろいという印象は変わりません。特に野手は、レギュラーで出ている選手は12球団でもトップクラスです。ただ控えの選手、二番手に来る選手との力の差が開きすぎていた。強いチームは、この差が小さい。隙あらば取って替わろうという選手が、どのポジションにもいるんですね。その差をどう縮めていくのか、そこが課題ですね。

「レギュラーは12球団でもトップクラス。控えとの差をいかに縮めるかが課題」と石井琢朗野手総合コーチ

チームの長年の課題となっている「投手力の整備」

――優勝に届かない理由の一つに「投手力」が挙げられることが多いですが。

齋藤 21年の横浜DeNAベイスターズのチーム防御率が4.15。12球団の唯一の4点台でした。打率・得点はいいけれど、それ以上に失点してしまう。投手チーフコーチとして、投手陣に課題があると言われていることは承知しているし、数字的な部分で見てもそれは明白です。

石井 打線は「水物」ともいわれるだけに、運や状況に左右されやすいんです。勝利の確率を考えると大きなウエイトを占めるのはやはり投手力。それこそ優勝した1998年のチーム打率は.277で642得点。防御率は3.49でした。1999年はチーム打率が.294で711得点とさらに爆発したけれど、防御率が4.44と1点近く悪化して、チームは3位に終わっています。

鈴木 優勝するチームというのは、投打のバランスがいいですよね。じゃあ今のチームがどうかというと、いい選手は投打ともにたくさんいる。その印象は中に入ってみてからも変わりません。

「いいチームは投打のバランスがいい。今のチームにも投打共にいい選手がたくさんいる」と鈴木尚典打撃コーチ

選手と同じ方向を向いて歩くのがコーチの仕事

石井 投手陣もタレントが本当にそろっていると思う。シーズン2ケタ近い実績を持つ投手が何人もいる。ただそれが2年、3年と続かない。ケガや故障で仕方ない部分もあるけれど、そこが整備されてしっかり噛み合えば、普通に優勝争いに絡んでいけるチーム力はある。

齋藤 投手陣の話になったので、少し話をさせてもらうと、僕はどうしたら選手たちが気持ちよくマウンドへ行けるのか、どうしたら自分が持っている最高のパフォーマンスをマウンドで発揮できるのかということに注力したいと考えています。選手たちはプロで通用する能力を持っているから、ドラフトで指名されてプロ野球の世界に入ってきている。もちろん課題は一つずつクリアしていかなければいけませんが、やはりいいところを出し切れるようにサポートしていくことが大事かなと思っています。

――そのためにコーチとして気を付けていることはありますか?

齋藤 これは投手だけの話ではないですが、最下位というシーズンを過ごした選手たちは、どこかでネガティブな気持ちを植え付けられてしまっている。まずはそれを取り除きたい。辛い思いをしている選手がいたら一緒に悩むし、時には鬼になり、時には父親、兄貴となり、彼らを見守り続けながら、共に戦う準備をしていく。コーチというのは上から選手を見下ろす人ではなく、同じ方向を向いて共に歩いていく仕事だと思っています。

「どうしたら選手たちが気持ちよくマウンドへ行けるのか、どうしたら最高のパフォーマンスをマウンドで発揮できるのか」と齋藤 隆投手チーコーチ

3人のコーチが思い描く目標はたった一つ

――鈴木コーチが今の選手に一番伝えたいことはなんですか?

鈴木 打席での心構えとか準備の大切さとかいろいろありますが、一番伝えたいのは「優勝っていいものだよ」ということ。優勝した1998年は首位打者を獲りましたが、それで喜ぶのは僕と自分のファンや身内だけ。でも優勝はみんなで喜びを分かち合える。選手もスタッフも裏方さんも、会社の人たちも。それに加えて何十万というファンの方たち。できればもっと優勝したかったなぁ。

齋藤 確かに僕もそう思います。今の選手に知ってほしいことは、負けて学ぶことはたくさんあるけれど、勝つことでしか知ることができないこともあるということ。それが1998年に僕らが感じたこと。今のDeNAの選手は、悔しい思いはもう十分したと思う。今度は我々が感じた1998年の時のような感覚を味わってほしい。

石井 コロナ禍前の横浜スタジアムの雰囲気って、1998年に似ているんですよ。チャンスの時の地鳴りのような歓声や、ヤスアキ(山﨑康晃)が登場する時のヤスアキジャンプ。選手を後押ししてくれるし、相手チームにとっては本当に脅威になる。僕は相手側で経験しているので間違いないです(笑)。2022年は入場制限なしで開幕できます。まだ声援は難しいかもしれないけれど、解禁された暁にはファンのみなさんには、横浜スタジアムであの雰囲気をもう一度作り出して欲しいです。

3人のコーチが今の選手たちに一番伝えたいこと。それは「優勝っていいものだよ」ということ

鈴木 優勝したいです。いや、それだけじゃなく日本一になりたい。ずっと横浜一筋でチームを守ってきた三浦監督を胴上げしたい。そしてファンのみなさんと一緒に、喜びを分かち合いたい。

石井 前年最下位のチームが優勝なんておこがましいと思われるかもしれないけど、2021年はセ・リーグもパ・リーグも最下位からの優勝でした。どこのチームにもチャンスはある。頂点に立つために、三浦監督を胴上げするために、コーチとしてできる限り力になりたい。

齋藤 僕らの目標は三浦監督の胴上げ。コーチ陣もチームワークを大事に戦っていきましょう!