3月29日、ドコモは東京のドコモ・品川ビルにてプレス向けに「ネットワークオペレーションセンター(NOC)」の見学会を開催。合わせて同社のネットワークオペレーションについてや、災害対策についての取り組みについて説明が行なわれた。
2ヵ所のオペレーションセンターで
全国のネットワークを管理
NOCは、ドコモの通話や通信が基地局の不具合やアクセス数の増加などで、不通や繋がりにくいとった状況にないか、24時間365日監視し対応している拠点。そのオペレーションルームには、大型のモニターが多数並んでおり、全国にある基地局の状況のほか、テレビの報道や気象情報などを常時チェックしている。
モニターでの表示にいちばんスペースを使っていたのが、全国各地の基地局からのアラート。サービス中断などなにか問題があった場合は、赤い表示で通知される。
一見すると赤い表示が多く、不具合が多い印象だが、これは実際に通信ができないような状態ではなく、軽微な状況でも警報がきているため。実際には設備は二重化が施されているなど、なにかしらのトラブルがあってもサービスには影響がないような設計になっている。さらに点検時に計画的に警報を送るケースもあるため、赤い表示で通知されても、その現地はサービス提供が止まっていることはほとんどないとのこと。
ドコモは、この品川にあるNOCと同等の施設を大阪の南港ビルにも設置。通常時は中部地方以東をNOCが担当し、関西以西を大阪の「西日本オペレーションセンター」が管轄している。この2拠点は2016年に完全冗長化を実現しており、災害などで万が一片方のオペレーションセンターが機能しなくなっても、もう片方で全国のネットワークを監視・管理できるようになっている。
また一部のエリアだけを片方のオペレーションセンターで監視する「スポット代行監視」機能も装備。西日本が台風の被害を受けそうなとき、九州の一部は品川から監視し、大阪の負担を軽くするといった、柔軟なオペレーションが可能とのこと。
保守業務の自動化「ゼロタッチオペレーション」を目指す
前述のように、2つのオペレーションセンターで、約110万の基地局アクセス系装置を含む、全国約120万の装置で構成されるドコモのネットワークを遠隔監視している。現状では5Gなど新しいサービスも始っており、オペレーションセンターが担当する保守業務も増加。年間のアラーム件数は約300万件とのことで、1日当たり約8000件以上という計算になる。
このアラートすべてに対して、人的対応をしていては作業効率も悪く、そもそも大人数を待機させていないと対応できない。そこでドコモは、基本的な保守業務を自動化やAIを活用することで、人手を介さない「ゼロタッチオペレーション(ZTO)」を目指している。
ZTOでは、現地装置を除く一連の保全対応が自動でできる。すでにAIを使ったネットワークコントロールなども導入しており、現時点では約8万件以上の業務フローを自動化しているとのこと。
もちろん物理的に基地局のハードウェアが壊れたといった場合は、作業員が現地に行って機器の修理や交換作業をする必要はあるが、アラートの約80%は急激にアクセス数や通信両が増大して通信品質が低下するなどのアクセス系。このアクセス系のアラートに対して、ZTOを導入することで従来よりも最大50%の復旧時間短縮になるという。
また2022年4月下旬からは、このZTOを海外の装置も対象とする国際ZTOもスタート予定。こちらは最大75%の復旧時間短縮が見込めるとしている。
災害時は専用の大ゾーン基地局が起動する
基地局側の災害時の対策として、ドコモは全国106ヵ所に「大ゾーン基地局」を設置している。大ゾーン基地局は通常時は稼働しておらず、周辺地域が停電などでほかの基地局が稼働できない場合のみ使用される基地局。大ゾーン基地局で半径7kmのエリアをカバーできるとのこと。
この大ゾーン基地局は過去に1度だけ、2018年9月の北海道胆振東部地震の際に釧路市中心部で運用。釧路の大ゾーン基地局はNTT釧路ビルに設置されており、半径3kmの範囲で22時間ほど基地局として稼働させている。
さらに「中ゾーン基地局」も全国に2000局以上を展開。中ゾーン基地局は平常時はほかの基地局と同じように運用されているが、非常時にはアンテナの角度を遠隔操作で変更し、エリアを拡大。バッテリーも用意されており、電源喪失時にも24時間以上の運用が可能となっている。
そのほかドローンを使った中継器や、可搬型基地局、移動基地局など災害時に運用するシステムの実機も公開していた。