位置情報ビッグデータが解決する地域課題

アフターコロナ、位置情報、コスト……携帯電話の位置情報データ活用における成功のカギとは

ドコモが語る「位置情報データサービスの現在」

文●森嶋良子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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基地局データとGPSやWiFiデータの位置づけ

 位置情報ビッグデータの観点でいうと、基地局データの活用に加え、最近ではGPSのデータや、ビーコンデータやWiFiデータの活用も進んでいます。今後、各データの精度向上も進んでくると思うので、貴社のサービス面での強みをどう活かすかという議論も出てくると思いますが、その点はどのように捉えられているのでしょうか。

鈴木 GPSに関していえば、ドコモでもスマートフォンのアプリ経由で許諾をいただいたGPSデータを扱っているということはあります。アプリを使っているユーザー数は増加していますが、プライバシー保護のため、AppleやGoogleがOSレベルで連続的なデータの取得を制限したり、アプリの起動中以外のデータ取得を禁止するなどの制限が課せられる傾向にあります。

 アプリ上で常にGPSデータを提供するという設定をしていても、3日に1回くらいAppleからユーザーの位置情報へのアクセス状況を知らせるアラートが発せられるので、どうしても一般ユーザーさんが離脱してしまいます。そのため、データの不連続性が発生し、異なる時間や場所では同一条件で人口を推計することが難しくなります。

 一方で、モバイル空間統計のベースとなる基地局データは、携帯電話の電源が入ってさえいれば取得可能であり、アプリの事情に左右されないので、いつでもどこでも連続性が担保されます。GPSのような心配がありません。基地局データを利用したモバイル空間統計をベースに局所的な細かな動きや人の数は、ビーコン、GPS、Wi-Fiでうまく補完し、組み合わせをしていく、そういう進化をしていくんだろうと思います。

 各データの強みを活かし、複数のデータをうまく組み合わせて使っていくことが目指す姿ということですね。私たちもさまざまなデータを分析する立場として、社会が良くなるためにどういうデータの使い方をしていくことが価値につながるのか常に考えていきたいですね。

 あとは、ドコモさんのモバイル空間統計に関しては、もう少し細かいメッシュ単位でデータを見られればより使いやすくなるのですが……。

鈴木 いま「人口マップ」は、日本全国どこでも500mグリッドでデータをご覧いただけるんですが、近々それが250mグリッドでご覧いただけるようになります。それより細かいデータが必要なときは、GPSやビーコンなど他データと組み合わせていただくことで実現していただくことになると思います。ただ、メッシュを細かくしすぎるとデータの信頼性やプライバシー保護の領域で問題が発生します。一定の範囲内に少数しかいないとなると特定できてしまうということです。

 データ分析する際に、地方部や中山間部ではプライバシー保護の観点でデータが取れないということはよくある課題ですね。

鈴木 例えばひとつの解法としては、地理的な解像度を広くするとか、時間軸を広くするとか、そういった工夫でデータの信頼性を損なうことなく、一般市民のプライバシー侵害にもならないような推計ができます。

 もうそこは本当にいつも難しいところで、プライバシーに配慮してメッシュを広げすぎると人の動きが捉えられない、細かくすると今度はデータが見えないという課題があるので、やはりさまざまなデータを組み合わせるというのが大事になってくるのだと思います。

鈴木 僕もそう思います。あとは、基地局データやGPSデータだとサンプル調査になりにくい一方で、プライバシーの問題を解決できる前提のうえでカメラを使えば、全数調査が可能になり細かなエリアでの調査ができます。そういったものとの組み合わせによっても可能性を広げることができると思います。

基地局データ提供にかかるコスト

 データの提供価格はどのように決まるのでしょうか。

鈴木 僕らの提供価格はとてもわかりやすく設定しています。まず、提供するデータのエリアの数と期間がどれくらいか。日本人のデータなのかインバウンドのデータなのか。あとは分析にも種類があり、種類に応じて単価を決定しています。

 すると、データの数やエリアを選定すれば、多大なコストをかけずとも誰でも使うことは可能になるのでしょうか。今のところ基地局のデータを使った事例は国・自治体で、大きなコストをかけて広いエリアでの分析をするケースや、予算に余裕のある大手事業者での活用が多いと思っています。

鈴木 もちろん可能です。事業を開始した当初から比べると、データあたりの単価もだいぶ下がっていると思いますね。提供する形態もいろいろあり、ビューオンリーなのかデータそのものを納品するのかによって価格が異なりますし、販売パートナーさん経由で1件数万円ぐらいでご提供しているようなサービスもありますので、いろいろな方々にご活用いただけると思います。このような提供価格を決める外部要因としては、やはりデータ保管や計算コストがありますので、そこが下がれば、僕らの提供価格も下げることは可能になります。

 データ量は年々増え続けるので、それによる保管コストの増大は課題ですね。

鈴木 「古いデータを捨てる」という議論ももちろんありはしますが、社会産業の高度化の領域として、交通政策や都市計画に活用していただこうとすると、10年20年という長い時間軸でとらえるのが当たり前の世界ですので、そういったところでもご活用いただけるように、我々はデータの準備をしています。

 古いデータにどれくらいの必要性・ニーズがあるのかというのはいつも議論のポイントですね。交通政策、都市計画のように長いスパンで検討を進める分野では確かに必要性はあると思うので難しい検討課題ですね。

 

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