5Gネットワークの商用サービス開始から3年近く経過し、新規に購入されるスマートフォンのうち、5G対応機種が4Gを上回り始めた。加入者ベースで5Gが最大となるのはもう少し先の話となりそうだが、5G時代に入ったと言えそうだ。
5Gスマホの販売台数が4Gまでのスマホを上回った
2月末のMWCでは6Gも話題となったようだが、市場は4Gから5Gへとメインの世代が移り変わる過渡期にある。
Counterpoint Researchのデータによると2022年1月度、5Gスマートフォンの売り上げが4Gモデルを上回ったそうだ。5G対応機は51%を占めたと報告している。5Gスマートフォンが登場したのは2019年4月のことで、3年足らずでの快挙となる。
ネットワーク側では2018年秋に米Verizonが家庭用のブロードバンドサービス(固定)を5Gで開始。移動通信では同年末に韓国が企業向けにスタートした。コンシューマー向けの商用サービスは2019年4月に米国と韓国でまず開始されている。
これまで新しい世代(G)の普及期は、ネットワークと端末はニワトリとタマゴのようにお互いが様子を見るような構図があった。ネットワークがなければ端末の需要も喚起されず、端末がなければサービスへの需要もない。だが5Gは、その性質から産業用途などを含めて、これまでとは違う広い訴求力を持っている。さらにはコロナ禍でモバイル通信が大活躍し、さらに太く速いネットワークを求める傾向が強まっている。
このように、今回の5Gではネットワークと端末の両方において、需要を模索する動きよりも部品不足の方が課題のように感じる。
EricssonはMWC前のブリーフィングで、2021年末時点の5G契約数を6億6000万と語っている。2027年にはこの数が44億人に達すると予想している。
5Gの起爆剤は今回もやはりiPhoneだった
最初の5Gスマートフォンと言えるのは、2019年の「Galaxy S10 5G」。MWC前に米サンフランシスコで開催したUNPACKEDで発表され、同年4月に発売された。LGはMWC会期中に「V50 ThinQ 5G」を発表、5月に発売している。同時期にOPPOも「Reno5 5G」を公表している。なお、サムスンより早い2018年にモトローラが発表した「Moto Z3」では、拡張モジュールの“mod”(5G moto mods)を利用して5Gに対応するとしていた。
その後もシャオミなど各社が5G対応機種をリリースしているが、やはり普及の決定打はアップルだった。冒頭のCounterpointのグラフでわかるように、5Gスマートフォンの比率が大きく上がったのは2020年10~12月。そう、アップル初の5G機種である「iPhone 12」シリーズが登場した時期だ。
Counterpointによると、5G対応のiPhoneは北米、西欧での5G端末普及に大きく貢献しているという。5Gスマートフォンは北米で73%、西欧で76%にまで達しているとのことだが、アップルはこのうち北米で50%、西欧で30%を占めている。この2市場が5Gスマートフォンの持続的な成長につながっている。iOSユーザーは4年前後の買い替えサイクルを持つ人が多く、買い替えを考えているiOSユーザーに訴求したようだ。
米T-Mobile USAは3月初めの金融イベントで、ポストペイドの加入者のうち40%以上が5Gプランを利用していることを明らかにしている。1年前は10%を下回るレベルだったというから、急激に増加しているのは間違いない。Verizonも2021年末で34%と発表している。やはり前年の9%から増加しており、米国でも2021年は5Gが本格化したようだ。

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