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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第163回

Macの画像編集ソフト「Pixelmator Pro」なら手軽な操作でSNS投稿に差がつく

2022年03月22日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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レタッチした投稿は「いいね」が付きやすい

 筆者の職業はマジシャン。そんな理由から、珍しい場所に行くことが多いです。さらに自撮り写真を資料用に撮影したり、たまにSNSに投稿したりもします。

 顔やスタイルに自信があったり、プロの写真家にお願いできたりすればベストですが、あまりそうもいきません。「それなら、機材の力を借りよう!」と、以前は高性能なカメラを持ち歩いていました。しかし、スマホのカメラ機能が向上して、今はできるだけスマホ撮影で済ませるようになってきました。

 でも、SNSに投稿しようと写真を確認すると、自分の顔が暗かったり、背景に他人の顔が映り込んでいたりと、なかなかベストショットが見つかりません。

 そんなとき、強い武器になるのが画像編集ソフトによるフォトレタッチ。昔は「PhotoShop」を使っていましたが、ここ数年はmacOSに無料で付属している「写真」アプリを愛用中です。ただし、車のナンバープレートや個人情報などにモザイクをかけるなど、すこし複雑な加工は「Pixelmator」(現「Pixelmator Classic」)を使っていました。

 やっぱり、スマホで気軽に撮影した写真でも、画像の明るさや色合いをレタッチして補正して投稿すると「いいね!」が付きやすい気がしています。

セール価格でPixelmator Proを導入

 Pixelmatorが優れているのは、購入すれば、ずっと無料でアップデートしてくれるところ。筆者は購入して、もう10年も無料アップデートのお世話になっていました。仕事用の画像のレタッチにも使っているので、最近は、なんだか申し訳ない気分になっていたところでした。

 そこで、前から気になっていた上位アプリの「Pixelmator Pro」にアップグレードすることを決意! ほんとは、セール中で3600円(通常価格7400円、現在は4900円)だったからなのは秘密です。便利な新機能で楽をしたい気持ちもありましたが……。

 本記事の執筆時点で、最新のバージョンは2.3.5。新機能は、機械学習によって最適な色調と露出に補正してくれる「ML Enhance」、撮影後に解像度を上げられるとうたう「ML 超解像」。さらに自動で背景を消去する「スマート消去」など。ダウンロードしているときからワクワクがとまりません。

iPhotoアプリ内でシームレスに利用できる

 PixelmatorやPixelmator Proのアドバンテージは、アップルが提供している「Core ML」と呼ばれる機械学習のフレームワークを利用していること。macOSに付属している写真アプリ上で利用でき、動作も軽く、上で紹介した新機能も、iPhoneで撮影した画像サイズなら数秒で完了します。

写真アプリの「調整モード」から、丸で囲われた「…」を押すとPixelmator Proが呼び出せる

 つまり、「写真アプリで写真管理や簡単な画像調整、さらに複雑なレタッチはPixelmator Proで……」という連続作業もボタンひとつで切り替えられます。もちろん、レタッチ後に写真アプリのライブラリにそのまま保存も可能。

色合いと明暗を強力に自動補正「ML Enhance」

 屋外や明るい背景で補助照明なしで撮影すると、コントラストが強く、顔が暗くなることがあります。これを補正しようと思うと、ハイライト(明るい部分の補正)とシャドウ(暗い部分の補正)の調整やカラーバランスを整えるなど、意外に時間がかかる作業が必要になります。

 Pixelmator Proの新機能、ML Enhanceを使えば、その作業を数秒で終わらせてくれます。サンプル画像をご覧いただくと、空の色はほぼ変わらずに、陰になったトランプの白さ、顔やジャケットの明るさが自動調整されていることがわかります。

ML Enhanceの効果。空はもちろん、トランプも見やすくなっている

 ただし、海外発のアプリのせいか、ML Enhanceだけだと欧米で好まれそうなドライな色合いになる傾向があります。筆者としてはもう少し温かみがある画像が好み。なので、ML Enhance後にスライダーを再調整しています。

 それでもゼロから手動で調整するより、はるかに時短になる、とても便利な機能です。

昔の画像やロングショットも修正できる「ML 超解像」

 「ロングショットで撮影された写真の一部を使いたい…」、そんなことがよくあります。拡大するとピクセルの粗さが目立つ場合がありますが、「ML 超解像」を使うとマジックのようになめらかな写真に生まれ変わります。まるでスパイ映画。すごいぞ、マシンラーニング(機械学習)!

ロングショットの元画像

左半分がオリジナル画像。右のシャツの襟を見ると、解像度が上がっているように処理してくれているのがハッキリとわかる。顔も美形にしてくれたらいいのに……

背景を自動消去してくれる「スマート消去」

 レタッチで多い作業が、背景の切り抜き。別の背景に合成はしなくとも、背景をぼかしたり明るさを調整したりと、いろいろな用途で必要な作業です。証明書用の写真をプリントする場合も同じですが、とにかく手間と時間がかかります。

 そんな「切り抜き」がほぼ自動でできるのが「スマート消去」です。完璧に抜けるかは背景にもよりますが、手作業と併用すれば、作業効率がアップするのは間違いありません。

時間や手間のかかる人物の切り抜きも……

完璧ではないものの、ほぼ自動で背景を削除してくれる

 Pixelmator Proは、サブスクリプションやアプリ内課金のない、買い切りで使いやすくオススメのアプリです。App Storeの評価も星5つの高評価でした。

 高機能なので、多少の慣れも必要ですが、サイト用の写真を自分で加工したり、ワンランク上の写真をSNSに投稿したりするなら、持っていて損はないアプリでしょう。

 もうひとつ付け加えるなら、Pixelmator Proは「非破壊編集」と呼ばれる、オリジナルファイルを毀損しないアプリです。たとえば、色調整、エフェクト、拡大/縮小の作業をして、保存した後でも加工前に戻せるのも特徴です。

 ただし、インターフェイスは日本語化されていますが、ヘルプが英語なのが難点かもしれません。そのあたりは、今後の改善を期待しています。

 今回の記事では、サンプル画像が筆者の写真ばかりで恐縮しております。失敗の多い筆者としては「マジックも人生も、このアプリみたいに修正できたり、無限のやり直しができたりしたらなあ」と願うばかりなのですが……。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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