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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第50回

【前編】KLKTN代表 岩瀬大輔氏、ヤングマガジン鈴木一司編集長ロングインタビュー

NFTで日本の漫画を売る理由は「マンガファンとデジタル好きは重なっているから」

2022年04月16日 18時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●村山剛史/ASCII

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大きな話題となった新連載マンガ『code:ノストラ』のNFT販売。その舞台裏をキーマンのお二方にじっくり伺った

後編はこちら

NFTで新連載マンガを販売したら初回は12時間で完売
最短1時間で売り切れた回も!

 「デジタルの絵を購入する」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか? ある人はゲームのガチャで推しを引き、ある人は、絵師にお金を払って自分だけのデジタル絵をリクエストする行為が浮かぶだろう。

 イラストを描く手法がアナログからデジタルに移行している現在、私たちの絵を保有する楽しみが、アナログだけでなくデジタルにも及んでいるのは確かなことだと思う。

 そして今、「NFT」という新たな仕組みが登場し、話題となっている。個人が所有する絵を、ブロックチェーンという技術を使い、唯一無二の固有の資産とするのだという。

 今後どのように普及していくのか未知数のNFT販売に、いち早く参入したのは「ヤングマガジン」(講談社)だ。すでに知名度のある老舗マンガ誌にとって、NFTへの新規参入はどのようなメリットがあるのだろうか? また、私たちマンガ読者はNFTにいかなる面白味を見出せばよいのか? 今回はヤングマガジン編集長・鈴木一司氏と、NFT販売のプラットフォーム「KLKTN(コレクション)」代表・岩瀬大輔氏にお話を伺った。

新連載が1時間で完売!? NFT版『code:ノストラ』の衝撃

 「Kollektion」では、ヤングマガジン編集部と連携し、2021年12月27日より新連載マンガ『code:ノストラ』(原作:安童夕馬 / 漫画:明石英之)のNFTの販売を行なって参りました。同NFTは、現在までに日本、アメリカ、スペイン、カナダをはじめとする15ヵ国から購入され、中には個人で最大81ページのNFTを蒐集(購入)したユーザーもみられました。第5話のNFTは1時間で売り切れとなるなど、多くの注目を集めています。

『code:ノストラ』はヤングマガジンで連載中。KLKTNでは単行本1巻分となる第7話までをページ単位で販売した

 NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン技術によって「世界に1つだけ」のコンテンツであることを証明する仕組みを指す。マンガ作品である『code:ノストラ』第1話の場合、5部を1ページごとにNFT形式で販売することによって、「今のところ世界に5枚しかない(公式に認められた)『code:ノストラ』の任意の1ページを保有できる」ことになる。

 詳細はインタビューを読んでいただきたいが、もしNFT販売が隆盛し、さまざまなマンガがNFTでも販売された暁には、「あの人気作品の連載第1回の1ページ目をNFTで保有しているのは世界で自分含めて●人だけ。今や■円相当の大きな価値となっている」といった状況が訪れるかも!?

日本のコンテンツと言えば「マンガ」

―― まずはヤングマガジンの新連載マンガ『code:ノストラ』を、NFTで販売することになった経緯から教えてください。

岩瀬 私たちの会社でもあり、ブランド名でもある「KLKTN(コレクション)」は2021年3月に香港で創業した会社です。デジタルプラットフォーム「Kollektion」を運営していて、アジアのコンテンツをアジアの感性で世界に届けていく、そんなプラットフォームにしたいと思っています。

 最初はK-POPという「音楽」でスタートしたのですが、やはり日本を代表するコンテンツである「マンガ」にトライしたいと思い、我々のほうから講談社さんにご提案しました。

 そして講談社さんのなかで真っ先に興味を持ってくださったのがヤングマガジンの鈴木編集長だったと聞いています。

岩瀬大輔氏。NFT販売プラットフォームKollektionを運営する「KLKTN(コレクション)」代表。元ライフネット生命保険取締役会長

鈴木 僕はNFTのことも何も知らない状態だったんですが、つないでくれた他部署の部長から、「新連載を売り物にした、デジタル販売のNFTをやりたい」と聞かされたのが最初です。

鈴木一司氏。講談社「ヤングマガジン」編集長

―― KLKTNさんが講談社さんに提案したと。では、岩瀬さんがNFTでマンガを扱おうと考えたきっかけは?

岩瀬 NFTが最初に立ち上がったのは、デジタルアートの分野でした。それは2017年にローンチされた「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」という子猫を育てるキャラクターゲームで、繁殖させると別の容姿を持つかわいい猫が生まれる、というアート的なところが支持されたんです。

 その次に立ち上がったのが「NBA Top Shot」というバスケットボールの試合と選手を応援するアメリカ発のプラットフォームです。選手のデジタルカードを買ったり、トレードしたりする。こちらは現在も大人気です。

―― トレーディングカードゲームや野球選手のカードみたいですね。

岩瀬 そうですね。NBA Top Shotはトレーディングカードのデジタル版に近いと思います。NFTという技術を使って、デジタルアートがコレクションできたり、ファン同士で売買ができたりする。そういうところで盛り上がっています。

―― なるほど。最初、NFTの意味がよくわからなかったのですが、マンガに関しては「デジタルな絵をコレクションする」行為と考えるとよさそうですね。

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