パイオニアから新しいコンセプトの製品「NP1」が登場した。端的に言えば、「ドライブレコーダー」と「カーナビ」、そして「スマートスピーカー」をひとつにした製品だ。特徴は「音声」で操作とカーナビの道案内を実施するところにある。
本体サイズは118×36×93mmという、やや大きめのドライブレコーダーといったところ。これに、約200万画素のカメラを前後1つずつの合計2個、そしてスピーカーとマイク、LTE/Wi-Fi/Bluetoothの通信機能、GPS、6軸モーションセンサー、microSDカードを搭載。電源はシガーライター電源、もしくは別売ケーブルを使って車載バッテリーに接続させる。
主な機能は4種類ある。1つ目が、音声だけで操作・案内を実施する「スマート音声ナビ」機能。2つ目が、前方用と後方用の2カメラのドライブレコーダー。しかも、衝撃感知地やユーザーの操作時にはクラウドにも保存可能できる「クラウドドライブレコーダー」機能も備えている。3つ目が、搭載した通信機能を使った「クルマWi-Fi」機能。別途サービスの「docomo in Car Connect」を利用することで、最大5つまでの端末をLTEデータ通信によって定額で使い放題となる。なお、対応バンドは1、3、19で、Wi-Fiは2.4GHzのみ。料金プランは、1日、30日、365日が用意されている。
そして最後の機能が「もっとカーライフ++(プラスプラス)」だ。これは通信機能を使った様々なサービスの総称で、アップデートを通じて、新機能が続々と追加される予定とのこと。リリース時には、本機とクルマの外の人のスマートフォンアプリと通じて、コミュニケーションをとる「ドライブコール」機能や、走行状況にあわせた情報を、アクティブに提供する「ドライブトピック」機能を用意。グルメ情報を扱う「レッティ」や、駐車場の「タイムス」「三井のリパーク」などのパートナー企業の情報も利用可能だ。さらに、この春には、音声アシスタントの「Amazon Alexa」の追加も予定されているという。
価格は、本体+1年間の通信サービス料金込みのベーシックプランで6万5780円(税込)。本体+3年間の通信サービス料金込みのバリュープランで9万3500円となる。契約期間終了後の更新は1年分で1万5840円となる。パイオニア公式オンラインショップでは、出張取り付けのサービスも、1万3750~2万4200円で実施されている。発売は3月2日。全国のカー用品店でも販売される予定だ。
従来のカーナビとは異なる
クルマ目線での案内
今回の「NP1」の発表にあわせ、メディア向けの試乗会に参加することができた。そこで感じたことを紹介しよう。
車内側から見た「NP1」は、やや大きめのドライブレコーダーのようにしか思えない。ボディーの前後にカメラ、室内側にマイク、横型に物理スイッチがある。
最初に、スマートスピーカーのように「NP1」と声をかけると起動する。起動やドライブレコーダーの随時撮影などの音声操作はエッジ側(つまり本機自体)が行なうという。起動した状態で「~~~まで、行きたい」と声をかけると、通信機能を使ってクラウド上でルートを計算する。このとき高速道路を使いたいのか、下道なのか、途中の立ち寄りポイントを追加したいときは、その旨を声で言うとルートを再計算してくれる。
ちなみに、音声だけなのでどんなルートなのかは確認できない。そこで不安になったときは、スマートフォン用アプリ「My NP1」を使えばよい。アプリに地図などが表示されるため、スマートフォンのカーナビアプリのように使うこともできる。慣れないうちは、アプリを併用するといいだろう。
走り出して、ちょっと驚いたのが案内の仕方。これまでのカーナビやナビアプリでは、「~~メートル先、~~交差点を左折」などと案内していた。しかし、「NP1」は「2つ先の信号を左です」とか、「右端の車線を進んでください」というように、クルマの中からの目線で案内をする。目的地までの時間や距離も尋ねれば答えるし、道が間違っているかどうかも答えてくれる。やや、案内が細かいような気もしたが、これであれば音声の案内だけで十分に走ることができそうだ。これを確認できただけも、試乗した価値は十分にあるだろう。
この製品の良さは、カーナビ用のモニターが必要ないところにある。モニターを装備できない車種のオーナーには朗報だ。ドライブレコーダー一体型というのもスマート。カーナビとドライブレコーダーの2つを購入することを考えれば、「NP1」なら、これひとつで済むためイニシャルコストは安い。また、通信機能が備わっているため、マップは常に最新だし、新サービスも定期的に追加されるのも魅力だ。一方デメリットは、一度購入すると使っている間は常に費用がかかり続けるというところにある。メリットもあるけれど、デメリットもあるということだ。
ちなみにパイオニアとしては、日本だけでなく世界展開も視野に入れている。また、オートバイ用も開発中だという。ターゲットにするのは、世界15億台のクルマと7億台のオートバイ。2025年には300億円、2030年には1000億円のビジネスへの成長を狙っているというから夢は大きい。どれだけの成功を納めることができるのかは未知数だが、カーナビの世界に一石を投じる、画期的な製品であることは間違いないだろう。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。