アップルは、米国の主要な医療および学術研究機関との連携を通じて、人の心拍および身体機能の兆候を把握しながら、健康増進や生活品質を高めるための総合的な研究をしています。
心疾患のリスクが高まり、持病の悪化を引き起こしやすくなると言われる2月を、米国では毎年「Heart Month:心臓月間」として位置付けて、心臓に関わる知識や学びを啓発しています。アップルは2月の始まりに合わせて、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院とアメリカ心臓協会との3者連携による新たな研究の成果を発表しました。近い将来に、アップルデバイスの新しい機能やサービスにもその成果が反映されるかもしれません。
Apple WatchやiPhoneが「一般の人」の健康習慣を浮き彫りに
このほど3者は「Apple Heart and Movement Study」と題する研究の中で、「有酸素運動と心肺機能レベルの関係性」を検討してきました。米国の循環器専門医であり、ハーバード大学医学部教授を務める主任研究者のケーラム・マックレイ博士は「従来、同様の研究はスポーツ選手や病気を患う患者の皆様を対象としてきた。今回はアップルのデバイスを活用することにより、もっと広く一般の皆様が日常生活を過ごしながら積み重ねた健康データを提供していただいた。これは学究的にも大変貴重な機会である」と研究の意義についてコメントしています。
3者による研究は2021年の1年間に渡って実施され、期間中に約1800万件のワークアウトデータが新規に集められました。参加者はApple WatchやiPhoneを日常生活の中で普通に使いながら、有酸素運動と心肺機能に関するデータを継続的に研究チームと共有してきました。
マックレイ博士は「特殊なスポーツやトレーニングではなく、一般に最も広く実践されているウォーキング、サイクリング、ランニングといったポピュラーなワークアウトによる実践情報が記録できた」ことが、とても有意義なのだと述べています。
今回の研究から、例えば「65歳以上の参加者は、アップルが推奨する週間150分以上(1日約21分以上)のアクティビティをより熱心に実施していた」ことなどがわかったそうです。ほかにも「心肺機能レベルが平均値より高い人々は、1週間に200分以上の運動をしている」ことや、アップルの「ヘルスケア」アプリで心肺機能レベルが「高い」と判定された人々にいたっては「週300分以上」にも及ぶトレーニングを熱心に実行していることも明らかになったそうです。
ちなみにApple Watchのユーザーは、iPhoneのヘルスケアアプリを開き、ヘルスケアデータに並ぶ「心肺機能」から自身の「最大酸素摂取量(VO2 Max)」のレベルが確認できます。スコアとレベルの評価方法についてはページに詳しい解説があります。
マックレイ博士は、Apple Watchが日常的に負担なく身に着けられるヘルスケアデバイスであることから、長期に渡る研究にもかかわらず、多くの参加者から積極的な協力が得られたと振り返っています。その成果が、本研究のメインテーマである「有酸素運動と心肺機能レベルの関係性」を明らかにし、さらに深く細かいヘルスケアのメカニズムを分析できるところにまで到達したそうです。
また研究の過程では、必要に応じて参加者に「なぜそのワークアウトを実践しているのか」をヒアリングしながら、「結果」の元となる「理由」を確認できたことも良質なデータの獲得につながったといいます。
研究に欠かせないサンプルの多様性と密度が高まり、基礎的な運動と心肺機能の関係性が明らかになったことで、これから3者が共同で行う研究のベースラインにも厚みが増すことになりそうです。マックレイ博士は「今回の研究に参加できたことが、私自身の大きな収穫になった」と述べています。