ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第650回
Alder Lake-HはIntel Arcと連動させてエンコードを高速化できる インテル CPUロードマップ
2022年01月17日 12時00分更新
今回は引き続きCES 2022におけるインテルの発表内容の説明である。前回はデスクトップ向けモデルを取り上げたので、今回はモバイル向けだ。
HシリーズとUシリーズの中間に
新たに追加されたPシリーズ
Alder Lakeの世代から従来のH/Uシリーズに加えてPシリーズが追加されたというのは既報のとおり。従来だとHシリーズがTDP 35Wで、Configurable TDPを使って45Wまで対応という形だったのが、今回からHシリーズはすべてTDP 45Wに統一されている。
もっともこれ、表現としては微妙な感じである。例えば第11世代のCore i9-11900Hの場合、Configurable TDP-downが35W、Configurable TDP-upが45Wという表記なのが、第12世代のCore i9-12900Hの場合はProcessor Base Powerが45W、Minimum Assured Powerが35Wという具合に表記が変わっている。
要するに、ノートPCメーカー側で35Wと45Wの好きな方の構成でシステムが組めるという点では差はないのだが、表記が変わった形である。その意味では実質的には差がないことになる。
したがってHシリーズはもう完全にゲーミングノート向けである。Max Turbo時に100W超えは、さすがに薄型&スリムタイプには適さない。ただそうは言ってもいきなりそこでUシリーズはやや性能的に不足、という用途向けに新たに追加されたと思われるのがPシリーズである。
こちらはBase Powerが28W、Max Turbo時でも64WとHシリーズよりはだいぶ穏当な数字に抑えられている。コア数も最大14(P-Core×6+E-Core×8)だし、P-CoreはBase 1.8~2.2GHz、Turbo 4.4~4.7GHzと比較的高め。GPUも48~96EU構成となっており、Hシリーズほどではないにせよ性能は高めと想像される。
Core i9をラインナップしていないのは、どうしても性能面で差をつけようとすると動作周波数を上げなければならず、そうなるとBase 28W/Turbo 65Wで収まりきらないためと思われる。
また、このPシリーズやその下のUシリーズでは型番が4桁になっているのも興味深いところ。Hシリーズは引き続き5桁になっているあたり、なぜこんな形になったのかを(前回も触れた)Colin Helms氏に聞けば良かったと悔やんだが後の祭りである。なにかのおりにインテルに尋ねる機会があったら確認してみたいと思う。
Uシリーズはその下に位置する格好だ。TDP 15W(Max Turbo 55W)のものは型番の末尾が5、TDP 9W(Max Turbo 29W)のものは末尾が0になるというのはすでに掲載されているレポートのとおりである。
不思議なのは先のPシリーズやこのUシリーズ、いまだにIntel Arkに登録されていないことである。もちろん検索しても現時点では出てこないのはどういう理由なのだろうか。
あと下の画像を見る限り、HシリーズからUシリーズの15Wまでは共通のPCHを搭載しているようだが、Uシリーズの9WモデルのみPCHが異なるようだ。
このクラスではPCHにそれほど多くのI/Fが入ることもないので、パッケージの小型化や省電力化を狙って異なるPCHを搭載しているものと思われる。
下の画像はHシリーズのブロック図だが、赤枠で囲んだ部分がOCHから出るI/Fとなる。
このうち左側に位置するWi-FiやGbE LAN、SPI/eSPI(これはBIOSを格納するフラッシュメモリーなどの接続用)は省きようがないが、9Wのサブノートクラスに14ものUSBポートはおそらく不要だし、PCIe接続も内部のデバイス接続用を考えても12は要らない。もっと要らないのはSATAだ。こういったものを減らしたモデルと思われる。
性能に関しての説明はすでにいくつか掲載されているので今回は割愛する。比較対象にTiger LakeやRyzen 9 5900HXだけでなくAppleのM1 Pro/M1 Maxまで含んでいるあたりが興味深いが、さすがにAMDのRyzen 6000 Mobileシリーズは入っていない。Alder Lake-Hの競合の本命はRyzen 6000 Mobileになると思われるが、これはいずれベンチマーク結果などが出るまでのお楽しみといったところだろう。
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