ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第648回
VIA C3を開発したCentaurをインテルが買収、もとはMIPSだったArchiTekのRISC-Vコア
2022年01月03日 12時00分更新
もとはMIPSだったArchiTekのRISC-Vコア
連載639回でArchiTekのAiOnIcプロセッサーを紹介したが、このチップの中でHigh Performance AIに利用されているRISC-Vコアの詳細は原稿執筆時点では不明であった。
ところが今年11月に横浜で行われたRISC-V Days Tokyo 2021 AutumnでArchiTekも講演しており、ここでRISC-Vコアの詳細が明らかにされたので補足しておきたい。まずコアそのものであるが、ベースとなったのはMIPS32コアで、これをRISC-Vに作り替えたもの、というなかなかおもしろいものだった。

東京農工大 中條研究室の中條拓伯准教授は国内大学機関でRISC-Vを牽引する1人でもあり、最近ではヘネパタ本の第6版(RISC-Vバージョン)の訳者のお一人でもある。それにしても「MIPS(改)」というのはなんだったのか気になるところだ
実はMIPS自体が現在RISC-Vへの対応を進めており、次世代MIPSコアはMIPSとRISC-Vの両対応になることが昨年11月に発表されている。よって、既存のMIPSコアがなにかしらあるのであれば、これをRISC-V対応にするのは容易だったと思われる。
ただSMTの目的はメモリーアクセスのレイテンシー遮蔽ではなく、High Performance AIエンジンからの多重リクエストに対して迅速に対応するため、というのは少し意外であった。内部構成はアウト・オブ・オーダーではあるが、同時2命令発行と比較的小規模なもので、また命令セットはFPUなどを一切含まないRV32I+独自命令という構成であった。
確かにここまで割り切れば、12nmプロセスでエリアサイズ0.1mm2というのも納得である。パイプラインは7段であるが、アウト・オブ・オーダーを実装しているにしてはシンプルな構成である。
またVector Unitも搭載されておらず、その意味ではデータ処理「以外」を受け持つことが明白な構成である。

こうした組み込みであれば64bitアドレスも不要ということで、RV32Iとなっている。RV32Iは純粋に32bitの整数演算命令の基本「だけ」である。したがってALUもかなりシンプルに実装できたと思われる
連載639回では「これはSMTに対応したRISC-Vコア(おそらくこちらもRV32系だろう)にVector Extensionを付けたコアが実装されており、このVector Extensionをブン廻すことで対応する形だ」と書いたが、RV32はともかくVector Extensionを使うような作業はRISC-Vコアにはさせない、という形の割り切りになっていることが明らかである。
ちなみに試作のbeppuチップが下の画像だ。beppuで動き解析を行なうと0.5Wで5.72fpsを実現できるが、同じことをNVIDIAのJetson Nanoを使うと2Wでしかも1.53fpsしか性能が出ない、としている。
ただbeppuはあくまでも試作で、量産チップのchichibuは2022年末に登場という話であった。

この連載の記事
-
第811回
PC
Panther Lakeを2025年後半、Nova Lakeを2026年に投入 インテル CPUロードマップ -
第810回
PC
2nmプロセスのN2がTSMCで今年量産開始 IEDM 2024レポート -
第809回
PC
銅配線をルテニウム配線に変えると抵抗を25%削減できる IEDM 2024レポート -
第808回
PC
酸化ハフニウム(HfO2)でフィンをカバーすると性能が改善、TMD半導体の実現に近づく IEDM 2024レポート -
第807回
PC
Core Ultra 200H/U/Sをあえて組み込み向けに投入するのはあの強敵に対抗するため インテル CPUロードマップ -
第806回
PC
トランジスタ最先端! RibbonFETに最適なゲート長とフィン厚が判明 IEDM 2024レポート -
第805回
PC
1万5000以上のチップレットを数分で構築する新技法SLTは従来比で100倍以上早い! IEDM 2024レポート -
第804回
PC
AI向けシステムの課題は電力とメモリーの膨大な消費量 IEDM 2024レポート -
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ