「ESG経営」は儲かるのか? 因果分析で紐解く。

文●石井英男、ASCII編集部

提供: 電通国際情報サービス

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ISIDとしてESGソリューションの事業化をしたい

── ISIDでは今回検証したようなサービス事業化の可能性についてどのように考えていますか?

中島:いまは2つの可能性を考えています。

 1つは事業会社向け。「ESG経営に取り組んでいかなきゃいけない」という目線は多くの企業が共通認識として持っているんですけれども、実際にコストをかけて積極的に取り組みを始めている、という事業会社は決して多いとは言えません。サステナブル・ラボさんとのコラボレーションは、ESGに取り組んだ結果が経営にどのようなインパクトをもたらすのかという言語化を通じて企業活動の意思決定を促すことができる点ではまだ様子を見ている事業会社に対し取り組むきっかけをつくる意味で広がりがあるかなと思っています。

 もう1つは金融機関向け。まずはESG投資を行なう機関投資家向けに対して、投資先とのコミュニケーションを促進するツールのひとつとして活用いただくことを想定しています。あわせて先に述べたような事業会社が単独でESGの取り組みを検討・対応できないケースがこれからますます増えてくるはずです。昨今、銀行などが取引先のデジタル化を支援するサービスをはじめていますが、ESGに対しても同様の動きがみられます。事業会社とつながりの深い金融機関だからこそ事業会社のESG経営を後押しすることができるはずです。

 なんとなくESGと金融を重ねて話をすると上場企業を中心とした話に聞こえるかもしれませんが、先ほどの話題に上がっているサプライチェーンの話も含めると、中堅・中小企業も関わってきますし、地域という側面も色濃く出てきます。少し長い目で見た話ではありますが、今回の因果分析サービスなどがきっかけでESG経営に取り組むことが自社の成長に繋がる実感が広がれば「取り組まなければならない」から「取り組みたい」となっていくはずです。

 因果分析というアプローチはESG経営のドライバーである一方、これだけではまだまだ足りないと考えています。企業活動への展開に加えてKPI設定やモニタリングのための非財務情報の収集や情報管理・開示など多くの業務が煩雑なままです。こうした業務全体を効率化できるESGソリューションを当社として提供していく予定です。

── イメージとしては、企業がESG的にどうしていったらいいかということをコンサルティングサービスで提供するようなイメージですか

中島:まず当社は様々な業界や業務領域に対してコンサルティングサービスからシステム構築・運用まで幅広いソリューションを提供しています。私が所属している事業部門は主に金融機関向けのソリューションを展開していますが、製造業向けにソリューションを展開している事業部門もあります。その中でイノラボはテクノロジーを軸にクロスして新しい価値を生み出す取り組みをしています。ESGを取り巻く環境は特にいま変化が激しいので、業界やお客様ごとに取り組みのステージや課題も多様です。そこに応じられるようワンストップで提供可能な事業にしていく予定です。サステナブル・ラボさんとの取り組みはファーストステップととらえています。

森田:ISIDは事業会社向けの財務会計ソリューションを提供している部門があり、財務データだけではなく非財務データも集めて、データの開示につなげるためのシステムを販売しています。今後は、そういった事業部のお客さんのニーズもくみ取りながら、うまく連携していきたいです。

平瀬:最終的にはERPベンダーやソリューションベンダーのような仕組みに、コンサルティング機能がくっつくという話になると思いますね。出口として、ひとつは金融機関の投資判断の高度化、また事業会社による非財務開示の省力化、高度化や経営判断の高度化。その辺りの領域になるということだと思います。

── 将来有望な分野というか、成長が見込める感じですね。

平瀬:そうですね。「ESG投資が増えるのではなく、すべての投資がESG化する」というのが我々の理解です。だとすると、その市場、ニーズはものすごく膨大であるということになりますね。

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