「ESG経営」は儲かるのか? 因果分析で紐解く。

文●石井英男、ASCII編集部

提供: 電通国際情報サービス

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「もしESGに取り組んだら」のシミュレーションも可能に?

ーー CALCの機能に「介入シミュレーション」というものがあります。

磯崎:2016年頃から2018年くらいまで、CALCは因果関係を推定するツールとして提供していました。しかし、そこで因果関係がわかった後には、何か施策を打って結果を改善させたくなりますよね。その検討を可能にするのが介入シミュレーションです。同じ過去のデータから統計的に推測して、もしこのパラメーターがこれくらい変われば結果はこうなるというのを定量的に出す機能です。

 よく機械学習と混同されるんですが、機械学習ではそういったことはできないんです。機械学習はパターン的に認識しているので、因果関係の影響までは認識していないんですね。介入シミュレーションでは、「見かけ上は相関が強いけど因果的な効果は弱い」とか、「見かけ上は相関が弱いけど実は因果的な影響はけっこうある」とか、そういったところまで計算できるのが強みです。

── 介入シミュレーションはいつ頃追加されたんですか?

磯崎:2019年ですね。

── ではもう実際にいろんな企業が使われているんですね。

磯崎:はい、使われています。同時にソニーグループでも活発に使っています。マーケティングや製造など様々なところで。もしここを改善したら不具合がどれくらい減るかとか、もしマーケティングである施策を打ったらお客さんがどれくらい継続してサービスや商品を使ってくれるかといったことをシミュレーションしています。

森田:ESGの非財務データによって企業パフォーマンスや株価が予測できれば、投資家からすれば、「因果性が解明されていなくても、株価が上がるという予測が出たから買っておこう」という話になります。でも、事業会社からすると、「データはそう言っているけど、私たちはどうすればいいんだ」という話になるんです。ですので、因果性というのは効果的な施策を打ちたい、事業会社向けのソリューションになります。投資家と事業会社は表と裏の関係なのですが、その2つがセットになることで、サステナブル・ラボさんのソリューションを、より広範囲に提供できる可能性があります。

平瀬:今後、長期投資を得るための対外的な説明力はますます求められるようになっていきます。たとえば、石炭火力発電が主軸の企業が再生可能エネルギーに事業転換するとします。そうすると、短期的な利益を追求する投資家は「今儲かっているのに、なぜ(石炭火力発電を)やめるの?」と思うわけです。議決権行使が増えていくとされるなか、こうした投資家や株主からの問いによって、企業側の経営判断や説明力がシビアになっていくことも増えると予想されます。そのとき企業側は「非財務データの解析(およびシミュレーション)により、将来的な成長を見据えて経営判断をしているんだ」と対話、エンゲージをしていく必要があります。そんなことが当たり前の社会が数年後に訪れるのではないかと思っています。ESGの世界は長期的視野が必要になるので、データ分析・因果分析は必須です。

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