スイート製品提供、イベント配信や「Slido」統合、音声翻訳/字幕/議事録など次々に発表
「Cisco Webex」多数の新機能追加、ハイブリッドな職場環境を支援
2021年11月18日 07時00分更新
シスコシステムズは2021年11月15日、コラボレーションクラウドサービス「Webex」に新機能群を追加すると発表した。アフターコロナの働き方が模索される中、社員がオフィスや自宅のどこにいても変わらず、インクルーシブな社内外コミュニケーションができるよう支援する。
シスコシステムズ 執行役員の菊池政広氏は、今回の機能追加の背景について「誰もが分け隔てなく受け入れられ、認められることを実感できる状態をデジタル技術で実現する、そんなインクルーシブな未来を創るため」だと説明。そのうえで、働く場所に依存せず成果を出せる「ハイブリッドワーク」環境、場所を問わず業務上の電話を受けられるクラウドベースのPBXで叶える「変化に即応できるコミュニケーションプラットフォーム」、シンプルな顧客対応から一歩踏み込んだ「カスタマーエクスペリエンス」の実現を重点戦略に掲げると述べた。
「対面よりも10倍リッチなコラボ体験」など3点を推進
ハイブリッドワークは「オフィス出社とリモートワークを、個人が自分の都合に合わせて選択できる働き方」を意味する。そして、この柔軟性の高い働き方をサポートするのがWebexだ。シスコシステムズ コラボレーション・アーキテクチャ事業部長の大野秀記氏は、同社ではすでに「Webex Calling」を活用したクラウドベースのPBXシステム導入事例(あおぞら銀行)、「Cisco Webex Desk Pro」によるオンライン配信、「Cisco Webex Room Kit」を使ったハイブリッド授業(千葉工業大学)など、ハイブリッド環境の構築事例も多数持つと紹介する。
こうした働き方のハイブリッド化をさらに加速させるために、シスコでは「対面よりも10倍リッチなコラボレーション体験の提供」「ハイブリッド化が遅れている業務・業種の支援」「パートナーリングの拡大」の3点から推進していくという。
1つめの「対面よりも10倍リッチなコラボレーション体験の提供」は、Webex Calling、Webex Messaging、Webex Meeting、Webex Polling、Webex Eventsの5つのライセンスをバンドルした新パッケージ「Webex Suite」でサポートする。それぞれ購入するよりも低価格でWebexの主要ソリューションが利用できるパッケージで、すべて1つのダッシュボード(Webex Control Hub)で統合管理できるのもメリットだ。
このパッケージでは、双方向の対話を促してエンゲージメントを高める「Slido」、テレビのように見せたいレイアウトで画面をカスタマイズできる配信機能、日本語を含む108か国語でのリアルタイム翻訳や字幕機能など、最新機能がライセンス購入で利用できる。購入は1人分から可能で、無料トライアルも用意する。
たとえば字幕機能では、話者の言語と字幕の言語を選択して「CC」ボタンを押せば、リアルタイムに字幕が表示される。字幕の表示位置は画面上で移動できるほか、サイズの拡大/縮小も可能。また、会議を録画すれば、会議中はこれまでの字幕履歴が別パネルで表示されて見返すことができるほか、終了後は文字起こしデータがファイルとしてダウンロードでき、議事録の自動作成機能にも対応する。なお現時点で、日本語ではリアルタイム翻訳が対応しているが、追って年内に文字起こし機能、議事録作成機能も提供予定だという。
また、オフィスの会議室とWeb会議の隔たりをなくすため、会議室全体を映すのではなく参加者ひとりひとりを認識して1人1フレームに映し出す「People Focus」(2021年12月より順次展開予定)、Webex端末からMS TeamsやGoogle Meet、Zoomなど複数のWeb会議サービスに接続できる機能(対応端末の最新版は11月18日開催のWebexOne 2021で発表、2021年12月より順次展開予定)、オンライン会議での発言の割合や参加数などを個人向けに可視化してライフワークバランスを支援する「Personal Insights」(近日追加予定)などが利用可能だ。
近日追加予定の機能には、Webex Eventsと買収完了したイベント技術基盤「Socio」の連携が挙げられた。両ソリューションが連携することで、最大10万人規模のハイブリッドイベントを運営/配信することも可能になるという。
「参加登録ページ、コンテンツ配信、アンケートおよび集計機能など、イベント規模が大きいほどに準備が煩雑になりがちなものをシンプルなUIで設定できるのが特長。イベント配信の経験がなくても、比較的簡単に開催準備を進めることができる」(大野氏)
ハイブリッド化を推進する各種ソリューションを用意
このほか、ハイブリッド化が遅れている業務や業種への支援については、すでに販売提供中のソリューションで対応可能だ。
たとえば今年7月に発表した、LINE WORKSとWebexの連携を活用することで、LINEのチャット履歴を残せるほか、ビデオ通話や資料共有など、LINEにはないWebexの機能をボタン1つでLINE WORKS側から利用することができる。
「将来的にはオンライン商談時のチャットや会話などをすべてデータベースに蓄積し、たとえばトップセールスはどういうタイミングで顧客とコンタクトをとっているのか、どのような台詞で心を動かしたのかといった知見を分析。より最適な営業方法を共有できるところまで機能を充実させたい」(大野氏)
ハイブリッド化ができていない業種については、自走やリモート操作に対応する「Ava」、スマートグラスの「RealWear」、AR/3D映像など、サードパーティの端末とWebexとを組み合わせた「Smart Fieldwork」現場作業支援ソリューションを提供。現地の状況をエキスパートが現場担当者の目を通じてリアルタイムに共有し、円滑かつ効率的なコミュニケーションを実現する。
また、WebexとのAPI連携でセキュアなコミュニケーション環境を構築する「Webex Instant Connect」も提供。オンライン診療や保険相談、入学説明会など、幅広い場面でより豊かなコミュニケーションをサポートする。
最後は、パートナーリングの拡大だ。前述の取り組みを推進する上で、パートナーとの連携は重要と大野氏は述べ、パートナーや開発者、ユーザー、シスコのWebexエコシステムを強化する取り組み、たとえばミートアップイベントや交流会などを展開していきたいと説明。「近日中に案内予定なので、ぜひ期待していただきたい」(大野氏)。