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コロナ禍は人々の投資に対する意識に、どんな影響を与えた?

2021年09月30日 17時00分更新

文● ASCII

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コロナ禍は人々の「投資」に対する意識をどう変えた?

 日本証券業協会は、9月21日に、人気動画クリエイターであるはじめしゃちょー氏と瀬戸 弘司氏をメインパーソナリティーとしたYouTubeチャンネル「投資はじわかチャンネル」を開設。

 同協会は、協会員である証券会社や銀行、保険会社などの金融機関が遵守すべき自主規制ルールの制定や、その遵守状況の監査といった自主規制業務に加えて、金融商品取引業、金融商品市場の発展を推進する業務や、国際業務・国際交流、金融・証券知識の普及・啓発活動など、幅広い業務を行なっている。

 

 今回のYouTubeチャンネル開設は、証券投資に興味を持っていない人、投資未経験の人、特に若年層である20代から40代の方々に投資のきっかけを与えることを目的としたものだという。

 合わせて、同協会では「コロナ以降の新しい証券投資意識に関する調査(※)」を実施し、その結果を公開している。コロナ禍は、人々の投資に対する意識にどのような影響を与えたのか? その調査結果を紹介しよう。

※調査対象者:1.2020年以降に証券投資を開始した20〜39歳、2.2007年以前に証券投資を開始した30〜69歳、3.証券投資に興味関心を持つ20〜39歳、4.証券投資に興味関心のない20〜39歳
上記1〜4でそれぞれ250人、合計1000人
調査方法:インターネット調査
調査時期:2021年7月27日〜29日

コロナ禍の不安、投資のきっかけに

 まずは2020年以降に投資をはじめた人を対象とした自由回答の項目で、「証券投資を始めてみて抱いた実感や、お金や証券投資について考えが変わったこと」というテーマの設問。結果は、以下のような意見が寄せられたという。

普段の生活で起きる支出について考えるようになった。(男性29才/新潟県/技術系会社員)

コロナの影響で将来に対し不安を感じるようになり、お金のことや投資に関しての本を読みはじめ、投資に興味をもち、証券投資をはじめました。(男性38才/大阪府/その他会社員)

これまで貯蓄メインで資産形成しようと考えていたが、家族が増えたこと、持ち家を手に入れたことで将来に対して考えることが増え、投資の勉強を始めたことがきっかけ。単に貯めるのみでなく、お金を働かせるという考え方に興味を持った。(男性32才/新潟県/技術系会社員)

投資は博打という印象があったが、長期にわたった証券投資は勉強すれば、ある程度まで稼ぐことができることを知ったため、始めた。(女性26才/茨城県/事務系会社員)

初めは優待に興味があったことや旦那に勧められたことで始めたが、実際に始めると企業について調べたり、普段聞き流していた株についてのニュースを見るようになるなど興味が深まった。(女性29才/広島県/公務員)

手軽に始められることに驚いた(女性33才/広島県/公務員)

動かさないお金があるなら、銀行に預けたままにするより勉強も兼ねて資産運用をしてみようと思った事がきっかけ。長期スパンなので多少損をしたとしても社会勉強かと思うし、預金を分散する事もリスク分散になるかと思うので。(女性36才/徳島県/その他会社員)

 以下は、同じく「証券投資を始めてみて抱いた実感や、お金や証券投資について考えが変わったこと」をテーマとしているが、2007年以前に投資を始めた人を対象としている。

経済に強くなり、配当金や株主優待で生活に潤いが出来たので、気持ちにゆとりが出来た。もう少し早くすれば良いと思った。(男性50才/広島県/事務系会社員)

景気や株価の上下には関心がなくなった。淡々と積み立てを続けようと思っている。(男性52才/神奈川県/その他)

食料品は1円単位でこだわるのに、株購入は万単位でもなんとも思わなくなった(男性58才/静岡県/公務員)

株安だと思って買った株は、元本割れしても慌てないこと。じっと待てば利益が出る。証券投資は株主優待目当てで始めたが、結果として元本割れや優待の廃止で苦い思いをした。今は、リターンを求めて企業の将来性も考え、短期、中期、長期の投資を行っている。(男性67才/鹿児島県/無職)

証券投資を始めたのは、銀行の預金に対して、金利が少なくなってきたこと。自分で貯金をしていたお金を株式投資したら、面白いかもしれないと感じたから。その当時は、まだ証券会社に電話で売買を伝えていて、動きもゆっくりで、新聞の株価欄を見るのが楽しみだった程度です。(女性68才/東京都/専業主婦)

いつも使っている化粧品の優待目当てで始めたが、余剰資金があったこともあり他の業種の株式も買い始めた。新聞の経済欄をよく読むようになったし、勉強になることも多い。長期運用でかんがえないといけないと思う。(女性52才/大阪府/公務員)

 この回答を見る限りでは、投資を始めた人は、2020年以降、2007年以前に限らず、おおむねポジティブな印象を抱いているらしいことがわかる。だが、2020年以降の回答では、コロナの影響から将来に不安を感じ、投資を始めたという回答も見られる。

 もう少し具体的に見てみよう。以下は、投資の目標を何に設定しているかという、アンケート調査だ。

投資を開始した年代によっても、目的の傾向が異なる

 この結果を見ると、2020年以降に投資を開始した層は、「今後の人生に余裕を持つため」「老後に備えて」「生活を安定させるため」がトップ3となっているのに対し、2007年以前に投資を開始した層は、僅差で「老後に備えて」が最も高くなっている。

 また、2007年以前に投資を開始した層は、他の層に比べ「生活を安定させるため」や「漠然とした不安感から」といったスコアは低い。これは世代間の収入の格差も影響している可能性があるが、いずれにしても、最近になって投資を開始をした人とは、モチベーションの傾向がやや異なっていると言えるだろう。

 証券に興味を持っている層の結果も見てみると、「趣味や自分の自由になる資金を作るため」「漠然とした不安感から」が興味を持つ理由として高い数値になっている。明確な目標はないものの、老後や直近の未来に抱く漠然とした不安の解消、いまを楽しむための資金の調達としての投資に興味があると考えてもいいかもしれない。

将来に対する不安から投資を始めるという流れが見える

 実際、2020年以降に投資を開始した層を対象とした「コロナ禍による世の中の変化やあなた自身の変化が、あなたが証券投資を始めるきっかけになりましたか(複数回答可)」という設問では、「将来の不安を感じて、何も対策をしないのはまずいと思ったから」が55.6%で最多、続いて「預貯金だけしているのはリスクだと思い始めたから」が51.6%で過半数を超えるという結果になっている。

 不安を解消する手段としての手段という側面が、より強調されて見えてくる。

話題のNISA、やっている人の年収は? 毎月の積立額は?

 続いては、近年耳にすることの多い「NISA」に関する調査だ。NISAは少額投資非課税制度で、定められた範囲の配当金、譲渡益等が非課税になるという制度。みんながNISAでどのくらいの金額を投資しているのか、また、投資している人の年収の分布などが気になったことはないだろうか。

 今回の調査の範囲では、NISAをしている人のおよそにあたる47.4%が年収300万円未満、そしておよそ70%が年収500万円未満という結果になったという。

NISAをやっている人は約半数が年収300万円未満

 また、2020年以降に投資を開始した層のつみたてNISAの月額は、平均2万4736円で、3分の1を超える37%が、月々2万円未満で積み立てを開始したこともわかった。一方、2007年以前に投資を開始した層のつみたてNISAの月額は平均2万9587円で、月々2万円未満という回答は21.6%となった。2007年以前に投資を開始した層の方が、やや多い金額を積み立てている傾向にあると言えるだろう。

2020年以降に投資を開始した層のつみたてNISAの月額は、平均2万4736円

 また、2020年以降に投資を開始した層では、月々1000円未満で積み立てを行なっている人も1.4%ほどいることがわかる。NISAに関するアンケートの結果を見る限りでは、それぞれが、それぞれの経済状況に合わせて投資をしているという傾向が見えるのではないか。「投資は高収入の人のためのもの」という言葉は度々耳にするが、近頃では、一概にそうとも言えなくなってきているのかもしれない。

投資経験の有無は、お金の使い方の上手さに関係しているのか?

投資未経験な人の方が、お金の使いすぎで後悔することが多いという

 「投資をしている人って、お金に詳しそう」というイメージを持っていないだろうか。投資をすることは、お金の扱い方に影響するのだろうか。全員を対象とした、お金に関する行動や考え方に関する調査では、投資経験の有無が、お金との付き合い方に影響を与える傾向が明らかになっている。

投資経験の有無によって、お金との付き合い方にも変化が出るようだ

 上のグラフは、「以下に挙げるお金に関する行動や考え方について、あなたのお気持ちに近いものをすべてお選びください」という設問の結果だ。特に象徴的なのは、2020年以降に証券投資を開始した層が「将来のために貯蓄を心がけている」「お金を無駄遣いしたくないので、計画的に使う」「お店やカード会社などのポイントサービスをうまく使っている」といった項目でトップになっている点。

 つまり、コロナ禍以降に投資を始めた層では、それ以外の層よりも、貯蓄や、計画的なお金の使い方を心掛けている傾向が見られる。

 面白いのは、「お金を使いすぎて、後悔することがある」という項目。この項目に当てはまるのは、2020年以降に証券投資を開始した層では14.8%、2007年以前に証券投資を開始した層では11.2%にとどまっているが、証券に興味がある層では30.8%、証券投資に無関心な層では28.0%と、いずれも水準が大きく上がっている。

 証券投資を開始することで、“お金の見方”がシビアになると言えるかもしれないし、そもそもお金をシビアに見ている層が、証券投資を始める傾向にあるとも言えるかもしれない。いずれにせよ、証券投資をする層の方が、お金の扱い方に気を遣っている傾向が現れていると言えるだろう。

 本稿で紹介した調査結果は、日本証券業協会による特設サイトはじめてわかった、はじめての投資!から無料で詳しく閲覧できる。

 コロナ禍が、お金に対する向き合い方を見つめ直すひとつのきっかけになったと感じている人も多いことと思うし、そうでなくとも、本稿で取り扱ったNISAや、仮想通貨、日経平均株価といった投資にまつわるワードが、ニュースになる機会もずいぶん多くなってきているから、投資に興味を持っている読者も多いと思う。

 はじめてわかった、はじめての投資!は、そういった人にこそ知ってほしい内容が集まっているので、興味のある読者はもちろん、そうでない読者も、一度目を通してみてはいかがだろう。

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