このページの本文へ

いよいよデジタル庁発足 キーマンに直撃1万字インタビュー

昭和の縦割りをレイヤー構造にする 村上敬亮統括官に聞いたデジタル庁の役割

2021年10月14日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

人口減少で顕在化してきた縦割り構造のひずみ

確かに今までITシステムは組織ごと縦割りに作られてきた。官公庁はもちろん、企業だって同じだ。インフラと呼ばれるサーバーやストレージ、ネットワークがデータセンターに用意され、OSやデータベース、開発基盤が構築され、そこまで来て初めてアプリケーションが動くことになる。確かに組織ごとにこれらを調達し、運用管理していたら、コストも手間もかかるし、迅速性も欠くことになるだろう。これに対して、今まで縦割りだったシステムをレイヤー化して、共通化させるのがデジタル庁の役割だという。では、なぜこのタイミングでレイヤー構造化なのか。ここには20世紀からの日本の大きな変遷があった。

この背景には何があるか。やや唐突ですが、その正体は人口減少ではないかと考えています。

日本社会は縦の系列がしっかりしていました。全農さんや築地市場しかり、家電量販店や自動車メーカー・販売代理店しかり。どの産業分野においても、全国的に強いホールセラーがいる。これは日本社会の特徴なんです。

人口増加期はこれがよかった。全国的なホールセラーが「次はうなぎだ!」って決めると、すごい勢いでうなぎを買い付ける。まとめて買い付けてくれるから、普段なら高いうなぎも、スーパーで1200円とかで買える。食べたうなぎの単価は別として、嫌いではないのうなぎを食べたことがない人は珍しい。ステーキもいっしょ。お店を選べば1000円しない価格で食べられる。なんとか手の届く贅沢ですよね。こんな風に、どの所得層をとっても消費生活体験が似ている国って、実は珍しい。所得によって食べているものが全然違う国の方が普通ですからね。

これは全国的なホールセラーが在庫のリスクをまとめてとってくれるからです。今でも、その年の需要など考えず、生産キャパいっぱい生産している農家の方が多いですよね。すべてホールセラーや流通市場がリスクをとってくれる。だから、来年の市場規模の増減を予想してキュウリを作る必要がないし、そういう現場もほどんどない。もっとも、最近はそもそも買ってもらえないという形で、このあとに触れる課題が顕在化しつつありますが。

製造業も同じです。これまで部品メーカーは系列の取引先メーカーが買ってくれたから、ほかのメーカーに売り込む必要がなかった。メーカー側もいい部品メーカーを他社に知られたくないから、営業活動をさせなかった。その代わり、上から下りてくる指示は絶対という縦割り社会です。

これって人口が増加していたからこそできたこと。国内のマーケット全体が拡大していたからできたこと。ホールセラーが思い切って在庫調整リスクをとってくれていたから、これでよかったんですよ。

でも、これが人口減少期になると、こうした全国規模の在庫調整というアプローチはリスクの塊になります。だから、たとえば大手スーパーに全国⼀律の調達から地域ブロックごとの調達に切り替える動きが出ています。これは地方創⽣でもあるけど、本質的には需給調整リスクを抱えきれなくなったのが原因です。⾃動車メーカーでも部品メーカーの選別は、そこはかとなく始まっています。

今までは分野ごとに系列的取引関係がしっかりしていたから、DXは不要だった。デジタル化は取引先が求める範囲だけ。あとは、系列ごとの慣行を反映したアナログ業務を頼っていた方が、むしろ便利でした。

でもこれからは、ホールセラーも完成品メーカーも、すべての部品メーカーの⾯倒までは⾒ていられない。「⾃活してくれよ」が本音です。その瞬間、中小企業の側も、自分でデジタルを⼊れ、新たに営業しないと、やっていけなくなってしまう。漁師さんにしても、農家さんにしても同じことです。実際、今回のコロナ禍でも、直販ルートをすでに確立していた漁師さんや農家さんは、さほどは困ってない人が多かった。影響が二極化してしまった。

このように、実は日本社会全体が、レイヤー構造の導入というトランスフォーメーションをしなければならない局面にいる。それを実行しようと思うと、たいがいの場合はツールとしてデジタルを使います。だからDXということになるんです。デジタル庁はこうした日本のDXを下から押し上げるように進めていきたい。

もちろん、全産業いきなりは難しい。それぞれの産業については所轄の官庁で動いてもらう必要もある。でも、どうやってやるの?とか、IDは何を使うべきなの?といった仕組みは、デジタル庁が用意すればいい。そこには各省庁が自分では言い出しにくい制度改革の要素も出てくるでしょう。それら全体の推進役になって、日本のDXを進めていくことが、デジタル庁の役割だと思っています。

進めるのは各分野のプレイヤー。全産業で共通に利用できる仕組み、レイヤー化するのに必要な部品を用意するのはデジ庁。準公共のような国に近いようなサービスは、所管官庁とデジ庁、官と民とがいっしょに取り組むこととし、霞が関向けの中の仕組みはデジタル庁が⼀元的に予算管理しますよという話です。

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ